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7.岐路の章_33
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地図で指し示した基地に向け、車をひた走らせるヤマト。
「アリアナを拉致した軍が彼女達と引き合わせてくれるって、正に渡りに船だよなぁ」
「あぁ? 渡りに船ぇ?」
何か懸念があるのか、ジャックが後部座席から妙に引っ掛かる聞き方をしたが、ヤマトはいつもの事と受け流し、
「ラッキーって、意味だよぉ」
「…………」
一瞬黙ると、
「そうだな……」
短く同意しつつ、
(マジでラッキーかは、今のところ分かんねぇけどな……)
「んん? ジャック、何か言ったかぁ?」
「何でもねぇよ」
プイっと横を向いた。
助手席のジゼと、「ヤレヤレ」と言った顔を見合わせるヤマト。
しかしこの時、二人は気付いていなかった。マリアも同じ懸念を抱いていた事を。
ヤマトが森の奥に目を凝らし、
「もうそろそろ見えて来る筈だ」
口にした次の瞬間、空気を揺さぶる大きな爆発音がし、向かっている森の奥から黒煙が上がった。
「急ぐぞ!」
アクセルを踏み込むヤマト。
赤々と燃え盛る火柱をバックに立つ、色白の肌に、赤銅色した髪とブラウンアイを持つ二人の少女に対し、突かれた巣穴から湧き出すアリの如く、基地の施設からワラワラと現れ、
「相手は女二人だぁーーー!」
「囲め囲めぇーーー!」
「逃がすなぁーーー!」
取り囲む兵士たち。緊張した面持ちで銃口を向け構えたが、短髪の少女は危機感を感じさせない、満面の笑顔で、
「にゃは!」
笑い声を一つ上げ、
「ねぇねぇオジサン達ぃ! ウチの名はシャーロット。ウチとルムちゃんがお世話になってる村から連れ去った、アリアナちゃんがどこにいるか教えてくれないかにゃあ?」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
明朗闊達、緊張感のない声に兵士たちが戸惑う中、対照的に陰鬱狭量、仄暗い表情をした長髪少女のルムことナヤスは、
「答える筈がないでしょ、全く馬鹿なんだから」
ため息交じりに毒づいたが、シャーロットは変わらぬ満面の笑顔で、
「うん! 分かってる。一応、聞いてみてだけにゃあ! それに、」
「それに?」
「(居場所を)知ってそうなのは一人いればイイから、後は皆殺しにゃあ!」
屈託ない満面の笑顔に、むしろ悪寒を感じる兵士たち。
すると緊張状態に耐え切れなくなった一人の兵士が、
「相手は化け物だ! 容赦する事たぁねぇ!」
二人に向けて自動小銃を突如乱射。
それを皮切りに、
「躊躇するなァーーーッ!」
「うわぁーーーーーーッ!」
「撃てぇ撃てぇ撃てぇーーーーーーッ!」
他の兵士達も一斉に発砲。
無数の銃弾が迫る中、シャーロットは「にゃは」っと、ひと笑い。青いフィールドを展開し、全ての銃弾をフィールドで難なく受け止めた。
「化け物どもがぁあぁぁっぁぁあぁぁ!」
「手を止めるなぁあぁぁぁぁぁぁ!」
「撃てぇ、撃てぇ、撃ちまくれぇえぇぇぇ!」
おののきながらも、撃ち続ける兵士たち。
そんな中、シャーロットの展開した青いフィールドの内側にいたナヤスは、変わらぬ仄暗い顔でため息交じり、
「わざわざ受け止めるなんて、お姉ちゃんは相変わらず馬鹿ですね。かわせば早く済む話でしょ」
言い終わるか否か、ナヤスの姿は一瞬にして消え、
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
兵士たちが驚いたのも束の間、
「時間の無駄なんです」
消えたナヤスは背後に。
「「「「「「「「「「な!?」」」」」」」」」」
右手を手刀の形にして身構えていた。
それが、この世で彼等が最後に見た光景であった。
「アリアナを拉致した軍が彼女達と引き合わせてくれるって、正に渡りに船だよなぁ」
「あぁ? 渡りに船ぇ?」
何か懸念があるのか、ジャックが後部座席から妙に引っ掛かる聞き方をしたが、ヤマトはいつもの事と受け流し、
「ラッキーって、意味だよぉ」
「…………」
一瞬黙ると、
「そうだな……」
短く同意しつつ、
(マジでラッキーかは、今のところ分かんねぇけどな……)
「んん? ジャック、何か言ったかぁ?」
「何でもねぇよ」
プイっと横を向いた。
助手席のジゼと、「ヤレヤレ」と言った顔を見合わせるヤマト。
しかしこの時、二人は気付いていなかった。マリアも同じ懸念を抱いていた事を。
ヤマトが森の奥に目を凝らし、
「もうそろそろ見えて来る筈だ」
口にした次の瞬間、空気を揺さぶる大きな爆発音がし、向かっている森の奥から黒煙が上がった。
「急ぐぞ!」
アクセルを踏み込むヤマト。
赤々と燃え盛る火柱をバックに立つ、色白の肌に、赤銅色した髪とブラウンアイを持つ二人の少女に対し、突かれた巣穴から湧き出すアリの如く、基地の施設からワラワラと現れ、
「相手は女二人だぁーーー!」
「囲め囲めぇーーー!」
「逃がすなぁーーー!」
取り囲む兵士たち。緊張した面持ちで銃口を向け構えたが、短髪の少女は危機感を感じさせない、満面の笑顔で、
「にゃは!」
笑い声を一つ上げ、
「ねぇねぇオジサン達ぃ! ウチの名はシャーロット。ウチとルムちゃんがお世話になってる村から連れ去った、アリアナちゃんがどこにいるか教えてくれないかにゃあ?」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
明朗闊達、緊張感のない声に兵士たちが戸惑う中、対照的に陰鬱狭量、仄暗い表情をした長髪少女のルムことナヤスは、
「答える筈がないでしょ、全く馬鹿なんだから」
ため息交じりに毒づいたが、シャーロットは変わらぬ満面の笑顔で、
「うん! 分かってる。一応、聞いてみてだけにゃあ! それに、」
「それに?」
「(居場所を)知ってそうなのは一人いればイイから、後は皆殺しにゃあ!」
屈託ない満面の笑顔に、むしろ悪寒を感じる兵士たち。
すると緊張状態に耐え切れなくなった一人の兵士が、
「相手は化け物だ! 容赦する事たぁねぇ!」
二人に向けて自動小銃を突如乱射。
それを皮切りに、
「躊躇するなァーーーッ!」
「うわぁーーーーーーッ!」
「撃てぇ撃てぇ撃てぇーーーーーーッ!」
他の兵士達も一斉に発砲。
無数の銃弾が迫る中、シャーロットは「にゃは」っと、ひと笑い。青いフィールドを展開し、全ての銃弾をフィールドで難なく受け止めた。
「化け物どもがぁあぁぁっぁぁあぁぁ!」
「手を止めるなぁあぁぁぁぁぁぁ!」
「撃てぇ、撃てぇ、撃ちまくれぇえぇぇぇ!」
おののきながらも、撃ち続ける兵士たち。
そんな中、シャーロットの展開した青いフィールドの内側にいたナヤスは、変わらぬ仄暗い顔でため息交じり、
「わざわざ受け止めるなんて、お姉ちゃんは相変わらず馬鹿ですね。かわせば早く済む話でしょ」
言い終わるか否か、ナヤスの姿は一瞬にして消え、
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
兵士たちが驚いたのも束の間、
「時間の無駄なんです」
消えたナヤスは背後に。
「「「「「「「「「「な!?」」」」」」」」」」
右手を手刀の形にして身構えていた。
それが、この世で彼等が最後に見た光景であった。
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