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TPO
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「おいリッキー。どうなってるんだよこれ! 額に『ゲイ』って……。でもなんかすげぇ力が湧いてきてるんだけど……」
俺は両の拳を握りしめた。
ただそれだけ。だが明らかに今までと筋力が違うのが分かる。
「拓也さん……。力が湧いてくるのは当たり前です! 拓也さんは、あの伝説の『ゲイの騎士』だったんですもの! その額の『ゲイ』の文字が何よりの証拠です。この世界の均衡が崩れた時、ファザーゲイと呼ばれる神によって生み出されるのが『ゲイの騎士』なんです。その力は神にも匹敵するとか……。私も架空の存在だとばかり思っていました」
伝説の『ゲイの騎士』?
ファザーゲイ?
神にも匹敵する力?
頭が混乱する。全くもって理解できる気がしない。
が、しかし今はそれどころではない! 力が手に入ったのであれば、すぐにでも親父を助けなければいけない!
「お、おい魔王バドラー。親父から……親父の股から手を離せ!!!」
いくら力を手に入れたからといって、魔王への恐怖心が完全に取り除けた訳ではなかった。
俺は振り絞るように声を震わせた。
「なんだ、貴様は。まだいたのか? お前には用はないんだよ。邪魔者は消えろ」
魔王が人差し指を立てた。
その指先に大きな火の玉が現れる。
この間も、魔王はもう片方の手で親父の股をまさぐるのをやめない。
「ブヒィー……。た、拓也……。逃げ……ろ。ブヒィー! 父さんのことは……ブ、ブヒヒッ。放っておいていいから」
「親父! 何言ってんだよ! 放っておける訳ないだろ!」
そんな姿の親父を放ってはおけない。
親父の処女が今まさに奪われようとしているんだ!
俺が……俺が絶対に守る!
そして……その処女膜は俺が……。
「!?」
あれ? 俺どうしたんだろ……。親父を抱こうとしてるのか?
「黙れ。死ね。火炎呪文」
思考回路はショート寸前だった。
だが、そんな俺に向けて魔王は呪文を放ってきた。
目の前に迫る火の玉。
その瞬間リッキーの声が聞こえてきた。
「拓也さん! 頭でイメージするの! 今のあなたなら防げるから!」
イメージ。
それなら得意だ。何せ俺はこの豊かな妄想力と右手だけで何回も、いや、何千回も相棒を慰めてきたんだ。
「男愛闘気!!!」
迫り来る火の玉をかき消すイメージをしながら、両手を前に突き出す。
すると目の前の巨大な火の玉は、俺の手に触れる寸前のところで弾け、消滅した。
言葉は何というか……勢いで口から出てきた。
「な、な、何!? 何が起きたというんだ」
明らかに魔王が動揺した。
渾身の呪文が防がれるなんて、これっぽっちも思っていなかったのだろう。
が、しかし未だ魔王は親父の股をまさぐるのをやめない。
「今のは、男愛闘気だわ。『ゲイの騎士』の血液は汚れなきオーガニックのコーラでできているの。それを体内から放出させることであらゆるものを自然に帰すことができると聞いたことがあるわ!」
ナイスリッキー。今のは凄くわかりやすい説明だ!
これならいける!
「次はこっちの番だ!」
落ちていた鉄の棒を拾って、力を込める。
先ほどの男愛闘気を鉄の棒に伝える感覚で。
そして、鉄の棒を逆手に持ちなおし、体を半分捻る。
「くらえ! ゲイストラッシュ!!!」
「させるか、極大閃光呪文!」
魔王もすかさず、呪文で反撃を仕掛けてきた。
激しい光がぶつかり合う。
「グハァ……」
一瞬だった。
魔王の呪文を俺のゲイストラッシュが切り裂いた。
そしてその光の刃は、魔王の両手を切り落としていた。
もちろん親父は無事だ。
「親父! 大丈夫か?」
親父の元へ駆けつけた時には、俺の額から『ゲイ』の文字は消えていた。
リッキー曰く、額の文字は俺の相棒が同性に対してモッコリしている時にだけ現れるらしい。
思い返してみると、親父が魔王に犯されると思った時から相棒はモッコリしていた気がする。
そして、魔王を倒した安心感で相棒はすっかり元気をなくしていた。
「なんで助けたんだよ~! めっさ気持ち良くて、もう少しで絶頂だったのにー! もう父さん、激おこだぞー! プンプン!」
最悪だ……。こんな奴のために俺は命を張ったのか。というかこんな奴にモッコリしていたのか……。
多分、額に浮かび上がったゲイの文字のせいでおかしくなっていたんだ!
