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11.交錯の章_10
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結局分解リーディングは行わず搭乗すると、フルフェイスにパイロットスーツ姿の二人が操縦席から振り返り、
「お待ちしてました、エラ隊員。話は伺っています」
「ようこそ、エラ隊員」
「「「「!」」」」
物々しい姿に驚くジャック達に対し、
「すみません、お待たせしてしまって」
何の違和感も感じていない様子で挨拶を交わすエラ。
「おいおいマジかぁ? 旅客機にパイロットスーツって何の冗談だぁ?」
「ほ、本当に空中分解したりしませんわよねぇ?」
ジャックとマリアが不安を露わ、
「「え、エラぁ(僕達・あたくし達)は信じて(ます・ますでございますですわ)よぉ」」
コーギーとヴァイオレットが不安をひた隠しにすると、パイロットの二人が「ははは」と軽やかに笑い、
「大丈夫ですよ、初期のテスト時に何度か落ちた位で」
「戦闘機の様な「射出座席」になっているので、トラブルが起きても大丈夫ですよ」
「皆さん、ガーディアンの技術力を信用して下さい」
エラと共に笑い合った。
((((…………))))
あまりなノリの軽さに、不安ばかりが増す四人。疑いのジト目を以って三人を見つめたが、パイロットの二人は気にする素振りも見せず、
「エラ隊員、我々は「行き先の指示」を貴方から受ける様に言われているのですが」
「どうしますか?」
「そうですねぇ……」
エラはしばし黙考すると、
「『ブリスベン』に向かって下さい」
「「「えぇ!?」」」
驚きを露わにするパイロット二人とマリア。
「あぁ? 死神ぃ、何をそんなに驚いてやがる?」
地理に疎いジャック、コーギー、ヴァイオレットが不思議そうな顔を見合わせると、
「ブリスベンは、この国の真東に位置する第三位の規模の都市ですわ」
「はぁ? 真東だぁ!?」
驚くジャック達。当然である。少し前、エラ自身の口から「犯人は車で西へ逃走した」と聞いたばかりなのだから。
これには「指示に従え」と命令を受けた二人も流石に黙っていられず、
「お言葉ですがエラ隊員、それではターゲットは、検問中のスチュアート・ハイウェイを再び横切る事になりますが……」
「流石にそれは……」
口籠ると、
「いえ、この犯人は必ず『ブリスベン』を目指します」
確信を以って答えるエラに、ジャックが訝しげな表情で見据え、
「根拠はなんだぁ?」
「この犯人は密入国する町に、わざわざ大都市の『ダーウィン』を選びました。そして駐留小隊を壊滅させたにも関わらず、この国の大動脈であるスチュアート・ハイウェイを、大手を振って南下。更には自ら「アメリカ軍に組する者」と名乗りを上げた上で、中級都市であるキャサリン付近で数百人規模の中隊相手に大立ち回りを演じました」
「……鼻からこの国の連中を、歯牙にもかけてねぇって事かぁ?」
「「ハイ」っと言うより、嘲笑っているのだと思います。それも、この国の人間に対してだけでなく、人間すべてに対してそう思っている様に、私には感じられます」
「ヤツは、西へ行くと見せかけて、何食わぬ顔で検問を通って東へ行って、西側で大騒ぎしてる連中を鼻先で笑い飛ばすってのか?」
「そうです。意表を突かれ、気付かない警察官たちを嘲笑しながら……まぁ、平隊員でトラブルばかり起こしてる私が連絡したところで、誰も聞く耳を持ってはくれないでしょうけどぉ」
「…………」
ケラケラと自嘲するエラを、黙って見据えるジャック。
(この男オンナぁ……見聞きして来たように物語りやがるがぅ。天然のクセに妙な説得力も……人間にしとくのが惜しいくれぇだなぁ……)
不敵な笑みを浮かべつつ、
「だがな、」
納得するに至らない点を追求しようとすると、すかさずマリアが、
「ハワイ経由で、最短でアメリカを目指すなら北東ですが、北東はサンゴ礁帯で逃げるには不向き。そして北、ダーウィンの方は流石に厳戒態勢で警備が厚い。南東のシドニーやメルボルンでは遠くなる上に、元より警備が厳重で、下手をすればニュージーランド軍と挟み撃ち。愉快犯が自らの存在をアピールしつつ、この国を小馬鹿にしながら出国するとしましたら『ブリスベン』、と言う事になるでございましょう?」
「流石です、女王陛下ぁ」
笑むエラは、右手を胸に添え、左手を横方向に差し出しボウアンドスクレイプ、社交界的挨拶である「男性バージョンのカーテシー」で丁寧に一礼し、敬意を表した。
「「女王陛下?」」
きょとん顔のパイロット二人。
マリアは、男装に合わせたカーテシーを選んだエラを、そして不思議そうな顔して見つめるパイロットを「ふふふ」と笑い、
「元ですわぁ♪」
微笑を浮かべた。
立て板に水を流した様なマリアの推理に、内心で驚くジャックとコーギー。そして実の姉であるマリアの洞察力の鋭さに、今更ながら改めて脱帽するヴァイオレット。
