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青木 森

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12.胎動の章_12

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 静まり返る調査班ブース―――
 緊張した面持ちのエラを前に、足を大きく組み、腕組みして自席に座るブレイクは仏頂面。何とも言えない気マズイ空気が漂う中、調査班の長はブレイクであるから、流石のソフィアも口を挟む事は出来ない。
 そんな張り詰めた時間がしばし流れた後、ブレイクは大きなため息を一つ吐き、
「分かったぁよ。ウチで拾ってやんよぉ。噂は聞いていたから、どうせこうなるだろうと思っていたしねぇ~」
 苦笑に、エラはパッと笑顔を弾けさせ、
「ありがとうございます!」
 頭を下げると、いきなりヤマトに抱き付き、
「ヤマトさんのお陰で無職から脱却でぇす!」
「えぇ!? ちょ、エラぁ!」
(まっ、マズイ!)
 たじろぐヤマト。その理由は、背後から背中に突き刺さる、ジゼとナヤスの射貫く様な視線。
(こ、このままじゃ、また「女たらし」とか言われるぅ!)
 女性陣からの批判的な視線が「世間体的によろしくない行為」と言う考えに、端を発していると思っているヤマト。男女間の「恋愛感情的によろしくない行為」と思えていない朴念仁な所が「天然たらし」の由縁である。
(む、胸が当たってるからぁ!)
 狼狽しつつも、
(それにしても着痩せするタイプなんだなぁ……意外と大き……とかぁ思ってる場合じゃないぃいぃ!)
 ヤマトも、男子である。
 ジゼが激昂する姿が脳裏をよぎり、懸命に逃れようともがくヤマト。対して、気にも留めないエラが抱き付いたまま喜びを爆発させていると、先程までの落ち込みように対する「気遣い」から我慢していたジゼとナヤスはついに臨界を突破。二人を引き離そうと駆け寄り、
「エラってばぁ、いい加減、引っ付き過ぎ!」
「離れなさぁい!」
 間に割って入ろうとした途端、歓喜に沸くエラは二人をも抱き込んで、
「皆さん、ありがとうぅうぅぅぅっぅ!」
 満面の笑顔。
 女子三人ともみくちゃになり、
(絵的にマズイィ!)
 逃れようとするヤマトと、
「ちょ、苦しいよ、エラぁ!」
 もがくジゼ。
 期せずしてヤマトと密着する事になったナヤスは、
(も……もう少し、このままでも良いかもぉ♪)
 ニヤケ顔。
 そこへ、
「ウチも混ぜるニャーーーーーー!」
 シャーロットが飛び入り参加。騒ぎは、お祭り騒ぎに。
「コイツは、大変なのを引き取っちまったのかねぇ~」
 苦笑するブレイクに、
「返品は不可よぉ♪」
 ソフィアは笑顔を返し、二人は笑い合った。
 そんな中、面倒臭げに我関せずを決め込み、
「ケっ」
 横向くジャック。しかし不愉快そうな態度とは裏腹に、
(良かったじゃねぇか……)
 微かな笑みを口元に浮かべると、微笑ましく見つめていたマリアと目が合ってしまった。
 その生温かい眼差しにギョッとするジャック。
「な、」
 言い訳を並べたてようとすると、マリアはすかさず、
「良かったですわねぇ~」
「!」
 その眼は、微笑む口元は、「喜んでいるのが見え見えですわぁ」と言っていた。
「…………」
 抗う術は無いと知るジャック。
「チッ」
 不機嫌を装い舌打ちして視線をそらず以外、彼に誤魔化す道は残されていなかった。
 マリアの掌の上でいい様に転がされるジャックを尻目に、喜び、歓喜するエラ。

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