41 / 81
第四十一話 予選開始!
しおりを挟む
「はい、次の人」
「ユートです」
「ユート、ユートさんね。あった、ハイどうぞ。このプレートは予選で使うからなくさないように注意してください」
今日はギルド感謝祭の予選実施日だ。会場入り口の受付で名前を告げると、ネーム入りのプレートを渡された。このプレートを使って何をするんだろう?
「それにしてもすごい人の数ね」
遅れて入ってきたアリサが思わず感嘆の声を漏らす。グランノーヴィル大陸の予選には、全部で百三ものギルドが参加しているらしい。一ギルドにつき五人代表が居るわけだから、ここには五百人以上の人がいるってことになる。
「みんな、召喚の準備はちゃんとしてきたか?」
ギルドのメンバーが全員入場したのを見てから、俺はみんなに確認する。
「勿論よ。……あんたはどの召喚をセットしてきたわけ?」
「ん? ああ、それは――」
――ドーン!
俺が言い終える前に赤色の煙幕が打ちあげられた。
「レディース&ジェントルメーン! 今日はみんなが待ちに待ったギルド感謝祭! なんと全部で百三のギルドが参加してくれることになったわ! この大会ではギルド代表の五人をチームと呼ばせてもらうけど、この百三チームの中の頂点を今日は決めるわよ! 盛り上がっていきましょ~!」
ローザがラッパのような拡声器を使ってイベントの開幕宣言をしている。ローザは大会の司会までやってるのか……大変そうだな。俺は前の方に行きローザに手を振るが、気づいてもらえない。この人数だから当たり前か。
「よ、期待の新人ユート君」
そう言って後ろから俺の肩を叩いたのは異端審問機関のリーダー、ミルドレッドだった。
「……どーも。もしかしてミルドレッドさんもこの大会に参加するの?」
「いや、違うよ。私は別件の方さ」
別件というのは、ヘルヘイムの幹部を捕まえるってやつのことだな。ヘルヘイムの名は会場では口にしてはいけないとローザに念を押されていたので、俺は黙って頷いた。
「ユートは参加者として頑張ってくれ。勿論有事の際には協力してほしいけどね」
「勿論協力しますよ。俺だって機関の一員なんだから」
ミルドレッドは俺の返事を聞くと、指を二本立ててよろしくとジェスチャーした後に人ごみの中に消えていった。
「しかし、この中に本当にいるのかね……」
俺は独り言をつぶやく。もし仮にこの中にヘルヘイムの連中がいたとしても、見つけ出すのは難しそうな気はしている。ミルドレッドには何か策があるのだろうか? そんなことを考えていると、再びローザのアナウンスが始まった。
「あーあー、みなさん聞こえますかー? 今から一次予選のルールを説明しま~す。この会場に入るときにプレートを配ったけど、ちゃんとなくさずに持ってるわよね?」
会場にいる人たちはネームプレートを確認している。早速これを使うのか。
「みんなにはこれから三十分間指相撲をしてもらいます! 互いの右手を親指以外の四本の指で握って、相手の親指を自分の親指で10カウント抑えたら勝ちというゲームよ。言われなくても知ってるわよね?」
指相撲だって? スポーツ大会という割には随分とこじんまりとした競技を選んだものだな。これだけ人がいるからそういう競技しか選べなかったのかな。
「近くにいる別のチームの人に声をかけて、お互いの同意が取れたらプレートを一つ賭けて勝負開始よ! 決着がついたら負けた人は勝った人にプレートを渡すこと。ここでプレート枚数の増減が発生するわけね。あと注意点が一つあって、同じチーム内だからと言ってプレートの譲渡は禁止! ……ルールはこれだけよ。簡単でしょ? プレートを集めた枚数が多い上位五チームが一次予選を勝ち抜けるわ」
会場がざわついた。ここでいきなり百三チームから五チームまで絞るのか。……勝ち抜けるのは大体5%ってところだな。というか指相撲って、俺たちのチーム不利じゃね?
「おい、みんなちょっとこっちに来てくれ」
俺はギルドのみんなを集めると、円陣を組んで作戦会議を始めた。
「いいか、自分より弱そうなやつとしか戦うなよ! 絶対だぞ! 特に一戦目は気をつけろよ? 負けたらそこで終わってしまうわけだからな」
会場には屈強な男もいるが、みたところ華奢な女の子もそれなりに居る。そういう相手に絞って戦わせた方が安全だろう。
「……わたし……左利き……」
シルヴィアが自信なさげに言う。シルヴィアは力があるほうじゃないし、かつ左利きとなるとここは安全策で行った方がいいな。
「わかった。シルヴィアは勝負しないで待機しててくれ。残りのメンバーでなんとかしよう、いいな?」
「わかったわ」
「……うん」
「わかったのである」
「承知いたしましたわ」
みんなは口々に返事をした。その声色からは不安な様子がうかがえる。俺も力が強いわけではないので正直自信はない……でもやるしかないんだ。
「さあ準備はいい? 3カウントしたら始めるわよ! ……3……2……1……スタート!」
会場内の人が一斉に動き始めた。
「ユートです」
「ユート、ユートさんね。あった、ハイどうぞ。このプレートは予選で使うからなくさないように注意してください」
今日はギルド感謝祭の予選実施日だ。会場入り口の受付で名前を告げると、ネーム入りのプレートを渡された。このプレートを使って何をするんだろう?
「それにしてもすごい人の数ね」
遅れて入ってきたアリサが思わず感嘆の声を漏らす。グランノーヴィル大陸の予選には、全部で百三ものギルドが参加しているらしい。一ギルドにつき五人代表が居るわけだから、ここには五百人以上の人がいるってことになる。
「みんな、召喚の準備はちゃんとしてきたか?」
ギルドのメンバーが全員入場したのを見てから、俺はみんなに確認する。
「勿論よ。……あんたはどの召喚をセットしてきたわけ?」
「ん? ああ、それは――」
――ドーン!
俺が言い終える前に赤色の煙幕が打ちあげられた。
「レディース&ジェントルメーン! 今日はみんなが待ちに待ったギルド感謝祭! なんと全部で百三のギルドが参加してくれることになったわ! この大会ではギルド代表の五人をチームと呼ばせてもらうけど、この百三チームの中の頂点を今日は決めるわよ! 盛り上がっていきましょ~!」
ローザがラッパのような拡声器を使ってイベントの開幕宣言をしている。ローザは大会の司会までやってるのか……大変そうだな。俺は前の方に行きローザに手を振るが、気づいてもらえない。この人数だから当たり前か。
「よ、期待の新人ユート君」
そう言って後ろから俺の肩を叩いたのは異端審問機関のリーダー、ミルドレッドだった。
「……どーも。もしかしてミルドレッドさんもこの大会に参加するの?」
「いや、違うよ。私は別件の方さ」
別件というのは、ヘルヘイムの幹部を捕まえるってやつのことだな。ヘルヘイムの名は会場では口にしてはいけないとローザに念を押されていたので、俺は黙って頷いた。
「ユートは参加者として頑張ってくれ。勿論有事の際には協力してほしいけどね」
「勿論協力しますよ。俺だって機関の一員なんだから」
ミルドレッドは俺の返事を聞くと、指を二本立ててよろしくとジェスチャーした後に人ごみの中に消えていった。
「しかし、この中に本当にいるのかね……」
俺は独り言をつぶやく。もし仮にこの中にヘルヘイムの連中がいたとしても、見つけ出すのは難しそうな気はしている。ミルドレッドには何か策があるのだろうか? そんなことを考えていると、再びローザのアナウンスが始まった。
「あーあー、みなさん聞こえますかー? 今から一次予選のルールを説明しま~す。この会場に入るときにプレートを配ったけど、ちゃんとなくさずに持ってるわよね?」
会場にいる人たちはネームプレートを確認している。早速これを使うのか。
「みんなにはこれから三十分間指相撲をしてもらいます! 互いの右手を親指以外の四本の指で握って、相手の親指を自分の親指で10カウント抑えたら勝ちというゲームよ。言われなくても知ってるわよね?」
指相撲だって? スポーツ大会という割には随分とこじんまりとした競技を選んだものだな。これだけ人がいるからそういう競技しか選べなかったのかな。
「近くにいる別のチームの人に声をかけて、お互いの同意が取れたらプレートを一つ賭けて勝負開始よ! 決着がついたら負けた人は勝った人にプレートを渡すこと。ここでプレート枚数の増減が発生するわけね。あと注意点が一つあって、同じチーム内だからと言ってプレートの譲渡は禁止! ……ルールはこれだけよ。簡単でしょ? プレートを集めた枚数が多い上位五チームが一次予選を勝ち抜けるわ」
会場がざわついた。ここでいきなり百三チームから五チームまで絞るのか。……勝ち抜けるのは大体5%ってところだな。というか指相撲って、俺たちのチーム不利じゃね?
「おい、みんなちょっとこっちに来てくれ」
俺はギルドのみんなを集めると、円陣を組んで作戦会議を始めた。
「いいか、自分より弱そうなやつとしか戦うなよ! 絶対だぞ! 特に一戦目は気をつけろよ? 負けたらそこで終わってしまうわけだからな」
会場には屈強な男もいるが、みたところ華奢な女の子もそれなりに居る。そういう相手に絞って戦わせた方が安全だろう。
「……わたし……左利き……」
シルヴィアが自信なさげに言う。シルヴィアは力があるほうじゃないし、かつ左利きとなるとここは安全策で行った方がいいな。
「わかった。シルヴィアは勝負しないで待機しててくれ。残りのメンバーでなんとかしよう、いいな?」
「わかったわ」
「……うん」
「わかったのである」
「承知いたしましたわ」
みんなは口々に返事をした。その声色からは不安な様子がうかがえる。俺も力が強いわけではないので正直自信はない……でもやるしかないんだ。
「さあ準備はいい? 3カウントしたら始めるわよ! ……3……2……1……スタート!」
会場内の人が一斉に動き始めた。
0
お気に入りに追加
1,263
あなたにおすすめの小説
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる