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第9話・後 俺に、異能力適性試験でFランクを取る素質はない!
しおりを挟む落ち着きを取り戻した花曲先生は咳ばらいを一つした。
「おほん!コンセプシオン。涅…リオンの能力測定をしてると言ったな?後天的に覚醒するとしたら大方超能力系だと思うんだが、強度や系統はわかったのか?」
「…それが…わかんなかったの…。欹愛。…この子の異能は私でもわかんない…。その意味はわかるよね?」
アルヴァレス先生は俺の方をチラチラと心配げに見ながらそう言った。そして花曲先生も腕を組んで険しい表情を浮かべる。
「…それは厄介だなぁ」
あれ?なんかガチでヤバそうな雰囲気なんだけど?なんか俺が期待してた『君の力はふわっとしててその上雑過ぎるから、とりあえず君はみんなから蔑まれてる劣等で落第で落ちこぼれでその上ロクでなしのFランクね!プークスクス!ほらほらいじめて追放しちゃうよ!なにぃ!?ざまぁされたぁ?!ふえーん!』って感じじゃないの?なんでこんなガチな感じなの?もっとふわっと雑に話を進めようよ!!
「あの…。厄介ってのは、俺の力が雑魚過ぎるってことですよね。Fランク的な」
この期に及んでジョークで誤魔化したい俺は相当見苦しいかも知れない。でも無情にもアルヴァレス先生は首を横に振る。
「君の力は最低でもAランクはあると思う。だけど表層的な威力ははっきり言ってどうでもいいの。この房総特区には歩く核兵器に例えられるような異能者自体はそこまでレアではないからね」
そういう設定はあったね。房総特区には威力だけならヤバい連中がゴロゴロしてるって話。そう設定しておけば、話の展開で必要なキャラがいつでも出せますしね。
「だからこそ分類不可能でレアな力っていうのは、ちょっとまずいの。特区内には犯罪組織も多いし、公官庁や企業同士でも異能研究は日々激化の一途を辿ってる。最近の研究の流行りは、威力よりも作動原理不明で分類不可能な力の方を解析するってことなの。そういう力にはもしかしたらこの世界の理をひっくり返すような何かが隠れているかもしれない。そういうのを期待してみんなレア能力者を探し回ってる…。欹愛。取り合えずリオンの異能は汎用型のサイコキネシス系超能力で登録してくれないかな?特殊異能者保護のための、異能力偽装登録制度があるよね?欹愛の軍警察予備役将校の伝と権限でそれを自然にやってあげて。リオンの力を房総府立大学法人経由でデータベース登録すると何処かで漏れかねないと思う。リオンの異能は研究者のキャリアパスを考えると喉から手が出るほど欲しい優れた研究対象になるはずだよ。絶対に金とか名誉欲しさに漏らす人が出ちゃう」
軍警察という組織が房総異能特区の国防と治安維持や犯罪捜査を担当している。名前そのままで、軍隊と警察を合体させたような組織だ。花曲先生は昔そこで将校を務めてて、除隊後にここの教師に転職したそうだ。
「わかった。軍警察経由でリオンの異能力測定診断結果を発行して学校に提出しよう。はぁ、だから職員会議で言ったんだ。能力測定は軍警察監督下でやるべきだって。こういうケースがあるかも知れないんだから、そもそも学校でやる必要性なんてないってな。もう廃止して欲しいなぁ能力測定。まあうちの学校が異能者育成も兼ねている以上無理と言えば無理な話ではあるがな…」
なんか世知辛い大人の事情が見え隠れしてるようだ。
「というか誰だ?入試でリオンの異能力試験の監督をした教師は!こういう怪しげなケースを見つけたらすぐに報告するべきなのに…!」
そもそも入試なんて受けてないけどね。もしかして調べられたらバレちゃう?まあその時はその時だ。それにあの種付けおじさん運転手は偽造はバレないって言ってたし、大丈夫だろう。ほら、エロゲーキャラクターってふわっと雑だけど結果は出すからさ!
「ぱっと見だと派手なだけでサイコキネシスとか汎用魔力砲撃とか強化に見えちゃうから見逃されたんだと思うよ。私みたいなある程度のレベルがある科学者じゃないとヤバさには気づかないと思うよ。まあ普段使ってる分にはヤバさはバレないと思うそこは良かったかな?」
普段使いする分には大丈夫そうなのはいいことだ。はぁ。だからだめなんだよなぁ。転生者特有の雑な理由での能力覚醒って!もうちょっと頭を使って設定練ろうぜ?じゃなきゃこういう感じに原作キャラが困っちゃうんだぜ?
