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12.胎動の章_17
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その頃、別室の男性陣―――
クリストファーが仕立てたタキシードに身を包み、姿見の前で仁王立ちするマシュー。
「…………」
ド緊張、化石の様に固まっていた。
微動だにしない姿を見かねたジャックが「ケッ」と吐き捨て、
「なぁヤマト」
「ん?」
「日本語で、こう言う「服に着せられたヤツ」の事を、何とかつったろぉ?」
「…………」
ヤマトはしばし考え、緊張を解きほぐそうとしているジャックの意図を察し、ポンと一つ手を打ち鳴らし、
「馬子にも衣裳ぉ?」
おどけて言って見せると、
「「「「「「「「「「アハハハハハハハハハハハハハハ!」」」」」」」」」」
男どもは「そうだそうだ」と大爆笑。バカ騒ぎし合ったが、当のマシューは緊張のあまり耳に入らないのか、鏡の前で固まったままであった。
「救えねぇこりゃ」
呆れ顔のジャック。マシューの正面に回り込み、
「マシュー! テメェたいがいに、」
言いかけた苦言は途中で途切れ、
「ジャック?」
ヤマト達が不思議そうな顔をすると、
「立ったまま気絶してやがるぅ……」
呆気にとられた顔して絶句した。
するとヤマトは棒立ちするマシューの背後から、
「マシュー!」
両肩をガシリと掴み、
「リリィちゃんに、カッコ悪い父親の姿を晒す気かぁ!」
(リリィ!)
正気を取り戻すマシュー。緊張した面持ちでゆっくり振り返ると、ギリッギリの笑顔で、ヤマト達に親指を立てて見せ、不安交じりの半笑いで親指を立て返すヤマト達と、
「ケッ、世話が焼けんぜぇ」
呆れ顔のジャック。
ほどなく式は執り行われ、父親役の機関長ドミニクと共に、ヴァージンロードを歩くナクア。そして二人の後ろには、後方へ長く伸びるナクアのベールの裾の両端をそれぞれ持って歩く、ナクアに負けないくらい綺麗に着飾ってもらった「ベールガール」のイサミとアリアナの姿が。
一歩、また一歩と、静かな足取りで、祭壇の前に待つマシューの下へ歩み寄った。
「ナク……」
あまりの美しさに、言葉を失うマシュー。ベールの下でほんのり赤くなったナクアの顔から、目が背ける事が出来なかった。
やがて二人は艦長、そして仲間達の前で誓いを立て、指輪の交換と誓いのキス。
「やっぱ犯罪くせぇ。通報しとくかぁ」
直視出来ないジャックの照れ隠しに、
「お下品ですわよぉ」
軽く肘打ち入れるマリアと、そんな二人を笑うヤマト達。
式は滞りなく進み、やがてブーケトス。
宙を舞うブーケは、吸い込まれるようにソフィアの胸元に収まった。
一瞬驚いた顔をするソフィアであったが、心から嬉しそうな笑顔を浮かべ、壇上の艦長をチラ見。クルー達がはやし立てる中、艦長は咳ばらいを一つすると、帽子を深く被り直し、顔を隠して誤魔化した。
無骨な男が見せる照れ隠しに、仲間達から明るい笑いが起こる。
クリストファーが仕立てたタキシードに身を包み、姿見の前で仁王立ちするマシュー。
「…………」
ド緊張、化石の様に固まっていた。
微動だにしない姿を見かねたジャックが「ケッ」と吐き捨て、
「なぁヤマト」
「ん?」
「日本語で、こう言う「服に着せられたヤツ」の事を、何とかつったろぉ?」
「…………」
ヤマトはしばし考え、緊張を解きほぐそうとしているジャックの意図を察し、ポンと一つ手を打ち鳴らし、
「馬子にも衣裳ぉ?」
おどけて言って見せると、
「「「「「「「「「「アハハハハハハハハハハハハハハ!」」」」」」」」」」
男どもは「そうだそうだ」と大爆笑。バカ騒ぎし合ったが、当のマシューは緊張のあまり耳に入らないのか、鏡の前で固まったままであった。
「救えねぇこりゃ」
呆れ顔のジャック。マシューの正面に回り込み、
「マシュー! テメェたいがいに、」
言いかけた苦言は途中で途切れ、
「ジャック?」
ヤマト達が不思議そうな顔をすると、
「立ったまま気絶してやがるぅ……」
呆気にとられた顔して絶句した。
するとヤマトは棒立ちするマシューの背後から、
「マシュー!」
両肩をガシリと掴み、
「リリィちゃんに、カッコ悪い父親の姿を晒す気かぁ!」
(リリィ!)
正気を取り戻すマシュー。緊張した面持ちでゆっくり振り返ると、ギリッギリの笑顔で、ヤマト達に親指を立てて見せ、不安交じりの半笑いで親指を立て返すヤマト達と、
「ケッ、世話が焼けんぜぇ」
呆れ顔のジャック。
ほどなく式は執り行われ、父親役の機関長ドミニクと共に、ヴァージンロードを歩くナクア。そして二人の後ろには、後方へ長く伸びるナクアのベールの裾の両端をそれぞれ持って歩く、ナクアに負けないくらい綺麗に着飾ってもらった「ベールガール」のイサミとアリアナの姿が。
一歩、また一歩と、静かな足取りで、祭壇の前に待つマシューの下へ歩み寄った。
「ナク……」
あまりの美しさに、言葉を失うマシュー。ベールの下でほんのり赤くなったナクアの顔から、目が背ける事が出来なかった。
やがて二人は艦長、そして仲間達の前で誓いを立て、指輪の交換と誓いのキス。
「やっぱ犯罪くせぇ。通報しとくかぁ」
直視出来ないジャックの照れ隠しに、
「お下品ですわよぉ」
軽く肘打ち入れるマリアと、そんな二人を笑うヤマト達。
式は滞りなく進み、やがてブーケトス。
宙を舞うブーケは、吸い込まれるようにソフィアの胸元に収まった。
一瞬驚いた顔をするソフィアであったが、心から嬉しそうな笑顔を浮かべ、壇上の艦長をチラ見。クルー達がはやし立てる中、艦長は咳ばらいを一つすると、帽子を深く被り直し、顔を隠して誤魔化した。
無骨な男が見せる照れ隠しに、仲間達から明るい笑いが起こる。
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