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第8話・前 お前らに、中二病的隠し設定がある素質はない!
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俺の目の前で原作ヒロインの門叶巧美が笑っている。可愛い。すごくかわいいです。俺は思わずぽけーっと見惚れてしまう。
「ちょっとあんた!アタシの話聞いてるの?!」
巧美たんがすこし声を大きくして俺に問いかけてきた。ああ…ずっと聞いていたくなるような甘いロリボイス。うちのビッチ共と違って絶対にこの声は処女膜から出てるんだ!きっと原作ファンならそう言ってくれると思う。そんな素敵な声。
「ああ…すまない。空を飛んでいる君の姿があまり美しくてね。まるで天使のようだと思った。そんな綺麗な人がわざわざ俺の前に降りてきてくれた…。呆けてしまうのも仕方ないだろう?許してくれないか?」
俺は端から見たらお前馬鹿なの?って言われそうなくらいうっとりと自分に酔った声でそう言った。でも巧美たん可愛いんだもん!うちのビッチと違って手放しで可愛いんだもん!
「ちょっと!いきなり何よ…。そんな…からかわないでよ…もう…」
おっと!巧美たん!すごく頬を赤くして俯いてるぅ!!
巧美たんは凄腕の魔術師って設定で、小さいころから戦闘に長けていたんだ!そのせいで周りの男たちからは恐れられていて、可愛いとかきれいとか全然言ってもらえなかったっていう設定があるんだってさ!
唯一可愛いっていうのは原作主人公だけなんだよ!
でも普通の男ってバカだから、いくら自分より強かろうが、可愛かったら可愛いって言うと思うんだよね。
むしろ男ってさ、女の子がいくら強かろうが顔とおっぱいしか見てないと思うんだよね…。
エロゲー世界とは違った方にこっちの異能バトル世界も歪んでるよなぁ…。
巧美たんはそんな歪んだ世界の犠牲者なわけだ。いっぱい萌えなてあげなきゃ(使命感)。
「ふふふ。ごめんごめん。俺がドローンを破壊したのは偶々ここに来たからだよ。上京したてでね。東京観光してたら巻き込まれちゃった。それだけさ」
「上京してきた?あんた異能者よね?地方から来たの?でも日本の異能者って古い魔術とか呪術とか陰陽道とかの地元密着型の家系でもなければ、大抵は木更津に住んでるはずよね?」
古くからその存在を認知されている異能の家系は地元で暮らしてるのだが、新興の家系や突然変異やあるいは後天的に覚醒してしまったものなんかは大抵の場合、房総異能特区に放り込まれるそうだ。
「俺はついこの間、異能の力に覚醒したばかりなんだ。それで4月から木更津に引っ越すことになったんだよ。富木田高校に通うことになってるんだ」
「え?まじ!?あたしもそこに通うんだ!へぇ!すごい偶然ね!」
うん!それならもう知ってるよ!
「君もそうなの?!わー嬉しいなぁ。君みたいな可愛い子と同じクラスになれたら嬉しいなぁ。そうしたらきっと毎日楽しいだろうに…」
「…え…もう…可愛いだなんて…別にそんなことないのに…」
はにかみながら照れてるぅ!すごい可愛いよう!見ろよN県のビッチ共!!巧美たんを見習えよ!お前らと来たら俺が髪型が変わったから可愛いと褒めれば、『レオ…。もしかしてとりあえずそういうこと言っておけば女の子はご機嫌になるとか思ってる?…そういうのってちょっと女舐めてるよね…はぁ…萎えるかな…』とかさ!
あるいはネイルがいつもと違ってたから褒めてみたら、「え…レオ先輩ってネイルの違いに気づくんですか…うわぁ…。別にこれって男受けとか狙ってるわけじゃなくて、わりと自己満なんで…気づかれると逆にちょっと…萎えますよね…ふぅ」とかさ!
マジくそビッチ!!巧美たんなんて俺みたいなキモいエロゲー主人公が可愛いって言っただけでも笑ってくれるんだぞ!見習えよ!見習え!!
