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第2章 ほのぼの結婚まで

34話 二人の関係

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 喜びの日々は続いていった。
 新たに提案したフェスティバルは大盛況で、多くの人々が地元の特産品を楽しみ、農家たちとの交流を深めることができた。
 セリーナはその光景を見て、自分の夢が少しずつ現実になっていることを実感していた。心は喜びで満ち、参加者たちの笑顔に顔が綻ぶ。

 フェスティバルの後、セリーナは地元の農家たちと共に振り返りの会を開くことにした。成功を祝うと同時に、今後の課題や次回のイベントの計画を話し合うためだ。会場は温かい雰囲気に包まれ、みんなの顔には充実感が漂っていた。

「今日は本当にありがとう。皆さんのおかげで素晴らしいフェスティバルになりました!」

 とセリーナが感謝の言葉を述べると、農家たちも嬉しそうに頷いた。

 一人の農家が立ち上がり、「私たちもあなたに感謝している。セリーナのおかげで、地域がこんなに活気づいたのは初めてだ」と話した。

 その言葉は、セリーナの自信になる。

 振り返りの中で、次回のイベントのアイデアが次々と飛び出した。農家たちはそれぞれの特産品を紹介したいと意見を出し合い、セリーナもそれに応じてアイデアを加えていく。

「私たちの特産品をもっと多くの人に知ってもらうために、地元のレストランとも連携して料理フェアを開くのはどうだろう?」
 とセリーナが提案すると、皆が興味津々で反応した。

 会議が進むにつれ、新たな夢が芽生えていった。
 それは、地域全体を巻き込んだ「地域振興プロジェクト」を立ち上げることだった。
 このプロジェクトでは、地元の特産品を使った商品の開発や、観光資源の発掘など、多岐にわたる活動を行う予定だった。

「私たちの力を合わせれば、地域をもっと良くできるはずだ」

 とセリーナは決意を込めて言った。

 農家たちもその熱意に引き込まれ、「私たちも手伝うよ!」

 と声を上げた。次々とアイデアが出され、会議は活気に満ちたものとなった。

 セリーナはその中で、自分が変わったことを改めて感じていた。以前なら、周囲を見下し、孤立していた。しかし今は、周囲の人々と共に支え合い、夢を追いかけることの大切さを知った。

「これが私の望んでいた未来なのかもしれない…」

 と心の中でつぶやいた。そして、ライオネルの顔を思い出す。



 会議が終わり、セリーナはその晩、静かに考え込んだ。心の中で、思い出せるかぎりの過去の記憶を振り返る。傲慢な悪役令嬢としての自分は、もういない。


 数日後、セリーナは新たなプロジェクトに向けた準備を始めた。農家たちとの連携を深めるため、様々なアイデアを持ち寄り、具体的なプランを作り上げていく。そして、地元の人々にも参加を呼びかけ、共に地域を盛り上げるための活動を広めることにした。

「さあ、頑張りましょうっ」

 と、自信を持って言い、周囲の人々を鼓舞していった。


 セリーナの地域振興プロジェクトが動き出す中、周囲の人々との関係をさらに深めていくことに力を入れていた。特に、ライオネルも心配なのか、度々、セリーナの元を訪れていたこともあり、二人の関係は、より進展し、ライオネルは活動を支える重要な存在となっていた。

 ある日、ライオネルにプロジェクトの進捗を報告するため、彼のもとを訪れた。ライオネルはいつも通り、優雅な態度で迎えてくれたが、その目には特別な期待が宿っていた。

「セリーナ、君の活動は素晴らしい。最近のフェスティバルの成功も聞いている。君の情熱が人々を動かしているんだ」

 と微笑んだ。

 セリーナはその言葉に照れくささを覚えながらも、自信を持って続けた。

「ありがとう。次は、地域の特産品をもっと広めるために、地元のレストランとの連携を考えているの。料理フェアを開催して、特産品の魅力を伝えたくて」

 ライオネルは興味深そうに耳を傾けていた。「それは良いアイデアだ。僕も手伝えることがあれば、また言ってくれ」

「本当に? ライオネルが協力してくれたら、もっと多くの人にこのプロジェクトの意義を伝えられるわ!」

 ライオネルは頷き、「僕の家の人脈を活かして、料理フェアの宣伝を手伝おう。あと、出店するレストランも紹介できるかもしれない」と提案した。

 セリーナはその申し出を受け入れ、二人で具体的なプランを練り始めた。ライオネルは自らの知識や経験を活かし、セリーナの提案を更に魅力的にするためのアイデアを次々と出してくれた。

「この地域の食材を使った特別な料理を作るシェフを招いたらどうかな? それによって、より多くの人に参加してもらえると思う」

 とライオネルは続けた。

 セリーナはその提案に心を躍らせた。「それは素晴らしいアイデア! シェフとのコラボレーションで、特産品の魅力が引き立つかもしれない」

 二人は次第に、具体的なプログラムを組み立て始め、地域振興プロジェクトの実現に向けて着実に進んでいた。セリーナはライオネルの支えがあったからこそ、自分のビジョンを実現できることに感謝していた。

 その日の帰り道、セリーナはライオネルと共に歩きながら、心の中で彼に感謝の気持ちを抱いていた。

「ライオネルは本当に頼りになる存在だ」と。

 そしてセリーナは向き直り、「ライオネル、あなたがいるから、私は頑張れる。これからも一緒にこのプロジェクトを進めていこうね」と、恥じらいを隠すように可愛く伝えてみた。

 ライオネルは微笑み、「もちろんだよ。君の夢を実現するために、僕も全力を尽くすつもりだから」と返した。

 少々、鈍感なライオネルには、セリーナが勇気を振り絞って、初めて可愛く言葉を伝えたことなど、知る由もないのだけれども。


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