(ほんとうに……御姉様には敵いませんでございますですわぁ……)
嫉妬心からでなく、誇らしさに端を発する苦笑いを浮かべ、姉を見つめた。
「お待ちしてました、エラ隊員。話は伺っています」
「ようこそ、エラ隊員」
「「「「!」」」」
物々しい姿に驚くジャック達に対し、
「すみません、お待たせしてしまって」
何の違和感も感じていない様子で挨拶を交わすエラ。
「おいおいマジかぁ? 旅客機にパイロットスーツって何の冗談だぁ?」
「ほ、本当に空中分解したりしませんわよねぇ?」
ジャックとマリアが不安を露わ、
「「え、エラぁ(僕達・あたくし達)は信じて(ます・ますでございますですわ)よぉ」」
コーギーとヴァイオレットが不安をひた隠しにすると、パイロットの二人が「ははは」と軽やかに笑い、
「大丈夫ですよ、初期のテスト時に何度か落ちた位で」
「戦闘機の様な「射出座席」になっているので、トラブルが起きても大丈夫ですよ」
「皆さん、ガーディアンの技術力を信用して下さい」
エラと共に笑い合った。
((((…………))))
あまりなノリの軽さに、不安ばかりが増す四人。疑いのジト目を以って三人を見つめたが、パイロットの二人は気にする素振りも見せず、
「エラ隊員、我々は「行き先の指示」を貴方から受ける様に言われているのですが」
「どうしますか?」
「そうですねぇ……」
エラはしばし黙考すると、
「『ブリスベン』に向かって下さい」
「「「えぇ!?」」」
驚きを露わにするパイロット二人とマリア。
「あぁ? 死神ぃ、何をそんなに驚いてやがる?」
地理に疎いジャック、コーギー、ヴァイオレットが不思議そうな顔を見合わせると、
「ブリスベンは、この国の真東に位置する第三位の規模の都市ですわ」
「はぁ? 真東だぁ!?」
驚くジャック達。当然である。少し前、エラ自身の口から「犯人は車で西へ逃走した」と聞いたばかりなのだから。
これには「指示に従え」と命令を受けた二人も流石に黙っていられず、
「お言葉ですがエラ隊員、それではターゲットは、検問中のスチュアート・ハイウェイを再び横切る事になりますが……」
「流石にそれは……」
口籠ると、
「いえ、この犯人は必ず『ブリスベン』を目指します」
確信を以って答えるエラに、ジャックが訝しげな表情で見据え、
「根拠はなんだぁ?」
「この犯人は密入国する町に、わざわざ大都市の『ダーウィン』を選びました。そして駐留小隊を壊滅させたにも関わらず、この国の大動脈であるスチュアート・ハイウェイを、大手を振って南下。更には自ら「アメリカ軍に組する者」と名乗りを上げた上で、中級都市であるキャサリン付近で数百人規模の中隊相手に大立ち回りを演じました」
「……鼻からこの国の連中を、歯牙にもかけてねぇって事かぁ?」
「「ハイ」っと言うより、嘲笑っているのだと思います。それも、この国の人間に対してだけでなく、人間すべてに対してそう思っている様に、私には感じられます」
「ヤツは、西へ行くと見せかけて、何食わぬ顔で検問を通って東へ行って、西側で大騒ぎしてる連中を鼻先で笑い飛ばすってのか?」
「そうです。意表を突かれ、気付かない警察官たちを嘲笑しながら……まぁ、平隊員でトラブルばかり起こしてる私が連絡したところで、誰も聞く耳を持ってはくれないでしょうけどぉ」
「…………」
ケラケラと自嘲するエラを、黙って見据えるジャック。
(この男オンナぁ……見聞きして来たように物語りやがるがぅ。天然のクセに妙な説得力も……人間にしとくのが惜しいくれぇだなぁ……)
不敵な笑みを浮かべつつ、
「だがな、」
納得するに至らない点を追求しようとすると、すかさずマリアが、
「ハワイ経由で、最短でアメリカを目指すなら北東ですが、北東はサンゴ礁帯で逃げるには不向き。そして北、ダーウィンの方は流石に厳戒態勢で警備が厚い。南東のシドニーやメルボルンでは遠くなる上に、元より警備が厳重で、下手をすればニュージーランド軍と挟み撃ち。愉快犯が自らの存在をアピールしつつ、この国を小馬鹿にしながら出国するとしましたら『ブリスベン』、と言う事になるでございましょう?」
「流石です、女王陛下ぁ」
笑むエラは、右手を胸に添え、左手を横方向に差し出しボウアンドスクレイプ、社交界的挨拶である「男性バージョンのカーテシー」で丁寧に一礼し、敬意を表した。
「「女王陛下?」」
きょとん顔のパイロット二人。
マリアは、男装に合わせたカーテシーを選んだエラを、そして不思議そうな顔して見つめるパイロットを「ふふふ」と笑い、
「元ですわぁ♪」
微笑を浮かべた。
立て板に水を流した様なマリアの推理に、内心で驚くジャックとコーギー。そして実の姉であるマリアの洞察力の鋭さに、今更ながら改めて脱帽するヴァイオレット。
(ほんとうに……御姉様には敵いませんでございますですわぁ……)
嫉妬心からでなく、誇らしさに端を発する苦笑いを浮かべ、姉を見つめた。
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