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9.黎明の章_10
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幼き諍いが一応の決着を迎えつつあった頃、ブリッジにも新たなる風が吹こうとしていた。
『CALLだよぉん♪』
通信長ナタリーの席のモニタが着信を知らせ、
「艦長ぉ! 暗号化レーザー通信による、コール(呼び出し)っスぅ!」
「うむ。南極基地からか?」
「ハイ、スぅ!」
気の抜けたナタリーの返答に相反し、ブリッジ内に緊張が走る。
南極基地を出港して以降、連絡は一度も無かった上に、現行技術において傍受と解読が不可能な、特殊暗号化されたレーザー通信で連絡を送って来たのであるから、クルー達の緊張も当然と言える。
艦長は気持ちを改める様に帽子を被り直し、
「繋いでくれたまえ」
「了解っス。正面の大型モニタに映すッス」
固唾を呑み、見つめるブリッジクルー達の前に姿を現したのは、
「艦長、みんな、久しぶり」
笑顔のマシューであった。
特徴的であった赤髪のツンツン頭を綺麗に切りそろえ、身なりも綺麗に整え、そこはかとなく大人びた雰囲気を醸し出していた。
ナクアに代わり、南極基地総司令として働くマシュー。
(立場が人を成長させるのか……)
懐かしい顔の成長した姿に、艦長は帽子の下で微かな笑みを浮かべたが、凛然とした表情でモニタを見上げ、
「それでマシュー君、秘匿回線を使用してまで連絡をするとは、余ほどの事が起きたのかね?」
緊張した眼差しを向けたが、
「安心して下さい艦長、緊急事態じゃありません」
マシューは含んだ所のない笑顔で、
「秘匿回線を使ったのは、あくまで用心の為。クローザーが動き回ってますからねぇ」
「そうか」
ひと先ずホッした表情を見せる艦長と、ブリッジクルー達。
「マシュー君、艦内クルーにも通信を見せても構わんかね? クルー達も喜ぶと思うのだが」
「構いません。俺も、みんなの顔を見たいし」
見せた笑顔は、ルークが生きていた頃と変わらない屈託のない、悪ガキのままであった。
ナタリーは自席の端末を操作し、
「映像回線を、艦内モニタとつなぐっスぅ」
艦内各所に設けられているモニタ付き通信機に、マシューの姿が映し出され、
「マシューじゃねぇかぁ!」
「アイツ、何を大人ぶってやがんだぁ~」
「ましゅーだぁ! ましゅーだぁ!」
ムードメーカーだったマシューが見せる懐かしい笑顔に、ソフィアの一件で張り詰め気味であったブリッジ内、そして艦内が温かな空気に包まれる中、
「それでマシュー君、要件は何かね?」
連絡をして来た目的を改めて尋ねると、
「クローザーが仲間になったそうですね」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
驚くクルー達。その様な連絡を南極基地に送った経緯は無く、
「良く知っている」
平静を装う艦長に、マシューは微かな笑みを浮かべ、
「此方でも色々調べてますからねぇ」
「……それで?」
「ナクアが話を聞きたいそうなんで、一度、南極基地に戻って来て欲しいそうなんです」
「話を聞くだけ、でかね?」
以外そうな顔をすると、マシューは少し奥歯にものが詰まった物言いで、
「い、いやぁ、実はそれだけじゃなく……」
視線を画面の外に送り、
「ほらぁナク、こっちに来いってぇ。恥ずかしがってても、いつかバレるんだからぁ」
画面の外に手を伸ばした。
((((((((((はっ、恥ずかしいぃ!?))))))))))
ナクアとは無縁と思われる言葉に、驚きを隠せないヤマト、ジゼ、マリア、ジャック、シャーロットとガルシアクルー達。
そんな中、マシューに引かれた「小さなナクアの右手」が画面に一瞬だけ映ったが、左手が伸びて来て、掴む手を無言でパシパシぺちぺち叩き、
「い、痛ぇ! こ、こらぁナク、叩くんじゃねぇよ!」
大人びた空気は何処へやら、昔と変わらない物言いでナクアの「手だけ攻撃」を受けつつ、
「じゃ、じゃあ、艦長ぉ! 迎えはもう送ったんでぇ、また後で。痛ぇ、痛てぇ! 止めろってナクアぁ、止めろぉってぇ」
映像はそのまま、なし崩し的に切られた。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
映像の消えたモニタを、懐かしい余韻に浸るが如く見つめるブリッジクルー達。
するとソフィアが、
「大人っぽくなったと思ったのに、昔と変わりませんでしたねぇ、艦長」
「まったくだ」
以前の様な笑顔を見せ合う二人であったが、ハッと我に返り、再び気まずく視線を逸らし合った。
「「「「「「…………」」」」」」
そんな二人の融和を、無言で待ちわびるブリッジクルー達。
しかしそんな時間は、一瞬にして打ち破られた。
レーダーモニタに突如映し出される大型の何かと、接近を知らせる緊急アラート(警告)。
『CALLだよぉん♪』
通信長ナタリーの席のモニタが着信を知らせ、
「艦長ぉ! 暗号化レーザー通信による、コール(呼び出し)っスぅ!」
「うむ。南極基地からか?」
「ハイ、スぅ!」
気の抜けたナタリーの返答に相反し、ブリッジ内に緊張が走る。
南極基地を出港して以降、連絡は一度も無かった上に、現行技術において傍受と解読が不可能な、特殊暗号化されたレーザー通信で連絡を送って来たのであるから、クルー達の緊張も当然と言える。
艦長は気持ちを改める様に帽子を被り直し、
「繋いでくれたまえ」
「了解っス。正面の大型モニタに映すッス」
固唾を呑み、見つめるブリッジクルー達の前に姿を現したのは、
「艦長、みんな、久しぶり」
笑顔のマシューであった。
特徴的であった赤髪のツンツン頭を綺麗に切りそろえ、身なりも綺麗に整え、そこはかとなく大人びた雰囲気を醸し出していた。
ナクアに代わり、南極基地総司令として働くマシュー。
(立場が人を成長させるのか……)
懐かしい顔の成長した姿に、艦長は帽子の下で微かな笑みを浮かべたが、凛然とした表情でモニタを見上げ、
「それでマシュー君、秘匿回線を使用してまで連絡をするとは、余ほどの事が起きたのかね?」
緊張した眼差しを向けたが、
「安心して下さい艦長、緊急事態じゃありません」
マシューは含んだ所のない笑顔で、
「秘匿回線を使ったのは、あくまで用心の為。クローザーが動き回ってますからねぇ」
「そうか」
ひと先ずホッした表情を見せる艦長と、ブリッジクルー達。
「マシュー君、艦内クルーにも通信を見せても構わんかね? クルー達も喜ぶと思うのだが」
「構いません。俺も、みんなの顔を見たいし」
見せた笑顔は、ルークが生きていた頃と変わらない屈託のない、悪ガキのままであった。
ナタリーは自席の端末を操作し、
「映像回線を、艦内モニタとつなぐっスぅ」
艦内各所に設けられているモニタ付き通信機に、マシューの姿が映し出され、
「マシューじゃねぇかぁ!」
「アイツ、何を大人ぶってやがんだぁ~」
「ましゅーだぁ! ましゅーだぁ!」
ムードメーカーだったマシューが見せる懐かしい笑顔に、ソフィアの一件で張り詰め気味であったブリッジ内、そして艦内が温かな空気に包まれる中、
「それでマシュー君、要件は何かね?」
連絡をして来た目的を改めて尋ねると、
「クローザーが仲間になったそうですね」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
驚くクルー達。その様な連絡を南極基地に送った経緯は無く、
「良く知っている」
平静を装う艦長に、マシューは微かな笑みを浮かべ、
「此方でも色々調べてますからねぇ」
「……それで?」
「ナクアが話を聞きたいそうなんで、一度、南極基地に戻って来て欲しいそうなんです」
「話を聞くだけ、でかね?」
以外そうな顔をすると、マシューは少し奥歯にものが詰まった物言いで、
「い、いやぁ、実はそれだけじゃなく……」
視線を画面の外に送り、
「ほらぁナク、こっちに来いってぇ。恥ずかしがってても、いつかバレるんだからぁ」
画面の外に手を伸ばした。
((((((((((はっ、恥ずかしいぃ!?))))))))))
ナクアとは無縁と思われる言葉に、驚きを隠せないヤマト、ジゼ、マリア、ジャック、シャーロットとガルシアクルー達。
そんな中、マシューに引かれた「小さなナクアの右手」が画面に一瞬だけ映ったが、左手が伸びて来て、掴む手を無言でパシパシぺちぺち叩き、
「い、痛ぇ! こ、こらぁナク、叩くんじゃねぇよ!」
大人びた空気は何処へやら、昔と変わらない物言いでナクアの「手だけ攻撃」を受けつつ、
「じゃ、じゃあ、艦長ぉ! 迎えはもう送ったんでぇ、また後で。痛ぇ、痛てぇ! 止めろってナクアぁ、止めろぉってぇ」
映像はそのまま、なし崩し的に切られた。
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
映像の消えたモニタを、懐かしい余韻に浸るが如く見つめるブリッジクルー達。
するとソフィアが、
「大人っぽくなったと思ったのに、昔と変わりませんでしたねぇ、艦長」
「まったくだ」
以前の様な笑顔を見せ合う二人であったが、ハッと我に返り、再び気まずく視線を逸らし合った。
「「「「「「…………」」」」」」
そんな二人の融和を、無言で待ちわびるブリッジクルー達。
しかしそんな時間は、一瞬にして打ち破られた。
レーダーモニタに突如映し出される大型の何かと、接近を知らせる緊急アラート(警告)。
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