上 下
22 / 46
第1章 病気が完治するまで

22話 新たな冒険

しおりを挟む

 セリーナが病室でライオネルと過ごす日々は、彼の言葉で少しずつ明るくなっていった。
 時折、病室を訪れていた、エリザとローズも微笑ましかった。
 皆で、ライオネルが目指す治癒魔法のために必要な素材を集めるため、仲間たちとの旅が始まることを心待ちにしていた。




「みんな、集まってくれてありがとう。今日はセリーナを救うために、必要な素材を集めに行く」

 ライオネルの言葉に、仲間たちの顔が一斉に明るくなった。

「私たちもセリーナのために頑張るよ!」

 と、リーダー格のエリスが元気よく言った。

「行く場所は、禁断の森だ。そこには治癒の力を持つ草が生えているという話だ」

 ライオネルが続ける。

「禁断の森…あそこは危険だよね」

 と、慎重な性格のマルクが言った。

「確かに危険は伴う。覚悟が必要だ」

 仲間たちはそれぞれの決意を胸に秘め、出発の準備を整え始めた。



 出発の日、ライオネルはセリーナの病室に立ち寄った。ベッドに横たわりながらも、セリーナは期待に満ちた目を向ける。

「ライオネル、気をつけてね」

 不安そうに言うセリーナに、

「大丈夫、必ず戻る。君のために、全力を尽くす」

 ライオネルは力強く答え、セリーナの手を優しく握った。

「私もここで応援しています」

 セリーナの言葉に、ライオネルは勇気をもらう。




 禁断の森へ向かう途中、仲間たちは道中で様々な話を交わしながら進んでいく。緊張感が漂う中、エリスが話しかけてきた。

「ライオネル、セリーナと過ごした時間がすごく大事だって、最近感じるの。彼女は変わったわ」

 ライオネルは頷いた。

「そうだな、セリーナの笑顔は何だか力になる。だから、俺も絶対に治してみせる、って気になる」

 マルクも横から口を出す。
 再びライオネルが頷くと、

「大丈夫だって! お前のことも俺たちが支えるから、安心しなっ」

 マルクはそう笑顔で続けた。

 仲間たちの絆は深まっていく。それぞれの思いを抱きながら、森の入口に到着する。


 禁断の森は、暗く厚い木々が生い茂り、異様な静けさに包まれていた。ライオネルは仲間たちに指示を出す。

「まずは周囲を警戒しながら進もう。何が起こるかわからないから」

 皆は頷き、慎重に進んでいく。

 その時、ふと茂みが揺れた。ライオネルは身構えた。

「何かいる!」

 と、エリスが叫ぶ。

 次の瞬間、巨大な魔獣が現れた。仲間たちは一瞬驚き、すぐに戦闘体制に入った。

「ライオネル、どうする?」

 心臓はドキドキと高鳴る。ライオネルは剣を抜き、決意を新たにした。

「みんな、一緒に戦おう!」

 仲間たちは彼の言葉に奮起し、魔獣に立ち向かう。剣と魔法が交錯し、激しい戦闘が始まった。

 ライオネルはその中で冷静さを保ちつつ、仲間たちの連携を意識した。

「マルク、右側から回り込んで!」

「了解!」

 マルクが動き、ライオネルも続く。魔獣の攻撃をかわしながら、仲間たちと連携を取り、一撃を加えた。

「今だ、エリス!」

 エリスが魔法の力を放ち、魔獣に致命的な一撃を与える。仲間たちの力が結集し、魔獣はついに倒れた。

「やった…!」

 みんなは安堵の息をつく。

 しかし、ライオネルの心には緊張が残っていた。
 
 まだ、こんなもんじゃないだろう。
 次は何が?

 不安は募るが、ライオネルは仲間たちがいる限り、どんな試練にも立ち向かう覚悟があった。

 そして、これからも、
 セリーナのために。
 そう誓う。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ

Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます! ステラの恋と成長の物語です。 *女性蔑視の台詞や場面があります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...