「えへへ…ん?あっごめん!ちょっと通信入ったわ。レイカ?…うん、うん。じゃあ犯人は捕まえたのね?わかったわ。うん。警察に届けるから少し時間かかる?わかったわ。じゃあ竹下通りを適当にうろついてるから!早く来なさいよレイカ!」
巧美たんはレイカという人物と耳に装着したインカムで通信している。
レイカ。女の子みたいな名前だけど、原作主人公(雄♂)さんの下のお名前だ。
驚いた。どうやらすぐ近くにいるらしい。
っち!これって所謂転生チート主人公が原作開始前にヒロインと出会って好感度を稼ぐ系のイベントじゃねぇのかよ!くそ!こんなんじゃブクマや☆は稼げないんだよバーカ!アホ!
しかし俺も現金なものだ。さっきまでは原作の舞台である房総異能特区に行くことにかなり消極的だったのに、今は俄然やる気が湧いている。
だって原作キャラ可愛いんだもん!たしかにうちのビッチ共も見た目は劣らない。だけどやっぱりね、中身が違うのよ…。なんていうの?清らかなんだよ…まるで新品の歯ブラシのような清らかさ…。
あいつらはあれです。トイレ掃除に使ったブラシみたいな淀みを感じる。
もう全然違うの!女の子と一緒にいるのに、傷つけられるかもしれないって恐ろしさがないの!ただただ心地の良いドキドキ感だけが胸を満たしてる!これがときめきなんだね…。
「レイカって子はお友達かな?もしかして君はドローンのぞき魔を捕まえに来たの?」
「ええ、そうよ。レイカはあたしの幼馴染。ここには房総行政府が発行した異能犯罪者逮捕クエストを受注してここに来たの。やっぱり異能者の犯罪は同じ異能者がケリをつけるべきだからね」
クエスト制度というものが房総異能特区にはある。すごく雑に言えばギルド的な場所から依頼を受けて色々やるテンプレテンプレな制度ですよ。仕事の斡旋をしているのは、ギルドではなく房総特区の行政府ってことが特徴かな?でも原作でも行政府窓口の事をみんなギルドって呼んでた。すごく今の流行りを敏感に取り入れてるよね!ちなみにこの世界はちゃんとダンジョンもあるぞ!もちろんステータスシステムもある!もはやテンプレを満たすためなら手段は択ばない!そういった負の想念を感じさえするよ…。
「へぇそうなんだ…。ねぇ。もしよかったら君の名前を教えてくれないかな?」
「え…。あたしの名前?」
「ああ、知りたいんだ。可愛い君の名前を俺に教えてくれ」
「…その…え…と。門叶巧美…よ…」
「門叶巧美さん…巧美って呼んでもいいかな?」
本当は巧美たんって呼びたいんだけど、妥協して巧美って呼び捨てにしようと思う。
「…う、うん。…あんたはなんて名前なの?アタシばっかりズルいわ…」
「俺はネトラ…じゃなかった。涅杜㸚遠だ。リオンって呼んでくれ。巧美」
「う、うん。よろしくリオン…」
「どうかな巧美?お友達と合流するまででいいんだ。お近づきのしるしにそこのクレープをいっしょにどうかな?可愛い君にごちそうさせてほしい」
「え…!そんな…うん、それくらいならいいよ…」
俺は言葉巧みに巧美たんを近くのクレープ屋さんにお持ち帰りすることに成功したのだった!
俺たちは隣り合ってベンチに座り、クレープを食べながら、他愛のない話に興じた。クレープはとても甘くておいしい。
だけど巧美たんと共に過ごす時間はもっと甘く感じられたのだニチャアア。
ちなみにさっきまで巧美たんが持ってた武器は、彼女が手を放したら光の粒子になって消え去った。
魔術師さんとかは武器をなんか雑な設定のテンプレ的な異空間に仕舞っておけるらしいよ!まあ他の異能力者も武器は自由に出し入れできる設定があるんだけどね。
「へぇ。じゃああんたは名古屋県の出身なのね。たしかタコ焼きが有名なんだっけ?」
「名古屋県の名物は味噌カツだよ。まあ俺は名古屋県でも田舎の方から来たから味噌カツ食べたことないんだけどね」
俺は日本の地方都市、N県嶺戸利市の出身だが、実はN県が東北なのか関東なんか中部なのか関西なのかどこにあるのかよくわからない。
しまったよね…バスでここまでくる間に周りの風景をちゃんと見ておくべきだった。
とりあえずNから始まる長崎か長野か新潟か名古屋か迷ったので一番大きそうな名古屋にしておくことにした。
「へぇそうなんだ。でもあたしも房総名物のなめろうとか食べたことないや!なんか地元とかだと逆に食べずらいのよね…」
「すごくわかるなぁその気持ち。そうだ!今度2人で食べに行こうよ!4月はバタバタするし、ゴールデンウィークとかさ!」
「そうね。いいかも!…あれ?2人で行く?…これって…デー…ト…あれ?…ううっ」
なぜか巧美たんは頬を赤くして俯いてしまった。なぜか!なぜか恥ずかしがっているぅう!!巧美たんは気がついたら男にデートを迫られて照れてやんの!可愛い!
くくく、こちとらビッチ共のご機嫌取りで女の子に散々振り回されてんのよ…。他愛無い会話からデートの約束をこぎつけるくらい軽い軽い!
…くそ!ビッチに振り回されて身に着ける手練手管とか薄汚さすぎるよ!ああ…こんなビッチ共に汚されてる俺って巧美たんの横にいていいのかなぁ?
「…ねぇ…今の約束ってデー…うん?なにあれ?人だかりができてる?」
「うん?確かに…芸能人でもいるのかな?」
巧美と俺の視線の先に沢山の男たちが何かに群がっているように見えた。
「臭い…違う…この臭いじゃない…」
はちみつとメープルと黒糖を煮詰めてマシュマロにぶっかけたようなくそ甘く響く声が聞こえた。それを聞いて俺の背筋がブルっと震えた。
「雄の臭い…嫌い…何処?あたしの王子様」
男たちの人ごみが自然と割れて、そこからピンク色の髪をツーサイドアップにした美しい少女が現れた。赤いジャケットにところどころチェック柄の入った、ド派手でテカってる学生服。…よく知ってる制服です。さっき俺が捨てた制服と同じデザインなんだから。
「…穢れたあたしにガラスの靴を履かせてくれた愛おしい貴方は何処なの…?あなたの甘い匂いは何処へ…?」
そのピンク色の髪の美少女はすれ違う男たちの首筋に顔を近づけては匂いを嗅いで顔を顰めている。クッソ失礼なことをやっているのに、男たちは皆その美少女に魅了されているかのように頬を赤く染めてぽけーッと見つめていたのだ。
「え…何あの子…すごく美人なのに…なんか変…服も変だし…っていうかなんで男の人の臭いを嗅いでる回ってるの…?」
巧美はその美少女を見てドン引きしてた。そしてとうとうその美少女は俺たちの前を通った。その時、いきなりぐわんと俺の方に首を傾けたのだ。少女の瞳には光がなかった。ズバリ言えばレイプ目です。すごく怖い。その虚ろな瞳で俺たちの方を見ている。
「「ひえっ!!」」
突然のホラーに俺と巧美は互いに抱き合ってしまった。巧美の柔らかな感触に普段ならラッキースケベサイコー!って叫びたいところなのに、ちっとも心が震えない。それ以上に目の前のピンクの美少女が怖くて怖くて仕方がなかった。
「…いい匂い…でも違う…麗しい王子様じゃなくて、野蛮なる王の匂い…あんた…誰なの…?」
その美少女は俺の首筋近くを嗅いだ後に、虚ろな瞳で俺を見つめて、首を傾げながらそう言った。いや、お前俺の事知ってるはずだよね?だって俺は目の前のピンクの少女をよく知っている。N県にいるはずの俺の幼馴染にしてファンタスティックビッチこと楓雲母がなぜか俺の目の前にいるのだった。
「ちょっとあんた!アタシの話聞いてるの?!」
巧美たんがすこし声を大きくして俺に問いかけてきた。ああ…ずっと聞いていたくなるような甘いロリボイス。うちのビッチ共と違って絶対にこの声は処女膜から出てるんだ!きっと原作ファンならそう言ってくれると思う。そんな素敵な声。
「ああ…すまない。空を飛んでいる君の姿があまり美しくてね。まるで天使のようだと思った。そんな綺麗な人がわざわざ俺の前に降りてきてくれた…。呆けてしまうのも仕方ないだろう?許してくれないか?」
俺は端から見たらお前馬鹿なの?って言われそうなくらいうっとりと自分に酔った声でそう言った。でも巧美たん可愛いんだもん!うちのビッチと違って手放しで可愛いんだもん!