「リオン。取り合えずこの件は私たちが預かる。お前は私の担当するクラスに配属させる。そして定期的にコンセプシオンの検査を受けて欲しい」
「え?まじすか!?花曲先生のクラス!?マジ嬉しい!やふぅううう!」
若干原作主人公と同じクラスって事には引っ掛かりを覚える。ちなみに巧美たんはお隣のクラスなんだ…。儚い…。
「ふふ。喜んでくれるなら良かった。ところでリオンは特区の外から来たってことは学生寮に入るんだよな?」
「そうっすね。そのつもりです」
入学許可証の中には、入寮申請書なんかもあった。ちなみにこの高校には学生寮とかいうそれっぽい設定があるくせに、主人公様は寮には入ってない。高校近くにある事故物件の一軒家を借りてそこに住んでいる。よくそんなヤバい所に住めるよね。これが鈍感難聴主人公の長所なのかもしれないな。
「正直に言ってお前を学生寮に放り込むのはちょっと心配だ。ウチの生徒は基本的には身元が確かなものばかりだが、万が一おかしな組織と繋がっている者がいると厄介なことになる。セキュリティがしっかりしているところに入って欲しい」
正直に言うとそんな金はないんだよね。種付けおじさんがくれた入学書類によれば、学生寮の費用とか学費とかはすでに三年分振り込んであったんだよね。だけど普段の生活費はバイトで稼がないといけないわけで、家賃なんてとてもじゃないけどきついんですよね。
「ねぇ欹愛。どうせならしばらくうちのマンションに住んでもらえばいいんじゃない?」
この二人は幼馴染でふわっと百合百合してる。マンションの部屋を二人でルームシェアしているそうだ。なお同じベットで寝てる。…ええ…そんなところに住めと?百合百合してる所にキモオタボッチを連れ込むと?これはあれなの?刺激が足りなくなった二人の生活に邪魔ものを入れて2人はしっぽり燃えようっていう魂胆ですか?俺ってどこに行っても女に利用されるんだなぁ(白目)。都合のいい男を卒業したい。ついでに童貞も…。
「そうか。それはいいな!住み着く先が見つかるまでは、ウチに住むのがいいだろう。不測の事態にも私たちがいれば対処できるだろう!うん!それがいい!」
百合百合な欹愛んさんは、アルヴァレス先生の提案を満面の笑みで受け取ってしまった。あーこれ断りずらい奴だー。これ断ったら、『え?別に同棲とかじゃなくて、君はペット代わりみたいなものなんだよ?もしかして同じ部屋に住めただけで彼氏になれるって勘違いしてた?自意識過剰じゃない?私たちって原作主人公くんにしかフラグ立たないんだから、君なんて連れ込んだって間違いなんか起きないんだよ?…キモ!』みたいに冷たい目で言われるんだろうなぁ。
「お言葉に甘えさせてください。花曲先生、アルヴァレス先生」
「ああ、いくらでも甘えてくれ。私たちはお前の先生だからな。ああそうだ。これからはプライベートでは一緒だし、下の名前で呼んでくれていいぞ。ふふふ」
「…私も…家では…コンセプシオンでいいよ…うふふ」
2人ともとても優し気に微笑んでくれた。ああ、かわいい!うちのビッチ共と違ってほんと清らかで可愛い!勘違いしたくなるようぅ!
「ありがとうね。欹愛、コンセプシオン。今日からよろしくな!ははは!」
こうして俺は百合百合教師の同棲ルームにペットとして住み着くことになったのだった。せめてオナニーのお手伝いできる肉バイブ扱いくらいにはいつか進化したい所存である!
/*以下はコメントアウトです!読まないでください!*/
//そろそろわかってきたんじゃないかな?
//どうあがいても逃げられないんだってね!
//例え自分の事をこの世界のモブだと蔑んだって、セカイの方が君を放っておいてはくれないんだってことを!
//そろそろこの箱庭の王子様との邂逅が迫ってる。
//準備はいいかな?
//だってこっちの王子様から見れば君は…。
//きっと侵略者にしか見えないはずだから…。
/*ちゃんと読み飛ばしましたか?!*/
//では次回予告です!!
次回予告!!
女教師二人との同棲生活によって、毎日の自家発電が滞り、ちょっとナーバスな俺は晴れて入学式に臨むことになる。
高校デビューを控える俺にとって、入学式は決して失敗が許されないイベント!
名古屋県からの越境入学によって知り合いが誰もいない俺にとって、新しい学校とは自らを非童貞と偽っても誰にもバレないボーナスタイム!
『処女相手なら敢えてバックでするのがいいよ!』
『騎乗位って男も恥ずかしいんだよね///』
『ラブホの冷蔵庫って絶対にコーラがあるんだぜ!ゴム破れてもコーラで洗えばセーフだから!』
『あせったわー!ゴムの裏表まちがえてあせったわー!』
『チーズの臭い?どっちかって言うとコンソメだったかな?』
『ラブホのwifiに自動で繋がったとき、彼女に浮気疑われてあせったわwww元カノと昔来ただけだっつーのに!ニチャアアア』
などと真偽不明検証不可能な自慢話を繰り出し、チェリーボーイしかいない高偏差値学級で見事にマウントを取ってトップカーストに君臨することに成功した俺だったが、そこへリア充な原作主人公の理不尽なマウントが押しかかる!
『正直な話、下のお口にハメハメするより、上のお口にペロペロしてもらう方がずっと気持ちいいよね』
そのあまりにも生々しいその発言に、狼狽える俺。
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次回、『俺に、入学式で親友ポジをゲットできる素質がない!』
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