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青木 森

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13_流転の章_5

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 しばし後―――
 陽が傾き始めると、医師はその日の移動を取りやめ、枯れた様な木の下に座り、焚火を起こし休憩をとった。
 炎が安定したところで、ふと目線を移す医師。少し離れた所で、表情が見えない位うつむく少女を見つめ、
「顔を上げ、背筋を伸ばしなさい。容姿に引け目を感じ、隠そうとしていた昔に逆戻りしていますよ。貴方は何も悪くありません」
しかし少女はうつむいたまま、
「シショウ……」
「なんでしょう?」
「ゴメンナサイなぉぅ……」
「何故、貴方が謝る必要があるのですか? 私には理解できません。理由を教えて頂けますか?」
「……ワタシのボウタオシで、それで、シショーがバカにされたから……」
 すると医師は「ハッハッハ」と軽やかに笑い、
「その様な、小さき事を気にしていたのですか(私はてっきり容姿を気にして……)」
「(シショーがシンパイするからいえないけど、それもあるけど)だってぇ!」
 互いに気遣い、あえて言葉の一部を伏せつつ、
「貴方の選択は正解でしたよ」
「?」
「何故なら、私達は今回も諍いに巻き込まれず、しかも何の仕事もせず、数日分の食料とお金を手にする事が出来たのですから」
「でも……」
「貴方が気に病む事は、何も無いのです。何故なら、自身への戒めとして怒る事が出来ない私に代わり、貴方が怒ってくれる事で私は救われているですから」
「!」
 少女はパッと笑顔になると、医師の首元に抱き付いた。しかし医師は平静に、
「どうかしましたか?」
「もぅ! そういうコトは、きかないでほしいなぉぅ! さっしてほしいなぉぅ!」
「そう言うモノなのですか?」
「そういうモノなぉぅ! シショーのワルイところなぉぅ! シショーにはデリカシーがたりないなぉぅ!」
 不服そうな顔して必死に訴えると、
「デリカシーとは、また珍妙な言葉を覚えましたね」
「ちんみょう?」
 初対面となる言葉に、少女はキョトン顔。
「「ヘン」と言う事ですよ」
「それならシショーのことばも「ちんみょう」なぉぅ」
「そうでしょうか?」
「そうなぉぅ」
「…………」
 医師はしばし考え、
「そうかも知れませんねぇ」
 二人は笑い合った。
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