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5章
37-2
しおりを挟む「私は席を外します」
ガレットが言うには数分で意識を取り戻したようだが、再び目を開けてしまったことに罪悪感以上恥を感じる。
体調は最悪で、いつ倒れてもおかしくない状況で立ち続けている。
「しばらくこの部屋には入らないようにと、みなさまにお伝えください」
「承知致しました」
ガレットは重そうな体を引きずり部屋を後にした。
「やっと貴方と過ごしてきた時間を振り返れる」
1人になるまでソフィーとの過去のことは思い出さないようにしていた。
1つでも過去のことを振り返れば、涙が溢れることがわかっていたから。
私の行動が背徳的であることはわかっている。
だがそれでも、最後に顔を合わせた今日の朝から、初めて出会った5歳の頃まで記憶を辿る旅にでる。
「一緒に行こうソフィー」
~
丸1日、私は一時もその場を離れずソフィーと共に時間を過ごした。
再び目を開き、私はソフィーに語りかけた。
「ソフィー、貴方はきっと私に生きて欲しいと言うでしょう。この先生きていけるかはわかりません。でも生きるにしても死ぬにしても、先に終わらせなければならないことが残っています。もう私は止まりません」
守るべきものが多いと、弱点が増える、そんなことを時々耳にするが、私に守るべきものはなくなった。
途絶えることなく燃え続ける炎が私に宿った。
……
ソフィーがこの世を旅立ってから2日が経った。
今日は、捕らえることのできた敵襲たちの処刑日。
本来処刑をするならその日のうちに執り行うのがソラッド王国でのルールだが、グレーたちは、私の回復を待ってくれていた。
「敵の正体は?」
「拷問をかけても口を割りませんが、麻薬の香りがしたのでリバリフト、ソルティのものだと」
「それだけではありません」
全身を包帯で巻かれているガレットが口を挟んだ。
命懸けでクリスタル様を守ったガレット、最後までソフィーの命を守ってくれた…
「リバリフト、ソルティの騎士の戦闘スタイルは似ています。ですが敵の中に、全く違う戦闘スタイルのやからもいました」
「そう言われてみれば、俺の肩をやったやつもどこかスタイルが違ったような、」
ムーランドまでそう言うなら間違いないだろう。
「どこのやからかわかるか?」
ここにいる者は、みな復讐心に駆られているが、グレーだけは冷静さを保って話を進めた。
「あれはパドリセンのスタイルです」
「パドリセン…」
すぐに1人の人物が頭に浮かんだが、それは頭の片隅に置いておく。
「詳しい話は後にして、処刑所に行きましょう」
殺らなうちは、話にならない。
~~
処刑所には10人ほど、残虐犯が収容されていた。
「これなら、あと数日放置しておいてもよかったかもしれませんね」
「うぉおおお~」
「うわぁぁぁ~」
10人中10人が麻薬をやっていたのだろう、
禁断症状でもがき苦しんでいた。
麻薬での苦しみに、肉体を切り裂く痛み、苦しみと痛みの先に待つものが死。それも悪くはないだろう。
……
「さっさと殺せ~…」
何の躊躇いもなかった、ただガレットに教わったように剣を振るった。
急所を避けて斬ることで、長く痛みを与え、
その上で死を迎える。
1人目でコツを掴み、言葉で恐怖心を煽り、斬る。
不快感もなければ、快感もない。
こんなことをしていても、結局ソフィーは戻ってこない。
…
「貴方が最後。どうしてソフィーを殺したの?」
こいつは他の奴とは違った。首に剣をなぞらせふも、死に対する恐怖が一切見えない。
「ど、どうしてって、そりゃ全員殺せって命令受けてんだよこっちは」
「あの子はね、私たちと違って輝きを放ってた。わかる?
不幸街道を進む私たちと違って、幸せになれる可能性のある子だった」
「まったく、そりゃ気の毒な話だ。けどな、俺はな俺は1mmも後悔してないぜ、最高だったぜ!」
今にも剣を振り上げそうになったが、私は剣を1人の男に渡した。
「ガレット、後は任せました。煮るなり焼くなり貴方の好きにしないさい」
やるせない気持ちを感じているのは私だけではない。守りきれなかった後悔でガレットは今も苦しみ続けている。
こうすることは最初から決めていた。
ガレット、貴方はここでその後悔を断ち切って…
私にはこいつらだけでなく、違うやつらの処刑も残っている。
絶対に許さない。
「承知致しました…」
ガレットが最後の1人に剣を向けたときだった。
「ローズ、大変だ」
2人だけで入っていた処刑所に、デミアン様が慌てて入ってきた。
「ロミナ卿とロッキー兄様が、国家反逆罪で捕まりました!」
「そんな…」
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