461 / 535
14_歪の章_28
しおりを挟む
稽古の後――
いったん解散した四人は身支度を整え、再び集合した。
場所はアナクスとファティマが宿泊しているホテルの一階にあるレストラン。
「斯様な店ですまぬでありんすなぁ」
「問題ありませんでございますですわぁ。ねぇ、コーギー」
「ですね。ヘンにかしこまった店に連れて行かれるより全然良いです」
「そう言えば、ヌシはその様な所は苦手と申しておりんしたなぁ」
「あははは、よく覚えていらっしゃるぅ」
通じ合いに、ヴァイオレットは少々訝し気にコーギーを見つめ、
「何でございますですのぉ二人だけでぇ。どう言う経緯でございますですのぉ?」
「せ、先日話したケバブ屋での会話ですよ」
「へぇ~」
何処か腑に落ちていない様子に、
「そ、それだけですよぉ」
念押しすると、アナクスが「コッコッコ」と笑い、
「男の子(おのこ)の手綱は、それ位用心して握っていた方が良いきにありんすぇ」
「やはり、そうなのでございますですかぁ!?」
ヴァイオレットが興味津々身を乗り出すと、
「油断しんしたら、余所のオナゴの所へふわふわと、千切れ雲の如き飛んで行きんすぇ」
妙に意気投合する二人を呆れ笑う、コーギーとファティマ。
和やかな空気の中、
「さてぇ一先ず食事にしんしょうかぇ?」
アナクスがウエーターを呼ぼうとすると、
『その二人が童を救った御仁でござるかぁ?』
「「「「!」」」」
羽織はかま姿で、日本刀の様な剣を担いだアナスが薄い笑みを浮かべて立っていた。
空気はファティマの表情と共に硬くなり、アナクスも、
「ヌシ……」
見上げた妖艶な笑みは、和やかとは程遠い、不愉快そうなヒリ付きさえ交え、
「何用でありんす……」
しかしアナスは気にする風も無く、あっけらかんと、
「童を救った礼がてら、ちと尋ねたい事がござってなぁ~」
「…………」
笑みさえ消えるアナクス。
「妹たちへの無礼でありんしたら……許しませんぇ」
返答次第で大乱闘必至の空気感の中、アナスはフッと笑い飛ばし、
「コワイでござるなぁ~大した話ではござらぬよ」
おどけて見せ、ヴァイオレットに視線を移すと、
「のぉ、オヌシ」
「何でございますですか?」
「童を救った時に見せた体さばきは見事な物でござったが、アレは何処で身に付けた物でござる?」
「「「「ッ!」」」」
驚く四人。それはアナスが、ファティマへの襲撃を傍観していた事に他ならず、
「ヌシはファティ坊を見捨てたのかェ!」
爆発寸前のアナクスに、アナスは平然と、
「危なくなっていたら助けたでござるよぉ」
おどけ半分、ジェスチャーで制し、
「それより、どうでござる?」
まさかアナスに目撃されているとは思っていなかったヴァイオレット。体さばきだけは、かつて自国で学んだモノを使ってしまっていた。その事を正直に話す事は、自らクローザーである事を宣言する事とイコールであり、
(なんと答えたら良いのでございますですの……今コーギーに助けを求めたら、余計に怪しまれてしますでございますですわ……)
返答に困っていると、更に追い打ちを掛ける様に、
「あの動き、拙者がかつて見たモノと似ていたでござるがなぁ」
((!))
顔には出さず、内心でドキリとするコーギーとヴァイオレット。
(まっ、まさか!?)
(気付いているのございますでしょうか!?)