「ちょっと!いきなり何よ…。そんな…からかわないでよ…もう…」
おっと!巧美たん!すごく頬を赤くして俯いてるぅ!!
巧美たんは凄腕の魔術師って設定で、小さいころから戦闘に長けていたんだ!そのせいで周りの男たちからは恐れられていて、可愛いとかきれいとか全然言ってもらえなかったっていう設定があるんだってさ!
唯一可愛いっていうのは原作主人公だけなんだよ!
でも普通の男ってバカだから、いくら自分より強かろうが、可愛かったら可愛いって言うと思うんだよね。
むしろ男ってさ、女の子がいくら強かろうが顔とおっぱいしか見てないと思うんだよね…。
エロゲー世界とは違った方にこっちの異能バトル世界も歪んでるよなぁ…。
巧美たんはそんな歪んだ世界の犠牲者なわけだ。いっぱい萌えなてあげなきゃ(使命感)。
「ふふふ。ごめんごめん。俺がドローンを破壊したのは偶々ここに来たからだよ。上京したてでね。東京観光してたら巻き込まれちゃった。それだけさ」
「上京してきた?あんた異能者よね?地方から来たの?でも日本の異能者って古い魔術とか呪術とか陰陽道とかの地元密着型の家系でもなければ、大抵は木更津に住んでるはずよね?」
古くからその存在を認知されている異能の家系は地元で暮らしてるのだが、新興の家系や突然変異やあるいは後天的に覚醒してしまったものなんかは大抵の場合、房総異能特区に放り込まれるそうだ。
「俺はついこの間、異能の力に覚醒したばかりなんだ。それで4月から木更津に引っ越すことになったんだよ。富木田高校に通うことになってるんだ」
「え?まじ!?あたしもそこに通うんだ!へぇ!すごい偶然ね!」
うん!それならもう知ってるよ!
「君もそうなの?!わー嬉しいなぁ。君みたいな可愛い子と同じクラスになれたら嬉しいなぁ。そうしたらきっと毎日楽しいだろうに…」
「…え…もう…可愛いだなんて…別にそんなことないのに…」
はにかみながら照れてるぅ!すごい可愛いよう!見ろよN県のビッチ共!!巧美たんを見習えよ!お前らと来たら俺が髪型が変わったから可愛いと褒めれば、『レオ…。もしかしてとりあえずそういうこと言っておけば女の子はご機嫌になるとか思ってる?…そういうのってちょっと女舐めてるよね…はぁ…萎えるかな…』とかさ!
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マジくそビッチ!!巧美たんなんて俺みたいなキモいエロゲー主人公が可愛いって言っただけでも笑ってくれるんだぞ!見習えよ!見習え!!
