500 / 535
15_宿縁の章_12
しおりを挟む
途端に貨物室内に流れ込む、大空へ連れ出そうとする冷たく激しい気流。
副操縦士が気流に体を持って行かれそうになりながら内壁に必死にしがみ付き、事の成り行きを見守る中、逆巻く強風を物ともせず立つアナクスは、お姫様抱っこしたファティマを優しい笑みを浮かべて見つめ、
「(怖いのなら)目をつぶっていても良いでありんすぇ」
フルフルと激しく首を横に振り、「平気」を懸命にアピールするファティマ。
「ダイジョウブなおぅ。ワムとイッショならぁ」
しかし上着を掴む小さな手は言葉とは裏腹、微かに小刻みに震えていた。
(幼き身でありながら強がりを……)
出会いから今日までを思い起こし、彼女の確かな成長に悦びを覚えつつ、
((ファティ)坊にとって、進むも地獄、戻るも地獄、留まるも地獄……)
視線を開いたハッチから覗く青空に移し、
「ならば共にイバラの道を歩むのみでありんす!」
意を決した様に走り出した。
「なァ!?」
おののく副操縦士。「開けろ」と言われた時点で予感はしていたものの、後に続いて走り出すアナスの背に、
『(パラシュートも着けないで)気は確かかァアァァァァ!』
制止の声を振り切り二人は大空へ飛び出し、輸送機はあっという間に遠くの存在と化した。
地球の無情な重力に引かれ、防寒着を激しくたなびかせながら落下するアナクスとファティマ、そしてアナスの三人。
落下速度は増して行き、迫る「白き地表」を見る事すらままならない状態の中、ファティマを暴風から守る為、体をよじり、地表に背を向け落下するアナクス。
そんなファティマが目にした物は、
「!」
青い空と、青い海に囲まれた、自然豊かな地球の姿。
地上で起きている人間同士の諍いなど、幻の様に。
「(地球は)青いホシなぉぅ……」
美しさに感動する姿に、アナクスは笑みを浮かべ、
「ほんに「坊(ぼう)」は、強きにありんすなぁ」
するとファティマは静かに首を横に振り、
「ツヨクなんてないなおぅ」
アナクスの胸の中で笑みを浮かべ、
「ファティの一つしかないイバショに(今は)いるから、ヘイキなだけなおぅ」
「ッ!」
今まで感じた事が無い程の「強い感情」に突き動かされたアナクスは、衝動的にファティマをギュッと抱きしめ、
「共に『修羅道』に堕ちんしょぅ……」
その感情は、友情、愛情、母性、様々な思いの複合体で、一言で言い表す事など不可能であった。
ファティマも言われた言葉の意味は理解出来なかったが「死しても共にある」との強い想いは感じ取り、
「ハイ、なおぅ」
首元に抱き付いた。
共にある存在理由を深め合う二人に対し、
(チッ……)
微かな不快感を口元に滲ませるアナス。
副操縦士が気流に体を持って行かれそうになりながら内壁に必死にしがみ付き、事の成り行きを見守る中、逆巻く強風を物ともせず立つアナクスは、お姫様抱っこしたファティマを優しい笑みを浮かべて見つめ、
「(怖いのなら)目をつぶっていても良いでありんすぇ」
フルフルと激しく首を横に振り、「平気」を懸命にアピールするファティマ。
「ダイジョウブなおぅ。ワムとイッショならぁ」
しかし上着を掴む小さな手は言葉とは裏腹、微かに小刻みに震えていた。
(幼き身でありながら強がりを……)
出会いから今日までを思い起こし、彼女の確かな成長に悦びを覚えつつ、
((ファティ)坊にとって、進むも地獄、戻るも地獄、留まるも地獄……)
視線を開いたハッチから覗く青空に移し、
「ならば共にイバラの道を歩むのみでありんす!」
意を決した様に走り出した。
「なァ!?」
おののく副操縦士。「開けろ」と言われた時点で予感はしていたものの、後に続いて走り出すアナスの背に、
『(パラシュートも着けないで)気は確かかァアァァァァ!』
制止の声を振り切り二人は大空へ飛び出し、輸送機はあっという間に遠くの存在と化した。
地球の無情な重力に引かれ、防寒着を激しくたなびかせながら落下するアナクスとファティマ、そしてアナスの三人。
落下速度は増して行き、迫る「白き地表」を見る事すらままならない状態の中、ファティマを暴風から守る為、体をよじり、地表に背を向け落下するアナクス。
そんなファティマが目にした物は、
「!」
青い空と、青い海に囲まれた、自然豊かな地球の姿。
地上で起きている人間同士の諍いなど、幻の様に。
「(地球は)青いホシなぉぅ……」
美しさに感動する姿に、アナクスは笑みを浮かべ、
「ほんに「坊(ぼう)」は、強きにありんすなぁ」
するとファティマは静かに首を横に振り、
「ツヨクなんてないなおぅ」
アナクスの胸の中で笑みを浮かべ、
「ファティの一つしかないイバショに(今は)いるから、ヘイキなだけなおぅ」
「ッ!」
今まで感じた事が無い程の「強い感情」に突き動かされたアナクスは、衝動的にファティマをギュッと抱きしめ、
「共に『修羅道』に堕ちんしょぅ……」
その感情は、友情、愛情、母性、様々な思いの複合体で、一言で言い表す事など不可能であった。
ファティマも言われた言葉の意味は理解出来なかったが「死しても共にある」との強い想いは感じ取り、
「ハイ、なおぅ」
首元に抱き付いた。
共にある存在理由を深め合う二人に対し、
(チッ……)
微かな不快感を口元に滲ませるアナス。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
預言者エルマの七転八倒人生 破滅フラグは足音を立ててやってくる!
只野ぱんだ
ファンタジー
うっわ!転生したらSRPGミスティック タクティクス(通称ミスタク)の後半ボスのお色気担当お姉さんのエルマさんじゃん、破滅必須でやばいのでゲーム開始前におこる破滅フラグ折りまくって戦争回避するため預言者になって必死に運命をねじ曲げようと、モブ神殿騎士マックス氏と変装の名人な宣教師ディビド(間者)を仲間に懸命に努力するも本物の預言者になってしまうし、悪魔が襲ってくるしいつの間にか逆ハーレムっぽくなるし、何より破滅フラグのラスボス簒奪王ジルヴェスターは足音を立ててやってくる!
エルマさんは破滅フラグをへし折り戦争を回避して全ての人達に平和と幸せをもたらす事はできるのか!
※2/26完結しました!ありがとうございました!
アイコンはノーコピーライトガール様よりお借りしております
https://fromtheasia.com/illustration/nocopyrightgirl
聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!
ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。
姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。
対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。
能力も乏しく、学問の才能もない無能。
侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。
人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。
姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。
そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕
naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。
この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。
みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!
沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました!
定番の転生しました、前世アラサー女子です。
前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。
・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで?
どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。
しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前?
ええーっ!
まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。
しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる!
家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。
えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動?
そんなの知らなーい!
みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす!
え?違う?
とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。
R15は保険です。
更新は不定期です。
「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。
2021/8/21 改めて投稿し直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる