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１４_歪の章_５２

　そこへ医療班のアリアナがイサミを伴い駆け寄って来て、
「ツンちゃん、タイジョウ」
「ツンちゃん、呼ぶんじゃねぇ！」
「イーちゃん（イサミ）は、ルムおねぇちゃんを」
「わかった！」
「話を聞けぇ、ガキ共ぉ！　オレは途中退場なんて、」
「ツンちゃんは、チリョウシツにいくの」
　アリアナは容赦なくジャックの上着の裾をムンズと掴むと、強引に引っ張った。
「離せガキィ！　オレは退場するとは一言も！」
　しかし言葉とは裏腹に、振り払う事が出来ないジャック。アリアナに怪我をさせてしまう可能性があるから。正にツンデレのツンちゃん。
　そのまま引っ張られて鍛錬所からフェードアウトして行き、イサミに付き添われるナヤスは皆に向けて一礼して鍛錬所を後にした。
　微笑ましい空気が漂う中、マリアが一区切り打つ様に、
「さてぇですわぁ」
　曇りのない、晴れやかな笑顔を以ってニコやかに振り返り、
「わたくし達は続きを始めましょうか？」
「「！」」
　そこはかとない威圧感を感じるヤマトとジゼ。
「「お手柔らかに……」」
　引きつり気味の笑顔を返すので精一杯であった。
　アリアナに上着の巣を引っ張られ、治療室へと向かうジャック。両脇に負った損傷はナノマシンによる修復中なので、治療を拒否して逃げ出そうと思えば逃げられたのだが、アリアナに不要のケガを負わせてしまう可能性と、マリアの指摘をもっともと思い渋々従っていた。
　すると服を引っ張り治療室へ向かうアリアナが背を向けたまま、
「ケガは、ちゃんとなおす。シヌのはダメぇ」
「はぁ？　こんくれぇでオレが死ぬ訳ねぇだろうが」
　いつも通りの皮肉った口調で軽口を叩くと、アリアナが立ち止まり、
「！」
　今にも泣き出そうな顔で振り返った。
「お、おい勘弁してくれよぉ。オレは「ガキとオンナ」に泣かれるのが一番苦手なんだよぉ」
　困惑顔で狼狽すると、アリアナはプイッと前を向き、
「ナイてない」
「いやいや泣きそうだったろぅがぁ」
「ナイてないの！」
（……これだからガキの相手はぁ……）
　ヤレヤレ顔をすると、アリアナが背を向けたまま、
「もぅ、だれもしんじゃダメぇ！」
「！」
（そうか、コイツは……）
　家族、親類、知人、友人、全てを失った生い立ちを思い出すジャック。