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12.胎動の章_1
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想いのすれ違いから、何百、何千年と永きに渡る別離を経験した兄弟姉妹が融和を果たし、再会の約束と共に、新たな、それでいて前向きな別れをしてからいったいどれ程の時間が経過したであろうか。
南極大陸の地表から遥か地下の巨大空間にある軍事基地―――
アンドロイドペンギンのタケダさんをはじめとする、ペンギン軍団、ヤマト達、ガルシアクルーの面々、マシュー、そして前より更にお腹が膨らんだように見えるナクアが、海面上に伸びる桟橋の袂で、今や遅しと何かを待っていた。
すると突如、桟橋近くの海面が突如泡立ちはじめ、やがて大型トレーラーほどの大きさをした潜水艦が浮上して来た。
ジャックとマリアである。
無事の到着に、安堵のため息が漏れ聞こえる中、潜水艦の上部ハッチが開きマリアが笑顔で手を振ると、歓声が湧き上がった。
「マリア、お疲れぇ!」
駆け寄るヤマト達。
マリアが下艦して桟橋に降り立ち、続けてジャックが降り立ち、
「ジャックも、お疲れぇ!」
労をねぎらうと、
「ケっ、オメェ等、大袈裟なんだよぉ」
少し照れ臭そうに横向くジャック。
「なぁ~に照れてるんだよぉ」
ヤマト達がそんなジャックを冷かし、マリアが微笑ましく見つめていると、物言いたげな瞳で見つめるナクアの視線に気が付き、
「な、何ですの、ナクア?」
「思わ、なかった」
「はい?」
「帰って来る、と思わ、なかった」
「な、何ですのぉ藪から棒にぃ!」
マリアは思わず苦笑い。
「「帰って来なくて良かった」みたいな言い方ですわねぇ~」
冗談交じりに憤慨して見せると、
「違、う」
「?」
「国民、を、見捨てられない、で女王に戻る、と思った」
「…………」
返答に困った笑顔で固まると、ジャックがすかさず、
「何言ってやがる、感情無しぃ。そもそも「今の時代の連中」に「過去の亡霊」の俺らが口出してたのが間違いだったんだろうがぁ」
「そう、かも知れない。けど、間違い、を正し、命、救えるなら間違っても良い、とナク、思う」
「…………」
思わず黙り込むマリア。そういう思いが無かった訳ではないが、
「ナクアァ、テメェ! コイツがそこまで考えてなかったとでも言いてぇのか!? 何様のつもりだ!」
めでたい空気は一転。
「ジャック、待った! 言い過ぎだ! ナクアにも考えがあって!」
「やかましい、ヤマトォ!」
制するヤマトを一喝すると、
「ナク、みたく、後悔して欲しく、ない、から……」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
うつむく無表情のナクアから、以前にナクアが『浮島』で、単に「興味が失せたから」と、多くの人々の命を容易く奪った経緯を思い出すヤマト達。その言葉の重みに、その場に全員が押し黙った。
感情を感じられない筈の「無表情」の中から滲み出る、確かな後悔と悲しみ。
南極大陸の地表から遥か地下の巨大空間にある軍事基地―――
アンドロイドペンギンのタケダさんをはじめとする、ペンギン軍団、ヤマト達、ガルシアクルーの面々、マシュー、そして前より更にお腹が膨らんだように見えるナクアが、海面上に伸びる桟橋の袂で、今や遅しと何かを待っていた。
すると突如、桟橋近くの海面が突如泡立ちはじめ、やがて大型トレーラーほどの大きさをした潜水艦が浮上して来た。
ジャックとマリアである。
無事の到着に、安堵のため息が漏れ聞こえる中、潜水艦の上部ハッチが開きマリアが笑顔で手を振ると、歓声が湧き上がった。
「マリア、お疲れぇ!」
駆け寄るヤマト達。
マリアが下艦して桟橋に降り立ち、続けてジャックが降り立ち、
「ジャックも、お疲れぇ!」
労をねぎらうと、
「ケっ、オメェ等、大袈裟なんだよぉ」
少し照れ臭そうに横向くジャック。
「なぁ~に照れてるんだよぉ」
ヤマト達がそんなジャックを冷かし、マリアが微笑ましく見つめていると、物言いたげな瞳で見つめるナクアの視線に気が付き、
「な、何ですの、ナクア?」
「思わ、なかった」
「はい?」
「帰って来る、と思わ、なかった」
「な、何ですのぉ藪から棒にぃ!」
マリアは思わず苦笑い。
「「帰って来なくて良かった」みたいな言い方ですわねぇ~」
冗談交じりに憤慨して見せると、
「違、う」
「?」
「国民、を、見捨てられない、で女王に戻る、と思った」
「…………」
返答に困った笑顔で固まると、ジャックがすかさず、
「何言ってやがる、感情無しぃ。そもそも「今の時代の連中」に「過去の亡霊」の俺らが口出してたのが間違いだったんだろうがぁ」
「そう、かも知れない。けど、間違い、を正し、命、救えるなら間違っても良い、とナク、思う」
「…………」
思わず黙り込むマリア。そういう思いが無かった訳ではないが、
「ナクアァ、テメェ! コイツがそこまで考えてなかったとでも言いてぇのか!? 何様のつもりだ!」
めでたい空気は一転。
「ジャック、待った! 言い過ぎだ! ナクアにも考えがあって!」
「やかましい、ヤマトォ!」
制するヤマトを一喝すると、
「ナク、みたく、後悔して欲しく、ない、から……」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
うつむく無表情のナクアから、以前にナクアが『浮島』で、単に「興味が失せたから」と、多くの人々の命を容易く奪った経緯を思い出すヤマト達。その言葉の重みに、その場に全員が押し黙った。
感情を感じられない筈の「無表情」の中から滲み出る、確かな後悔と悲しみ。
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