鼓動は激しく脈を打ち、焦りが思わず顔に出そうになると、
「いい加減にするでありんす!」
アナクスが立ち上がって激昂。
「妾の妹たちであり、ファティ坊の恩人であるヴァイオレットに、これ以上の無礼は許しませんぇ!」
周囲の客の目も顧みず怒鳴り散らすと、アナスは薄い笑みを浮かべ、
「分かったでござるよぉ」
四人に背を向け、立ち去り始めた。
いったん解散した四人は身支度を整え、再び集合した。
場所はアナクスとファティマが宿泊しているホテルの一階にあるレストラン。
「斯様な店ですまぬでありんすなぁ」
「問題ありませんでございますですわぁ。ねぇ、コーギー」
「ですね。ヘンにかしこまった店に連れて行かれるより全然良いです」
「そう言えば、ヌシはその様な所は苦手と申しておりんしたなぁ」
「あははは、よく覚えていらっしゃるぅ」
通じ合いに、ヴァイオレットは少々訝し気にコーギーを見つめ、
「何でございますですのぉ二人だけでぇ。どう言う経緯でございますですのぉ?」
「せ、先日話したケバブ屋での会話ですよ」
「へぇ~」
何処か腑に落ちていない様子に、
「そ、それだけですよぉ」
念押しすると、アナクスが「コッコッコ」と笑い、
「男の子(おのこ)の手綱は、それ位用心して握っていた方が良いきにありんすぇ」
「やはり、そうなのでございますですかぁ!?」
ヴァイオレットが興味津々身を乗り出すと、
「油断しんしたら、余所のオナゴの所へふわふわと、千切れ雲の如き飛んで行きんすぇ」
妙に意気投合する二人を呆れ笑う、コーギーとファティマ。
和やかな空気の中、
「さてぇ一先ず食事にしんしょうかぇ?」
アナクスがウエーターを呼ぼうとすると、
『その二人が童を救った御仁でござるかぁ?』
「「「「!」」」」
羽織はかま姿で、日本刀の様な剣を担いだアナスが薄い笑みを浮かべて立っていた。
空気はファティマの表情と共に硬くなり、アナクスも、
「ヌシ……」
見上げた妖艶な笑みは、和やかとは程遠い、不愉快そうなヒリ付きさえ交え、
「何用でありんす……」
しかしアナスは気にする風も無く、あっけらかんと、
「童を救った礼がてら、ちと尋ねたい事がござってなぁ~」
「…………」
笑みさえ消えるアナクス。
「妹たちへの無礼でありんしたら……許しませんぇ」
返答次第で大乱闘必至の空気感の中、アナスはフッと笑い飛ばし、
「コワイでござるなぁ~大した話ではござらぬよ」
おどけて見せ、ヴァイオレットに視線を移すと、
「のぉ、オヌシ」
「何でございますですか?」
「童を救った時に見せた体さばきは見事な物でござったが、アレは何処で身に付けた物でござる?」
「「「「ッ!」」」」
驚く四人。それはアナスが、ファティマへの襲撃を傍観していた事に他ならず、
「ヌシはファティ坊を見捨てたのかェ!」
爆発寸前のアナクスに、アナスは平然と、
「危なくなっていたら助けたでござるよぉ」
おどけ半分、ジェスチャーで制し、
「それより、どうでござる?」
まさかアナスに目撃されているとは思っていなかったヴァイオレット。体さばきだけは、かつて自国で学んだモノを使ってしまっていた。その事を正直に話す事は、自らクローザーである事を宣言する事とイコールであり、
(なんと答えたら良いのでございますですの……今コーギーに助けを求めたら、余計に怪しまれてしますでございますですわ……)
返答に困っていると、更に追い打ちを掛ける様に、
「あの動き、拙者がかつて見たモノと似ていたでござるがなぁ」
((!))
顔には出さず、内心でドキリとするコーギーとヴァイオレット。
(まっ、まさか!?)
(気付いているのございますでしょうか!?)
鼓動は激しく脈を打ち、焦りが思わず顔に出そうになると、
「いい加減にするでありんす!」
アナクスが立ち上がって激昂。
「妾の妹たちであり、ファティ坊の恩人であるヴァイオレットに、これ以上の無礼は許しませんぇ!」
周囲の客の目も顧みず怒鳴り散らすと、アナスは薄い笑みを浮かべ、
「分かったでござるよぉ」
四人に背を向け、立ち去り始めた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる