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青木 森

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14_歪の章_11

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 数秒遅れで、
「「「「「「オトコぉ!?」」」」」」
 両目が飛び出るほどの驚きを以って、コーギーの顔を凝視する女性たち。
(あははは……やっぱりですかぁ……)
 毎度の事とはいえ、作り笑顔の下で苦笑い。
「す、すみませぇん! 私達てっきり……」
 女性たちは互いに顔を見合わせ、自身のトキメキの理由に安堵はしたものの、初となる男性参加の申し入れに、
((((((どうしましょう……))))))
 困惑していると、
『構いませんぇ』
 背後からの声に、
「「「「「「御姉様ぁ!」」」」」」
 満面の笑顔で振り返った。
((アナクスッ!))
 思いも寄らなかったいきなりの急接近に、心の中で身構えるコーギーとヴァイオレット。
 表面上は平静を装う「緊張状態の二人」を尻目に、アナクスはいつも通りの妖艶な笑みを浮かべたまま、
「今を生きる術を求める者なら、男の子(おのこ)であろぅと、構いやしませんぇ。特に……」
 淫靡な笑みを口元に浮かべてコーギーを見つめ、
「ヌシの様な、美しき容姿を持った男の子ならなおさらぁのぉ~」
 意味深げに微笑んだ。
 慌てて間に立ちはだかるヴァイオレット。
「こ、コーギーは「あたくしのモノ」でございますですわぁ!」
(僕は「誰かの物」になった覚えは無いんですが……)
 苦笑するコーギーをそっちのけでキツク睨むと、アナクスは少し驚いた顔はしたものの、口元を隠して「コッコッコ」と高笑い。
「大丈夫でありんすぇ、その様に睨まずともぉ。妾は人の者を取ぉたりしぃせんぇ。ただ、」
「ただ?」
 ヴァイオレットが警戒心露わに見つめる中、卑猥ともとれる笑みを口元に浮かべ、
「男の子の心変わりまでは保証出来ぃせんぇ」
 豊かな胸元を協調して見せ付けた。
「!」
 ギョッとして振り返るヴァイオレットは物言いたげにコーギーを凝視。
「なっ、なんで、このタイミングでこっちを見るんですかぁ。僕は「巨乳好き」を公言した覚えなどありませんよぉ」
 困惑顔をよそに、アナクスは再び「コッコッコ」と高笑いをし、
「皆もよく聞くんすぇ」
 騒ぎを聞きつけ集まった門下生たちにも講ずる様に、
「一度掴んだ「男の子の手綱」は、緩めたらアカンぇ。緩めた途端に、余所のオナゴに持って行かれるんぇ」
「「「「「「「「「「ハイッ! 御姉様ぁ!」」」」」」」」」」
 元気よく返事を返す女性たちと、
「なるほど……」
 真剣な表情でゴクリと息を呑み、
「勉強になるでございますですわぁ……」
 深く感銘を受けた様子で頷くヴァイオレット。
アナクスと出会って早々、易々と感化される姿に、
(稽古に参加して……本当に大丈夫なんでしょうか……)
 一抹の不安を感じるコーギーであった。

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