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青木 森

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8.朋友の章_21

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 メラニー婆ちゃん達が帰路に就いた同時刻―――
 ルーカスはクロエと、彼女が厳選した隊員十名と共に、専用小型ジェット機の中にいた。
 クロエの、仕事の速さの成せる技。
 窓際に、一列ずつ配されたシートの最前列に座るルーカスとクロエ、続いて座る緊急招集された隊員達。
 クロエは、この段階まで「とある疑問」を内に秘め、ルーカスの指示に黙って従っていたが、「今しかない」と意を決し、凛然とした表情は変えず、
「隊長」
 反対側のシートで、目をつぶって黙考するルーカスに声を掛けた。
「何か?」
 ゆっくり目を開けるルーカス。
「お伺いしたき事があります」
 その表情から心中を察し、
「彼の者の事か?」
「はい。出過ぎた、」
「構わん」
「ありがとうございます」
 クロエが小さく頭を下げると、
「あの画像の者は『ヘンリー・アンダーソン』だ」
「その者はいったい……」
「類い稀な知性と剣術、そして人柄から「智将」「剣聖」と呼ばれた、ガーディアンの元参謀だ」
「なんと!」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
 驚くクロエと、聞き耳を立てていた隊員達。
「私の師でもあったウィリアム隊長の右腕として辣腕を揮っていたのだが……ウィリアム隊長が殉職され、私が療養に伏し、メイソン・ウッドの様な輩が隊長に就いた時、退官されたと聞いていたのだが……」
 口惜し気に表情を曇らせると、
「あの様な遠目の荒い画像です。恐れながら、人違いと言う事は……」
 しかしルーカスは余ほど確信があるのか、シートに静かに背を預け、
「私もそうであって欲しいとは思う。しかし『ヘンリー』と言う名前と共に、あの身長、あの佇まい、そして何より幾度となく目にした、あの双刀……。私の記憶が、彼であると言っている……」
 悲し気に視線を落とした。
「それ程の人物が、何故ヤングマフィアと自警団の小競り合いを自作する様なマネを……」
「分からん……それを知る為にも、私は彼に会って直接問いたださねばならん」
「……はい、隊長」
 クロエが静かに頷くと、
「少尉……」
「……何でありましょう」
「私は隊長ではない」
 専用機は月明りの下、コーギー達のいる町へと向かう。

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