俺は自分が親父の処女膜を奪おうとしていたことを、心底後悔した。
とはいえ、魔王を倒したのだからこれで、『体外受精装置』が手に入る。そしてそれを使えば、親父とセッ○スしないで元の世界に戻れる!
俺は倒れている魔王の横にある、体外受精装置に手を伸ばした。
その瞬間
「危ない!!!」とリッキーが大きな声を出した。
「あっ、あっ、あっ……」
余りの衝撃に声が出せない。
それは本当に一瞬の出来事だった。
魔王が鋭利に尖った尻尾で俺を刺そうとした。
そして俺をかばう為に親父が俺を突き飛ばしたのだった。
「この程度で勝ったと思うなよ、くそ人間共がぁ!!!」
魔王の尻尾が親父の腹部を貫通している。
そしてそこからは大量に血が流れ出ていた。
「た、拓也……。早く、逃げな……さい」
「で、でも、親父……」
「早くしろ拓也ッ!!! 冗談抜きで言っているんだ! この状況だ、お前でもわかるだろ……。TPOをわきまえなさい! Time(時間)、Place(場所)、Onany(自慰行為)だろうが! 学校で習っただろ!」
だから、そういうところなんだって。親父。
何言ってるか意味わかんないし、その言葉をこのタイミングで使うこと自体がTPOをわきまえてないからな!?
「拓也さえ生き残っていれば、必ず魔王を倒せるはずだ。さっきのゲイストラッシュ……かっこよかったぞ。元の世界に戻ったら、莉乃ちゃんによろしくな。あ、あと、カインにも『愛してる』と伝えてくれ。頼むな……」
「で、でも……」
「でもじゃない!!! 分かったら早く行きなさい」
「拓也さん! 今は親父さんの言う通りにしましょう。ゲイの文字が浮かんでいないあなたはただの足手まといです! 親父さんの思いを無駄にしてはいけません! それにあなたが心配していることに関しては大丈夫です。仮に親父さんがここで死んでしまっても元の世界に戻れる可能性はあるんです!」
まさにリッキーの言う通りだった。俺が食い下がっていたのは、親父が死んだら元の世界に戻れないと思っていたからなのだ。
そもそも元の世界に戻るためにはエルフを絶滅から救わなきゃいけない。そして親父がその最後のエルフなわけだ。
だから俺は親父が死んだらもうその時点で、元の世界に戻れないと思って心配していた。
だが、その心配がないなら俺は走る。俺だけでも行きなければならない。それが意志を繋ぐということだから!
俺は両の拳を握りしめた。
ただそれだけ。だが明らかに今までと筋力が違うのが分かる。
「拓也さん……。力が湧いてくるのは当たり前です! 拓也さんは、あの伝説の『ゲイの騎士』だったんですもの! その額の『ゲイ』の文字が何よりの証拠です。この世界の均衡が崩れた時、ファザーゲイと呼ばれる神によって生み出されるのが『ゲイの騎士』なんです。その力は神にも匹敵するとか……。私も架空の存在だとばかり思っていました」
伝説の『ゲイの騎士』?
ファザーゲイ?
神にも匹敵する力?
頭が混乱する。全くもって理解できる気がしない。
が、しかし今はそれどころではない! 力が手に入ったのであれば、すぐにでも親父を助けなければいけない!
「お、おい魔王バドラー。親父から……親父の股から手を離せ!!!」
いくら力を手に入れたからといって、魔王への恐怖心が完全に取り除けた訳ではなかった。
俺は振り絞るように声を震わせた。
「なんだ、貴様は。まだいたのか? お前には用はないんだよ。邪魔者は消えろ」
魔王が人差し指を立てた。
その指先に大きな火の玉が現れる。
この間も、魔王はもう片方の手で親父の股をまさぐるのをやめない。
「ブヒィー……。た、拓也……。逃げ……ろ。ブヒィー! 父さんのことは……ブ、ブヒヒッ。放っておいていいから」
「親父! 何言ってんだよ! 放っておける訳ないだろ!」
そんな姿の親父を放ってはおけない。
親父の処女が今まさに奪われようとしているんだ!
俺が……俺が絶対に守る!
そして……その処女膜は俺が……。
「!?」
あれ? 俺どうしたんだろ……。親父を抱こうとしてるのか?
