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青木 森

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15_宿縁の章_28

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 死した者へ更なる仕打ちをするかのように、塵と化したナアクスカムをさげすむ眼で睨むワイスカムア。
 そんな彼女の姿に、ヤマトは自身とジゼの姿を重ね合わせ、得も言われぬ寂しさを感じ、
「そこまでする必要があったのか?」
「……何が言いたいのでありんす」
 妖艶な笑みの中に怒気を滲ませ振り返ると、
「アイツの言動は確かにロクでも無かったが、シンプルに……「(ワイスカムアに)振り向いて欲しかっただけ」だったんじゃないのか?」
「ヌシはロマンチストと言う輩でありんすなぁ」
 ワイスカムアの笑みの中から怒気が薄らぎ、
「あ奴と妾の間に、その様な色い感情などありはしぃせんぇ。この戦いの暁には最強座を求め、雌雄を決する約束の身。生き残るは、どちらか一方のみにありんす」
 すると、
「だとしてもだよぉ!」
 ボコッと土を跳ね退け、ジゼが地中から姿を現し、
「諭すやり方が、何かあったんじゃないの! ずっと一緒に同じ死線をくぐり抜けて、同じ目的のために切磋琢磨した仲だったんでしょ!」
 ワイスカムアは扇子で口元を隠して「コッコッコ」とお上品に笑い、
「造られ者如きが、まるで人の様な物言いでありんすなぁ」
「むぅ!」
 ジゼがムッすると、ヤマトがすかさず、
「そう言うアンタより、よほど人間に近いと俺は思うし、多分(俺達の)仲間たちも、そう言うんじゃないかぁ?」
 言ってのけるヤマトと、嬉しそうな笑顔を見せるジゼの背後に感じる、目には見えない多くの仲間たちの存在。
(人でないはヌシらが、人である妾に説教をたれるでありんすかぁ!)
 明らかな不愉快に表情を歪めると、
「ワムぅ」
 足元からするファティマの声にハッと我に返り、不安げに見上げるファティマの眼に、
(そうでありんした……坊とおらば、妾も人に留まって居られるでありんす)
 冷静さを取り戻し、
「すまぬでありんすなぁ、ファティ坊」
 自嘲気味に、
「妾はすっかり悪役でありんす」
「?」
 首を傾げるファティマに微笑みかけ、
「ともなれば、」
 ヤマトとジゼを、妖艶な笑み以って見つめ、
「ヌシらが正義の味方でありんすならぁ、坊に手を掛ける心配はありんせぇんなぁ?」
「当たり前だ!」
「当然だよ!」
 即答する二人に、
(さながら「光(ヤマトとジゼ)」と「闇(ワイスカムア)」の如きにありんすなぁ……)
 思わずこぼれた呟きに、
「「?」」
「何でんありんせぇん」
 ワイスカムアは妖艶な笑みに自嘲を滲ませ、
「宴の続きと参りんしょう!」
 戦いの継続を宣言した。
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