「えへへ…ん?あっごめん!ちょっと通信入ったわ。レイカ?…うん、うん。じゃあ犯人は捕まえたのね?わかったわ。うん。警察に届けるから少し時間かかる?わかったわ。じゃあ竹下通りを適当にうろついてるから!早く来なさいよレイカ!」
巧美たんはレイカという人物と耳に装着したインカムで通信している。
レイカ。女の子みたいな名前だけど、原作主人公(雄♂)さんの下のお名前だ。
驚いた。どうやらすぐ近くにいるらしい。
っち!これって所謂転生チート主人公が原作開始前にヒロインと出会って好感度を稼ぐ系のイベントじゃねぇのかよ!くそ!こんなんじゃブクマや☆は稼げないんだよバーカ!アホ!
しかし俺も現金なものだ。さっきまでは原作の舞台である房総異能特区に行くことにかなり消極的だったのに、今は俄然やる気が湧いている。
だって原作キャラ可愛いんだもん!たしかにうちのビッチ共も見た目は劣らない。だけどやっぱりね、中身が違うのよ…。なんていうの?清らかなんだよ…まるで新品の歯ブラシのような清らかさ…。
あいつらはあれです。トイレ掃除に使ったブラシみたいな淀みを感じる。
もう全然違うの!女の子と一緒にいるのに、傷つけられるかもしれないって恐ろしさがないの!ただただ心地の良いドキドキ感だけが胸を満たしてる!これがときめきなんだね…。
「レイカって子はお友達かな?もしかして君はドローンのぞき魔を捕まえに来たの?」
「ええ、そうよ。レイカはあたしの幼馴染。ここには房総行政府が発行した異能犯罪者逮捕クエストを受注してここに来たの。やっぱり異能者の犯罪は同じ異能者がケリをつけるべきだからね」
クエスト制度というものが房総異能特区にはある。すごく雑に言えばギルド的な場所から依頼を受けて色々やるテンプレテンプレな制度ですよ。仕事の斡旋をしているのは、ギルドではなく房総特区の行政府ってことが特徴かな?でも原作でも行政府窓口の事をみんなギルドって呼んでた。すごく今の流行りを敏感に取り入れてるよね!ちなみにこの世界はちゃんとダンジョンもあるぞ!もちろんステータスシステムもある!もはやテンプレを満たすためなら手段は択ばない!そういった負の想念を感じさえするよ…。
「へぇそうなんだ…。ねぇ。もしよかったら君の名前を教えてくれないかな?」
「え…。あたしの名前?」
「ああ、知りたいんだ。可愛い君の名前を俺に教えてくれ」
「…その…え…と。門叶巧美…よ…」
「門叶巧美さん…巧美って呼んでもいいかな?」
本当は巧美たんって呼びたいんだけど、妥協して巧美って呼び捨てにしようと思う。
「…う、うん。…あんたはなんて名前なの?アタシばっかりズルいわ…」
「俺はネトラ…じゃなかった。涅杜㸚遠だ。リオンって呼んでくれ。巧美」
「う、うん。よろしくリオン…」
「どうかな巧美?お友達と合流するまででいいんだ。お近づきのしるしにそこのクレープをいっしょにどうかな?可愛い君にごちそうさせてほしい」
「え…!そんな…うん、それくらいならいいよ…」
俺は言葉巧みに巧美たんを近くのクレープ屋さんにお持ち帰りすることに成功したのだった!
