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青木 森

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15_宿縁の章_18

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 衝撃による雪煙吹きすさぶ中、
「ば、馬鹿……やろォ……が……」
 よろよろと起き上がるジャックと、
「だ、誰が……おバカ……ですの……」
 フラつきながらも起き上がるマリア。
「それにしても……何でございましょう……」
「あぁ?」
「まるで……まるで巨大な壁を相手に戦っている様な……昔味わった事のある無力感を、既視感として感じますわぁ……」
 困惑した笑みを浮かべ、悠然と待ち構えるアナクスとアナスを見据えると、ジャックは皮肉った笑みを浮かべ、
「そりゃあそうだろうよ」
「え?」
 きょとん顔のマリアを横目に立ち上がり、
『旧知の顔に随分なご挨拶じゃねぇかァ! なぁ、ワイスカムアとナアクスカムアさんよぉ!』
「「!」」
 驚く二人と、
「な!?」
 二人以上の驚きを見せるマリアと、フードの二人。
「何を言ってますのジャック! 二人は意識ごと消去されてぇ!」
「理屈なんざぁ知らねぇ!」
 ジャックは言い放ち、
「今までの事をよくよく考えて見りゃ、分かりそうな話じゃねぇか。変態的な最強へのこだわり、俺への毛嫌い、そして何より、俺の事を『粗忽者』と言いやがった」
「「…………」」
「俺を粗忽者呼ばわりで見下しやがるのは絶望神ナアクスカムア(アナス)、テメェだけだったからなぁ!」
「…………」
 信じ難い推測にマリアが言葉を取り戻せずにいると、アナスは「ハッハッハ」と高笑いを一つ上げ、
「万年かかって、やっと人並みの頭になったでござるか、ナムクスカムア(ジャック)!」
「チッ」
 いつもの様に逆上せず、小さく舌打ちするジャック。
 それには理由があった。
 スティーラーとは国を護り、相手の国を奪う、言うなれば戦闘のスペシャリスト。
 対してクローザーはその圧倒的火力を以って、裏切り者のスティーラーを破壊する為に造られた者であり、実戦経験は乏しい者達の集まり。ジャックはその一点にこそ付け入る隙があると思っていたのだが、結果は最悪、目の前の二人はスティーラーの戦闘経験値と、クローザーの攻撃力を兼ね備えた最強の戦士であった。
 顔には出さず、
(ちとやべぇな……)
 内心に焦りを覚えると、
「いけませんわァ!」
 マリアは参戦の動きを見せたフードの二人を声で制し、
「ジャック! 貴方もですわ!」
「あぁ?」
「わたくし達の務めを忘れましたの!」
「!」
(コイツ等のチカラを推し量る事と、戦闘力の可能な限りのそぎ落とし!)
 クローザーと同等の身になり、心の何処かに勝てるつもりの自分が居たことに気付かされ、
「チッ」
(マリアに諭されるとはなぁ)
 舌打ちしながらも自らを嘲り笑い、
「皆まで言うんじゃねぇ、ハナから分ぁ~てんだよ!」
 アナスとアナクスとなった、ナアクスカムアとワイスカムアを見据え、
「足引っ張っんじゃねぇぞ、「二面の死神」ィ!」
「わたくしより下位の「狂気神」に言われたくありませんわぁ♪」
 二人は笑い合い、
「「リスト、ロードォ!」」
 得意武器を手に構え直し、
「行くぞ!」
「行きますわよ!」
 走り出した。
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