2 / 2
雨上がり、
しおりを挟む
「だから! いない知らないって言ってるだろ!! 大体今更必死になって探したって浮気してたテメーのところになんか帰ってこねーよ!」
クローゼットの中にいても鮮明に聞こえてくる友達の怒鳴り声に肩が跳ねます。
また、あの人が来たのかな。
彼との関係はもう完全に切れたと思っていました。それなのに、友人宅に居候している僕を彼は何回も訪ねてきました。
ガチャっというドアの音で彼が帰ったことを知ります。僕はクローゼットを出て、友人のために飲み物を用意しようとキッチンに行きました。
「...ったく、なんなんだよあいつ...」
頭をかきながらリビングに入ってきた友人に申し訳なさを覚えます。
「...ごめんね、迷惑かけて」
座った友人の前にお茶を出して俯いたまま謝りました。
恥ずかしさと申し訳なさ。その中には彼をまだ思っている僕に対しての気持ちもありました。
「君のせいじゃないさ。あいつがどうかしてるんだよ」
そう言われても僕の気持ちは晴れません。
「僕 、彼に会ってくる」
これ以上この優しい友人に迷惑はかけられないです。僕の問題なら僕がなんとかしなくっちゃ。
友人が何か言ってるような気がしましたが、僕は聞く前に家を出ました。
久しぶりに来た。僕と彼が一緒に住んでた家。
まだここに住んでるといいんだけどな。そう思いながら僕は家の鍵を開けようとします。
「......あ」
鍵ないや。まあ、でももう変えちゃってるかな? 仕方が無いのでチャイムを鳴らします。
...出ない。いないのかなぁ...。今日は諦めて帰ろうとした時、ドアが開き、片手で口を塞がれ手を引かれ中に連れ込まれました。
「ん!!?」
「...あぁ君だ。君の匂いだ。本当に君なんだ」
前から抱き込まれ首筋の匂いを嗅がれました。前にいる人からは大好きだった彼の匂いがしています。
「離してください...」
体の間に腕を入れ押し返そうとしましたが、うまくいきませんでした。
「やだ、もう絶対離さない」
「離さないって...、あなたが! あなたが、僕を離したんじゃないですか...」
少し声が震えて小さくなりましたが、彼には聞こえたみたいです。体を離してくれました。手は繋いだままで。
久しぶりに見た彼の顔は少しやつれていました。目元もクマができていて、ちゃんと休んでいるのか心配になります。
「ご飯ちゃんと食べていますか? ちゃんと休んでいますか?」
僕が聞くと彼は俯き小さな声で「食べてるし休んでるから大丈夫」と言いました。
少し考えたあとで僕は彼を押しのけて家の中に勝手に上がりました。キッチンに向かう僕を見て彼は待ってとかなんとか言っていますが構わずに冷蔵庫を開きます。...中にはペットボトルに入ったお茶だけでした。
「...ちょっと待っててください」
僕は家を出ようとしました。でも彼に腕を掴まれて動けなくなりました。
「どこに行くつもり? また消えちゃうの?」
「買い物に行くんです。あなたの冷蔵庫何も入ってないじゃないですか」
「俺も一緒に行く」
少し溜息をつきたくなりましたが我慢しました。離れようとしない彼を連れて近所のスーパーに行きます。
彼の好きなメニューを作りたいけどあの様子だとしばらく食べてなさそうだなと思い胃に優しいものにしようと決めました。彼は卵を落としたうどんも好きだったはずなのでうどんと卵を買います。他にも色々必要かなと思うものをカゴに入れていきレジに向かいます。お金は離れずくっついていた彼が出してくれました。荷物も重たいものを持とうとしていたけど、さすがにこんな状態の彼に重たいものは持たせられません。軽い方を持ってもらい家に戻ります。
無言のまま家まで帰り、そのままご飯を作り始めます。
彼はその間ぼーっと立っていました。
「はい、食べて」
席につかせてうどんを出します。彼は恐る恐る手を伸ばし、いただきますをしてから食べ始めました。
僕は彼の正面に座ってテレビを見ていました。
しばらくすると箸を置く音が聞こえ、食べ終わったのかなと思った僕は彼を見ました。
驚きました。
彼はうどんを汁まで飲んでくれていました。そして、泣いていたのです。
声も出さず無言で涙を落とす彼に僕は焦ります。
「どうしたの? 体調悪い? 美味しくなかった? 大丈夫?」
...彼はゆるゆると首を振ってます。その時も涙は流れているままでした。
僕は彼の隣に行き、肩を抱きます。
「... ...君のご飯がまた食べられるなんて思ってなかった」
すごく、小さな声でした。
彼は震えた声を隠すように少しずつゆっくり話し出しました。
「ごめん...。本当にごめん。俺はやっちゃいけないことをした。当たり前の事を考えられなかった。君がいなくなってやっと気づいたんだ。俺は君がいないと何も楽しいと思えない。何もない日も君がいたから...酷いことしてごめん」
「...いいです、もう」
僕はそれしか言えませんでした。
彼を見つめます。ですが、彼はこちらを見てくれませんでした。
「僕はあなたの事が大好きです。今でも」
ギュッと抱きしめました。
「だから、さ」
クローゼットの中にいても鮮明に聞こえてくる友達の怒鳴り声に肩が跳ねます。
また、あの人が来たのかな。
彼との関係はもう完全に切れたと思っていました。それなのに、友人宅に居候している僕を彼は何回も訪ねてきました。
ガチャっというドアの音で彼が帰ったことを知ります。僕はクローゼットを出て、友人のために飲み物を用意しようとキッチンに行きました。