俺たちは隣り合ってベンチに座り、クレープを食べながら、他愛のない話に興じた。クレープはとても甘くておいしい。
だけど巧美たんと共に過ごす時間はもっと甘く感じられたのだニチャアア。
ちなみにさっきまで巧美たんが持ってた武器は、彼女が手を放したら光の粒子になって消え去った。
魔術師さんとかは武器をなんか雑な設定のテンプレ的な異空間に仕舞っておけるらしいよ!まあ他の異能力者も武器は自由に出し入れできる設定があるんだけどね。
「へぇ。じゃああんたは名古屋県の出身なのね。たしかタコ焼きが有名なんだっけ?」
「名古屋県の名物は味噌カツだよ。まあ俺は名古屋県でも田舎の方から来たから味噌カツ食べたことないんだけどね」
俺は日本の地方都市、N県嶺戸利市の出身だが、実はN県が東北なのか関東なんか中部なのか関西なのかどこにあるのかよくわからない。
しまったよね…バスでここまでくる間に周りの風景をちゃんと見ておくべきだった。
とりあえずNから始まる長崎か長野か新潟か名古屋か迷ったので一番大きそうな名古屋にしておくことにした。
「へぇそうなんだ。でもあたしも房総名物のなめろうとか食べたことないや!なんか地元とかだと逆に食べずらいのよね…」
「すごくわかるなぁその気持ち。そうだ!今度2人で食べに行こうよ!4月はバタバタするし、ゴールデンウィークとかさ!」
「そうね。いいかも!…あれ?2人で行く?…これって…デー…ト…あれ?…ううっ」
なぜか巧美たんは頬を赤くして俯いてしまった。なぜか!なぜか恥ずかしがっているぅう!!巧美たんは気がついたら男にデートを迫られて照れてやんの!可愛い!
くくく、こちとらビッチ共のご機嫌取りで女の子に散々振り回されてんのよ…。他愛無い会話からデートの約束をこぎつけるくらい軽い軽い!
…くそ!ビッチに振り回されて身に着ける手練手管とか薄汚さすぎるよ!ああ…こんなビッチ共に汚されてる俺って巧美たんの横にいていいのかなぁ?
「…ねぇ…今の約束ってデー…うん?なにあれ?人だかりができてる?」
「うん?確かに…芸能人でもいるのかな?」
巧美と俺の視線の先に沢山の男たちが何かに群がっているように見えた。
「臭い…違う…この臭いじゃない…」
はちみつとメープルと黒糖を煮詰めてマシュマロにぶっかけたようなくそ甘く響く声が聞こえた。それを聞いて俺の背筋がブルっと震えた。
「雄の臭い…嫌い…何処?あたしの王子様」
男たちの人ごみが自然と割れて、そこからピンク色の髪をツーサイドアップにした美しい少女が現れた。赤いジャケットにところどころチェック柄の入った、ド派手でテカってる学生服。…よく知ってる制服です。さっき俺が捨てた制服と同じデザインなんだから。
「…穢れたあたしにガラスの靴を履かせてくれた愛おしい貴方は何処なの…?あなたの甘い匂いは何処へ…?」
そのピンク色の髪の美少女はすれ違う男たちの首筋に顔を近づけては匂いを嗅いで顔を顰めている。クッソ失礼なことをやっているのに、男たちは皆その美少女に魅了されているかのように頬を赤く染めてぽけーッと見つめていたのだ。
「え…何あの子…すごく美人なのに…なんか変…服も変だし…っていうかなんで男の人の臭いを嗅いでる回ってるの…?」
巧美はその美少女を見てドン引きしてた。そしてとうとうその美少女は俺たちの前を通った。その時、いきなりぐわんと俺の方に首を傾けたのだ。少女の瞳には光がなかった。ズバリ言えばレイプ目です。すごく怖い。その虚ろな瞳で俺たちの方を見ている。
「「ひえっ!!」」
突然のホラーに俺と巧美は互いに抱き合ってしまった。巧美の柔らかな感触に普段ならラッキースケベサイコー!って叫びたいところなのに、ちっとも心が震えない。それ以上に目の前のピンクの美少女が怖くて怖くて仕方がなかった。
「…いい匂い…でも違う…麗しい王子様じゃなくて、野蛮なる王の匂い…あんた…誰なの…?」
その美少女は俺の首筋近くを嗅いだ後に、虚ろな瞳で俺を見つめて、首を傾げながらそう言った。いや、お前俺の事知ってるはずだよね?だって俺は目の前のピンクの少女をよく知っている。N県にいるはずの俺の幼馴染にしてファンタスティックビッチこと楓雲母がなぜか俺の目の前にいるのだった。
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幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に
見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと
帰還するのだった。
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