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14_歪の章_7
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慌てて声を潜め、
(あれはクローザーのアナクスでは……)
(ですよね……)
探し求めていた強敵の、いきなりとなる出現に息を呑み、
「で、では先ほど店員が話していた事は……」
「です。これで確信が持てました。あの少女と共に居た医師はスティーラーで、彼を破壊し、町の兵士たちに多くの死傷者を出したのは「上位クローザー」の二人です」
「何と言う事でございますですのぉ……ファティマちゃんは、スティーラーとクローザーの戦いに巻き込まれたのでございますですわねぇ……」
幼い身に降りかかった不遇の境遇を思い、眉を顰めたが、同時に素朴な疑問も頭をよぎり、
「ですが何ゆえ、ムスカムア(スティーラー)とアナクス(クローザー)は、ファティマちゃんを連れ歩いているのでしょう……」
自問自答するかのように呟き、考え込んでいると、
『狙いが見え見えでありんすぅ! 何度言ったら分かるでありんすぅ!』
怒声と共に、アナクスの右掌がファティマの小さな腹部にめり込んだ。
「カァハッ……ハッァ……」
掌底を打ち込まれ、前のめりで地面に手を着くファティマ。
その光景にヴァイオレットは使命も忘れ、
「理由なんて「どうでも良い」でございますですわ!」
血相変えてベンチから飛び出そうとしたが、コーギーが肩をグッと押さえて動きを制し、
(何処に行くつもりですか!)
(ファティマちゃんを助けに決まっていますですわァ!)
(上位クローザーと無策で真正面からぶつかる気ですかァ!)
(見殺しにするおつもりでございますですのぉ!? あのままではファティマちゃんが、なぶり殺されてしまいますですわァ! 先ほどの方々も「憂さ晴らし」と言っていたではないですかぁ!)
(ひと先ず落ち着いて下さい!)
(あたくし達以外に誰が彼女を助けられるんでございますですの!)
そんな事など百も承知のコーギーは堪らず、
(僕たちが負ける訳にはいかないんですよォ!!)
(!)
ハッとするヴァイオレット。
(一時の感情に流されないで下さい! 僕たちが負けたら、兄さんや貴方のお姉さん達、そして世界の人々に終わりがもたらされるのですよ!)
「わ……分かっています……分かっていますで、ございますですわ……しかし……」
口籠り、見守る事しか出来ない非力にうつむくと、
「気持ちは分かるつもりです、ヴァイオレット……ですが落ち着いて、二人を、よく見て下さい」
諭される様に促され、
「…………」
静かに顔を上げると、ベンチの背もたれ越しにそっと様子を窺った。
「立でありんすぅ! 敵は待ってはくれないでありんすぇ!」
凛然とした表情で言い放つアナクス。地に手を着くファティマが、そんな彼女の顔を、歯を食い縛って見上げ、
「ぐくっっ……」
挑む気迫を以って立ち上がると、
「そうでありんす!」
厳しい表情の中にも微かな喜びを滲ませ、
「敵から目を離してはいけないのでありんすぇ!」
その光景は先入観を持たずに見ると、紛れも無く「ファティマの為」に行っている稽古であった。
アナクスを「育ての親の仇」として見ているであろうファティマに、その想いが、どの様に受け取られているかは不明であるが。
コーギーはアナクスに存在を認識されないよう、遠巻きに見つめる町の人達と同様にそれとなく稽古を眺め、
「僕には「憂さを晴らしているダケ」の様には見えませんが……」
「…………」
「ヴァイオレットには、どう見えていますか?」
(……ですわ…………)
呟きに、コーギーは変わらぬ作り笑顔の中に本当の笑顔を滲ませ、
「少し様子を見て見ましょう」
二人はしばらく様子を窺う事にした。
(あれはクローザーのアナクスでは……)
(ですよね……)
探し求めていた強敵の、いきなりとなる出現に息を呑み、
「で、では先ほど店員が話していた事は……」
「です。これで確信が持てました。あの少女と共に居た医師はスティーラーで、彼を破壊し、町の兵士たちに多くの死傷者を出したのは「上位クローザー」の二人です」
「何と言う事でございますですのぉ……ファティマちゃんは、スティーラーとクローザーの戦いに巻き込まれたのでございますですわねぇ……」
幼い身に降りかかった不遇の境遇を思い、眉を顰めたが、同時に素朴な疑問も頭をよぎり、
「ですが何ゆえ、ムスカムア(スティーラー)とアナクス(クローザー)は、ファティマちゃんを連れ歩いているのでしょう……」
自問自答するかのように呟き、考え込んでいると、
『狙いが見え見えでありんすぅ! 何度言ったら分かるでありんすぅ!』
怒声と共に、アナクスの右掌がファティマの小さな腹部にめり込んだ。
「カァハッ……ハッァ……」
掌底を打ち込まれ、前のめりで地面に手を着くファティマ。
その光景にヴァイオレットは使命も忘れ、
「理由なんて「どうでも良い」でございますですわ!」
血相変えてベンチから飛び出そうとしたが、コーギーが肩をグッと押さえて動きを制し、
(何処に行くつもりですか!)
(ファティマちゃんを助けに決まっていますですわァ!)
(上位クローザーと無策で真正面からぶつかる気ですかァ!)
(見殺しにするおつもりでございますですのぉ!? あのままではファティマちゃんが、なぶり殺されてしまいますですわァ! 先ほどの方々も「憂さ晴らし」と言っていたではないですかぁ!)
(ひと先ず落ち着いて下さい!)
(あたくし達以外に誰が彼女を助けられるんでございますですの!)
そんな事など百も承知のコーギーは堪らず、
(僕たちが負ける訳にはいかないんですよォ!!)
(!)
ハッとするヴァイオレット。
(一時の感情に流されないで下さい! 僕たちが負けたら、兄さんや貴方のお姉さん達、そして世界の人々に終わりがもたらされるのですよ!)
「わ……分かっています……分かっていますで、ございますですわ……しかし……」
口籠り、見守る事しか出来ない非力にうつむくと、
「気持ちは分かるつもりです、ヴァイオレット……ですが落ち着いて、二人を、よく見て下さい」
諭される様に促され、
「…………」
静かに顔を上げると、ベンチの背もたれ越しにそっと様子を窺った。
「立でありんすぅ! 敵は待ってはくれないでありんすぇ!」
凛然とした表情で言い放つアナクス。地に手を着くファティマが、そんな彼女の顔を、歯を食い縛って見上げ、
「ぐくっっ……」
挑む気迫を以って立ち上がると、
「そうでありんす!」
厳しい表情の中にも微かな喜びを滲ませ、
「敵から目を離してはいけないのでありんすぇ!」
その光景は先入観を持たずに見ると、紛れも無く「ファティマの為」に行っている稽古であった。
アナクスを「育ての親の仇」として見ているであろうファティマに、その想いが、どの様に受け取られているかは不明であるが。
コーギーはアナクスに存在を認識されないよう、遠巻きに見つめる町の人達と同様にそれとなく稽古を眺め、
「僕には「憂さを晴らしているダケ」の様には見えませんが……」
「…………」
「ヴァイオレットには、どう見えていますか?」
(……ですわ…………)
呟きに、コーギーは変わらぬ作り笑顔の中に本当の笑顔を滲ませ、
「少し様子を見て見ましょう」
二人はしばらく様子を窺う事にした。
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