「...ったく、なんなんだよあいつ...」
頭をかきながらリビングに入ってきた友人に申し訳なさを覚えます。
「...ごめんね、迷惑かけて」
座った友人の前にお茶を出して俯いたまま謝りました。
恥ずかしさと申し訳なさ。その中には彼をまだ思っている僕に対しての気持ちもありました。
「君のせいじゃないさ。あいつがどうかしてるんだよ」
そう言われても僕の気持ちは晴れません。
「僕 、彼に会ってくる」
これ以上この優しい友人に迷惑はかけられないです。僕の問題なら僕がなんとかしなくっちゃ。
友人が何か言ってるような気がしましたが、僕は聞く前に家を出ました。
久しぶりに来た。僕と彼が一緒に住んでた家。
まだここに住んでるといいんだけどな。そう思いながら僕は家の鍵を開けようとします。
「......あ」
鍵ないや。まあ、でももう変えちゃってるかな? 仕方が無いのでチャイムを鳴らします。
...出ない。いないのかなぁ...。今日は諦めて帰ろうとした時、ドアが開き、片手で口を塞がれ手を引かれ中に連れ込まれました。
「ん!!?」
「...あぁ君だ。君の匂いだ。本当に君なんだ」
前から抱き込まれ首筋の匂いを嗅がれました。前にいる人からは大好きだった彼の匂いがしています。
「離してください...」
体の間に腕を入れ押し返そうとしましたが、うまくいきませんでした。
「やだ、もう絶対離さない」
「離さないって...、あなたが! あなたが、僕を離したんじゃないですか...」
少し声が震えて小さくなりましたが、彼には聞こえたみたいです。体を離してくれました。手は繋いだままで。
久しぶりに見た彼の顔は少しやつれていました。目元もクマができていて、ちゃんと休んでいるのか心配になります。
「ご飯ちゃんと食べていますか? ちゃんと休んでいますか?」
僕が聞くと彼は俯き小さな声で「食べてるし休んでるから大丈夫」と言いました。
少し考えたあとで僕は彼を押しのけて家の中に勝手に上がりました。キッチンに向かう僕を見て彼は待ってとかなんとか言っていますが構わずに冷蔵庫を開きます。...中にはペットボトルに入ったお茶だけでした。
「...ちょっと待っててください」
僕は家を出ようとしました。でも彼に腕を掴まれて動けなくなりました。
「どこに行くつもり? また消えちゃうの?」
「買い物に行くんです。あなたの冷蔵庫何も入ってないじゃないですか」
「俺も一緒に行く」
少し溜息をつきたくなりましたが我慢しました。離れようとしない彼を連れて近所のスーパーに行きます。
彼の好きなメニューを作りたいけどあの様子だとしばらく食べてなさそうだなと思い胃に優しいものにしようと決めました。彼は卵を落としたうどんも好きだったはずなのでうどんと卵を買います。他にも色々必要かなと思うものをカゴに入れていきレジに向かいます。お金は離れずくっついていた彼が出してくれました。荷物も重たいものを持とうとしていたけど、さすがにこんな状態の彼に重たいものは持たせられません。軽い方を持ってもらい家に戻ります。
無言のまま家まで帰り、そのままご飯を作り始めます。
彼はその間ぼーっと立っていました。
「はい、食べて」
席につかせてうどんを出します。彼は恐る恐る手を伸ばし、いただきますをしてから食べ始めました。
僕は彼の正面に座ってテレビを見ていました。
しばらくすると箸を置く音が聞こえ、食べ終わったのかなと思った僕は彼を見ました。
驚きました。
彼はうどんを汁まで飲んでくれていました。そして、泣いていたのです。
声も出さず無言で涙を落とす彼に僕は焦ります。
「どうしたの? 体調悪い? 美味しくなかった? 大丈夫?」
...彼はゆるゆると首を振ってます。その時も涙は流れているままでした。
僕は彼の隣に行き、肩を抱きます。
「... ...君のご飯がまた食べられるなんて思ってなかった」
すごく、小さな声でした。
彼は震えた声を隠すように少しずつゆっくり話し出しました。
「ごめん...。本当にごめん。俺はやっちゃいけないことをした。当たり前の事を考えられなかった。君がいなくなってやっと気づいたんだ。俺は君がいないと何も楽しいと思えない。何もない日も君がいたから...酷いことしてごめん」
「...いいです、もう」
僕はそれしか言えませんでした。
彼を見つめます。ですが、彼はこちらを見てくれませんでした。
「僕はあなたの事が大好きです。今でも」
ギュッと抱きしめました。
「だから、さ」
3
お気に入りに追加
36
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
幼馴染から離れたい。
じゅーん
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
グッバイシンデレラ
かかし
BL
毎週水曜日に二次創作でワンドロライ主催してるんですが、その時間になるまでどこまで書けるかと挑戦したかった+自分が読みたい浮気攻めを書きたくてムラムラしたのでお菓子ムシャムシャしながら書いた作品です。
美形×平凡意識
浮気攻めというよりヤンデレめいてしまった
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はじめまして🙇ストーリー凄い好きな感じで続きが気になってます‼️‼️完結では無いのですよね❓更新楽しみにしております🙇