本当の絶望を

夕浪沙那

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5章

33-1

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ラビエット。
半年に1度、国を統治するものたちが集まり、
都の今後の動向について話し合う会議。

デミアン様の話では、ここ数年ラビエットにアンディークが招待されることはなかったはずだが…

招待せざる終えないほど、ここ最近のアンディークが利益を出し続けているということか?

招待の理由はわからないが、私たちが無視できない存在になったということだ。

「お嬢様にも…」

「珍しいですね、夫人にまで招集がかかる話は聞いたことがありません」

「私にも何かしらの用があるということでしょう」

ラビラ、ロミナ、ロッキー、国王、復讐の相手が一同に揃う。

危険な匂いしかしないが、こんな機会は滅多にない。できることだけ最大限にすればいい。

「日時を伺っても?」

「明日の正午です…」

相変わらず、招待状か届くのは急だ。

そのまま旧王宮とデミアン邸にいるものは慌ただしく準備におおわれた。

……

「急に呼び出して、申し訳ありません」

「いえ、新たな仕事ですか?」

夜遅く準備を終えた私は、アイカス神殿にガレットを呼んだ。

「ガレット、貴方に頼みたいことがあるの」

「内容を伺っても?」

「明日パドリセンでラビエットが開かれます。
グレーが帰るまでの間、ビスカスに行ってクリスタル様の護衛をお願いしたいのですか?」

「ルワーナ騎士団だけでは不安ですか?」

「そうですね…
相手は何をしてくるのかわかりません」

「ソフィーもちょうど明日からクリスタル様に使えることになっています。一緒に向かってもらいたいです」

敵が動くには絶好の機会だ。

「承知致しました。ソフィー様に同行します」

グレーも警戒しているだろうが、念には念を。失敗しない男だ、きっと大丈夫だろう。

……

「気をつけていってきてください」

「ガレット、クリスタル様とソフィー様を頼んだぞ」

「承知致しました」

先に出発する2人を見送り、私たちも王都・パドリセンに向け出発した。

長い一日の始まりだ。

パドリセンに着いたら、まず初めにピアール邸に向かい、婚約のことで父様とお母様に挨拶。

その後、国王と王妃様に婚約の挨拶。

最後にラビエット。

気が滅入ってしまいそうな予定が3つも入っている。

「ローズ、前にパドリセンに行ったときよりもリラックスしているのは気のせいですか?」

「いえ、緊張はしていますが、動悸がするほどの緊張感は感じていません」

お父様とお母様への婚約の挨拶が、最初でよかったとすら思う。

1番緊張しないというのもあるが、次に控える国王と王妃様への挨拶のいい練習台になる。

後になるにつれ、緊張感の高い予定が私を待っている。

正直最後まで正気を保っていられるか、自分自身でもわからない。

「デミアン様も緊張しているようには見えませんが、」

「ここまで来てしまっては、恐れるものもありません」

「そうですね」

結婚式のときのようなみすぼらしい姿はもう絶対に見せない。

デミアン様も思っていることは同じだろう。

……

あれから私は多くのことを経験した。 

そこで気づいた。私はあの人たちを恐れているのでなく、自分自身を恐れているだけ。

ただ堂々としていればいい。

ピアール邸に着くも、出迎えは1人もいない。

アンディークでの私ならありえない光景だが、ここではこれが普通だ。

原点に帰ってきた、むしろ私らしい。

できる限り人と合わない道を選び自室に向かった。

「本当に会わない…」

私がこの家のことを知り尽くしていることを、改めて痛感する。

お母様に会いたくない一心で、試行錯誤を繰り返した末に死に物狂いで見つけ出した道だ。

「ただいま」

扉を開くと、何一つ手をつけられていなかったのだろう、多くの家具がホコリを被っていた。

家に入ったときは何も感じなかったが、自分の部屋はやはり特別だった。

足を踏み入れた瞬間、過去の自分の姿が蘇ってくる。

過去の私に戻らせようとする力がこの部屋にはある。

執念深い呪いのようだ。

長くいるだけ、その力に引き込まれていく。

ここでは意志の強さなど関係ない。

耐えようとするだけ無駄だ。すぐに部屋を出て、庭園を見に外に向かった。
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