小河内ムーンライト

戦争の臭いが近づく帝都。敵性音楽ジャズを指摘され、銀座から散り散りとなるバンドマンたち。宛てのない上寺智。手には一度も演奏したことのない「ムーンライトセレナーデ」の楽譜。上寺は考えもなしに、小河内へと流れていく。もうすぐ湖底に沈むと囁かれる鄙びた温泉地、そこはダムの作業員で活気に溢れていた。
「サックス奏者だった上寺智さん。ジョーさんですよね?」
ダム工事の若い男は、彼の演奏を覚えていた。ひょんなことから、二人はこの小河内で、一緒に演奏することとなる。
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