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13_流転の章_3
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アフリカ大陸はユーラシア大陸と地続きで、北部地域と南部地域には広大な砂漠やサバンナが広がり、赤道付近の中央部地域には熱帯雨林地帯がある、五十四か国ほどの国から成り立つ大陸で、「人類起源の地」とも称された地である。
しかし「内陸の大半が砂漠とサバンナ」と言う過酷な環境ゆえに産業の発展が遅れ、発展途上国と言われる事もしばしばであり、あまた小部族が密集する大陸であり、そこに宗教観の違いとが複雑に絡み合って紛争が絶えず、戦時状態にあっても互いを人間として扱い、人間としての尊厳を守る為の法、「戦時国際法」、「国際人道法」の憲章を無視する、襲った部族の人間の人身売買のみならず、耳を疑いたくなるような、人を人とも思わない、人間の良心の消失を思わせる惨劇が数限りなく繰り返されていた。
後年は先進国と呼ばれた西欧諸国の支援も入り、西洋的な考え方が流入して独自の発展を遂げ、新たな市場として世界中の注目を集める大陸となっていた。が、それも今となっては昔の話……。
核戦争の混乱により、この地もまた他大陸と同様、原始の時代に逆戻り。利権を求め、血で血を洗う、何処へ行っても非人道的な諍いの絶えない生き地獄と化していた。
パンパンパパンパンパンパパン!
トォタタタタタタタタァ!
「撃て撃て撃て撃て撃てぇーーー!」
「手を止めるなァーーー!」
「撃ち続けろォーーー!」
怒号と銃声が鳴り響く、死屍累々たる広大なサバンナの大地の上で、低木を隠れ蓑に這いつくばり、無作為的に撃ち合うあまた兵士たち。着ている軍服も、使っている武器もまちまちで、もはや兵士か、野盗かさえ分からない。
双眼鏡越しに、その様な光景を遠巻きに見つめる医師。
「此方にまで害は及ばない様です。今回も貴方の選択は正しかったようですねぇ」
淡々と語ると、
「とうぜんなぉぅ。ワタシはシショーのマモリガミなぉぅ」
「そうですね。では女神様、私はこれから何処へ向かえば良いですかな?」
「まかせるなぉぅ」
リュックを背負った少女は自信満々胸をトンと叩くと、その辺に転がっていた枯れ枝を一本拾い上げ、地面に立てると手を放し、
「エダさん、エダさん、シショーとワタシは、どっちにいけばイイなぉぅ?」
すると絶妙のバランスで自立していた枯れ枝はコトリ。西を指して倒れた。
「あっち、なぉぅ」
「では行きましょうか」
何の躊躇もなく、西に向かって歩き始める二人。これが今日まで行って来た、彼女の「行き先の選び方」である。
なんとも心もとない行き先選びではあるが、医師が行き先を決めていた頃は「待ち伏せ襲撃」を受ける事もしばしばで、些か迷信染みた行為ではあったが、血生臭い諍いに巻き込まれる事の無い旅を送る事が出来ていた。
(それにしても、皆さん(襲撃者)は何故、私の行き先が分かったのでしょう?)
首を傾げる医師。答えは簡単である。異常なほど生真面目な性格の彼は、一度直線で歩き始めると、大陸の端まで真っ直ぐ歩き、ジグザグに歩く時も決まった一定のリズムで折り返す為、待ち伏せする側にとっては、行き先を予測する事が非常に容易だったのである。
「シショーはわかりやすいなぉぅ」
「そうなのでしょうか?」
自覚も無い。
きょとん顔を向ける医師を横目に、
「ムラがあったなぉぅ!」
進行方向を指差す少女。二人の前に、新たな村が見えて来た。
しかし「内陸の大半が砂漠とサバンナ」と言う過酷な環境ゆえに産業の発展が遅れ、発展途上国と言われる事もしばしばであり、あまた小部族が密集する大陸であり、そこに宗教観の違いとが複雑に絡み合って紛争が絶えず、戦時状態にあっても互いを人間として扱い、人間としての尊厳を守る為の法、「戦時国際法」、「国際人道法」の憲章を無視する、襲った部族の人間の人身売買のみならず、耳を疑いたくなるような、人を人とも思わない、人間の良心の消失を思わせる惨劇が数限りなく繰り返されていた。
後年は先進国と呼ばれた西欧諸国の支援も入り、西洋的な考え方が流入して独自の発展を遂げ、新たな市場として世界中の注目を集める大陸となっていた。が、それも今となっては昔の話……。
核戦争の混乱により、この地もまた他大陸と同様、原始の時代に逆戻り。利権を求め、血で血を洗う、何処へ行っても非人道的な諍いの絶えない生き地獄と化していた。
パンパンパパンパンパンパパン!
トォタタタタタタタタァ!
「撃て撃て撃て撃て撃てぇーーー!」
「手を止めるなァーーー!」
「撃ち続けろォーーー!」
怒号と銃声が鳴り響く、死屍累々たる広大なサバンナの大地の上で、低木を隠れ蓑に這いつくばり、無作為的に撃ち合うあまた兵士たち。着ている軍服も、使っている武器もまちまちで、もはや兵士か、野盗かさえ分からない。
双眼鏡越しに、その様な光景を遠巻きに見つめる医師。
「此方にまで害は及ばない様です。今回も貴方の選択は正しかったようですねぇ」
淡々と語ると、
「とうぜんなぉぅ。ワタシはシショーのマモリガミなぉぅ」
「そうですね。では女神様、私はこれから何処へ向かえば良いですかな?」
「まかせるなぉぅ」
リュックを背負った少女は自信満々胸をトンと叩くと、その辺に転がっていた枯れ枝を一本拾い上げ、地面に立てると手を放し、
「エダさん、エダさん、シショーとワタシは、どっちにいけばイイなぉぅ?」
すると絶妙のバランスで自立していた枯れ枝はコトリ。西を指して倒れた。
「あっち、なぉぅ」
「では行きましょうか」
何の躊躇もなく、西に向かって歩き始める二人。これが今日まで行って来た、彼女の「行き先の選び方」である。
なんとも心もとない行き先選びではあるが、医師が行き先を決めていた頃は「待ち伏せ襲撃」を受ける事もしばしばで、些か迷信染みた行為ではあったが、血生臭い諍いに巻き込まれる事の無い旅を送る事が出来ていた。
(それにしても、皆さん(襲撃者)は何故、私の行き先が分かったのでしょう?)
首を傾げる医師。答えは簡単である。異常なほど生真面目な性格の彼は、一度直線で歩き始めると、大陸の端まで真っ直ぐ歩き、ジグザグに歩く時も決まった一定のリズムで折り返す為、待ち伏せする側にとっては、行き先を予測する事が非常に容易だったのである。
「シショーはわかりやすいなぉぅ」
「そうなのでしょうか?」
自覚も無い。
きょとん顔を向ける医師を横目に、
「ムラがあったなぉぅ!」
進行方向を指差す少女。二人の前に、新たな村が見えて来た。
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