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14_歪の章_46
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急に静かになる病室内。
次第に遠ざかる足音さえ消え去ると、マリアはからかう様な笑みを浮かべて、ソッポを向いたままのジャックの後頭部に、
「他人の背中を押すなんて珍しいですわねぇ。手術を経て、心境の変化ですのぉ?」
「…………」
何も答えないジャックはマリアに後頭部を向けたまま、
「気付いてんだろぅ……」
「何にですのぉ?」
「チッ、すっ呆けやがってぇ」
苦笑と共に振り返り、
「俺らの体は、」
「分かっていますわぁ」
笑顔で話を遮り、
「ナクアが復活させたロストテクノロジーを使っていると言っても、現代科学の集合体。対してアナスとアナクスの体は、高度な科学を誇ったロストテクノロジーの塊。既に同型のクローザーを四人倒していて、強さは折り紙付きですわ」
「それが分かってて、」
「あの二人(ヤマトとジゼ)を勝たせる為ですわ。貴方もそうなのでしょう?」
「…………」
「わたくし達で、アナスとアナクスの戦闘力を少しでも削り落とす」
「…………」
「そもそもスティーラーとクローザーの問題は、わたくし達、滅び去った旧世界の人間の問題であって、あの二人には関係ない話ですわ」
既に腹は括っているのか、悲愴感なく、笑顔すら浮かべると、
「……わりぃ……」
「なんで貴方が、わたくしに謝りますのぉ?」
ひょうひょうと聞き返していたが、
「俺がもっと強ければ、オメェは体を……」
ジャックの口惜し気な顔に、
「あっ、あれぇ……ヘン……ですわぁね……」
抑えていた本音の涙が溢れ出し、
「見ないで……」
マリアは顔を背け、
「今だけですわぁ……今だけは……」
気遣うジャックも顔を背け、
「あぁ。分かってる」
(死なせねぇ)
アナスとアナクスの戦いに気持ちを新たにした。
次第に遠ざかる足音さえ消え去ると、マリアはからかう様な笑みを浮かべて、ソッポを向いたままのジャックの後頭部に、
「他人の背中を押すなんて珍しいですわねぇ。手術を経て、心境の変化ですのぉ?」
「…………」
何も答えないジャックはマリアに後頭部を向けたまま、
「気付いてんだろぅ……」
「何にですのぉ?」
「チッ、すっ呆けやがってぇ」
苦笑と共に振り返り、
「俺らの体は、」
「分かっていますわぁ」
笑顔で話を遮り、
「ナクアが復活させたロストテクノロジーを使っていると言っても、現代科学の集合体。対してアナスとアナクスの体は、高度な科学を誇ったロストテクノロジーの塊。既に同型のクローザーを四人倒していて、強さは折り紙付きですわ」
「それが分かってて、」
「あの二人(ヤマトとジゼ)を勝たせる為ですわ。貴方もそうなのでしょう?」
「…………」
「わたくし達で、アナスとアナクスの戦闘力を少しでも削り落とす」
「…………」
「そもそもスティーラーとクローザーの問題は、わたくし達、滅び去った旧世界の人間の問題であって、あの二人には関係ない話ですわ」
既に腹は括っているのか、悲愴感なく、笑顔すら浮かべると、
「……わりぃ……」
「なんで貴方が、わたくしに謝りますのぉ?」
ひょうひょうと聞き返していたが、
「俺がもっと強ければ、オメェは体を……」
ジャックの口惜し気な顔に、
「あっ、あれぇ……ヘン……ですわぁね……」
抑えていた本音の涙が溢れ出し、
「見ないで……」
マリアは顔を背け、
「今だけですわぁ……今だけは……」
気遣うジャックも顔を背け、
「あぁ。分かってる」
(死なせねぇ)
アナスとアナクスの戦いに気持ちを新たにした。
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