「黙れ。死ね。火炎呪文」
思考回路はショート寸前だった。
だが、そんな俺に向けて魔王は呪文を放ってきた。
目の前に迫る火の玉。
その瞬間リッキーの声が聞こえてきた。
「拓也さん! 頭でイメージするの! 今のあなたなら防げるから!」
イメージ。
それなら得意だ。何せ俺はこの豊かな妄想力と右手だけで何回も、いや、何千回も相棒を慰めてきたんだ。
「男愛闘気!!!」
迫り来る火の玉をかき消すイメージをしながら、両手を前に突き出す。
すると目の前の巨大な火の玉は、俺の手に触れる寸前のところで弾け、消滅した。
言葉は何というか……勢いで口から出てきた。
「な、な、何!? 何が起きたというんだ」
明らかに魔王が動揺した。
渾身の呪文が防がれるなんて、これっぽっちも思っていなかったのだろう。
が、しかし未だ魔王は親父の股をまさぐるのをやめない。
「今のは、男愛闘気だわ。『ゲイの騎士』の血液は汚れなきオーガニックのコーラでできているの。それを体内から放出させることであらゆるものを自然に帰すことができると聞いたことがあるわ!」
ナイスリッキー。今のは凄くわかりやすい説明だ!
これならいける!
「次はこっちの番だ!」
落ちていた鉄の棒を拾って、力を込める。
先ほどの男愛闘気を鉄の棒に伝える感覚で。
そして、鉄の棒を逆手に持ちなおし、体を半分捻る。
「くらえ! ゲイストラッシュ!!!」
「させるか、極大閃光呪文!」
魔王もすかさず、呪文で反撃を仕掛けてきた。
激しい光がぶつかり合う。
「グハァ……」
一瞬だった。
魔王の呪文を俺のゲイストラッシュが切り裂いた。
そしてその光の刃は、魔王の両手を切り落としていた。
もちろん親父は無事だ。
「親父! 大丈夫か?」
親父の元へ駆けつけた時には、俺の額から『ゲイ』の文字は消えていた。
リッキー曰く、額の文字は俺の相棒が同性に対してモッコリしている時にだけ現れるらしい。
思い返してみると、親父が魔王に犯されると思った時から相棒はモッコリしていた気がする。
そして、魔王を倒した安心感で相棒はすっかり元気をなくしていた。
「なんで助けたんだよ~! めっさ気持ち良くて、もう少しで絶頂だったのにー! もう父さん、激おこだぞー! プンプン!」
最悪だ……。こんな奴のために俺は命を張ったのか。というかこんな奴にモッコリしていたのか……。
多分、額に浮かび上がったゲイの文字のせいでおかしくなっていたんだ!
俺は自分が親父の処女膜を奪おうとしていたことを、心底後悔した。
とはいえ、魔王を倒したのだからこれで、『体外受精装置』が手に入る。そしてそれを使えば、親父とセッ○スしないで元の世界に戻れる!
俺は倒れている魔王の横にある、体外受精装置に手を伸ばした。
その瞬間
「危ない!!!」とリッキーが大きな声を出した。
「あっ、あっ、あっ……」
余りの衝撃に声が出せない。
それは本当に一瞬の出来事だった。
魔王が鋭利に尖った尻尾で俺を刺そうとした。
そして俺をかばう為に親父が俺を突き飛ばしたのだった。
「この程度で勝ったと思うなよ、くそ人間共がぁ!!!」
魔王の尻尾が親父の腹部を貫通している。
そしてそこからは大量に血が流れ出ていた。
「た、拓也……。早く、逃げな……さい」
「で、でも、親父……」
「早くしろ拓也ッ!!! 冗談抜きで言っているんだ! この状況だ、お前でもわかるだろ……。TPOをわきまえなさい! Time(時間)、Place(場所)、Onany(自慰行為)だろうが! 学校で習っただろ!」
だから、そういうところなんだって。親父。
何言ってるか意味わかんないし、その言葉をこのタイミングで使うこと自体がTPOをわきまえてないからな!?
「拓也さえ生き残っていれば、必ず魔王を倒せるはずだ。さっきのゲイストラッシュ……かっこよかったぞ。元の世界に戻ったら、莉乃ちゃんによろしくな。あ、あと、カインにも『愛してる』と伝えてくれ。頼むな……」
「で、でも……」
「でもじゃない!!! 分かったら早く行きなさい」
「拓也さん! 今は親父さんの言う通りにしましょう。ゲイの文字が浮かんでいないあなたはただの足手まといです! 親父さんの思いを無駄にしてはいけません! それにあなたが心配していることに関しては大丈夫です。仮に親父さんがここで死んでしまっても元の世界に戻れる可能性はあるんです!」
まさにリッキーの言う通りだった。俺が食い下がっていたのは、親父が死んだら元の世界に戻れないと思っていたからなのだ。
そもそも元の世界に戻るためにはエルフを絶滅から救わなきゃいけない。そして親父がその最後のエルフなわけだ。
だから俺は親父が死んだらもうその時点で、元の世界に戻れないと思って心配していた。
だが、その心配がないなら俺は走る。俺だけでも行きなければならない。それが意志を繋ぐということだから!
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