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5.愁嘆の大地の章-66
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両手にレイピアを持つ者同士、合わせ鏡の様に対峙する二人。
二人の間に、静寂と言う名の緊張が走った次の瞬間、
「行きますですわよ、御姉様ァ!」
ナムクスの左の切っ先が一瞬のうちに鼻先数センチ。
(はっ、早いですわ!!)
咄嗟に半身逸らしつつ、右で弾くマリア。
「遅いでございますですわねぇ、御姉様ァ!」
弾いた左のレイピアは一瞬にして戻り、そこから高速の連突き。
「クッ!」
逸らし、弾き、受け流し、辛うじて致命傷をしのぐも、止まらぬ矢の様な連突きに、勝負服のピンクドレスごと徐々に削られて行くマリア。
距離とタイミングを計る為の左の連突きの後に「止めの右が来る」と分かっていても、左の連突きを処理するので精いっぱい。
左の攻撃は徐々に精度を増して行き、
(なんて厄介な攻撃でございますのぉ! わたくしを敵に回していた方々は、こんな攻撃を……)
自嘲気味に苦笑いすると、
「回転を上げますですわよぉ、御姉様ァ!」
「なっ!?」
驚く間もなく、連撃の速度と精度は更に鋭さを増し、
(だ、ダメですわぁ……もう……限界……)
ナムクスの攻撃がマリアの捌きを凌駕した途端、
ドスドスドスドスドスッ!
マリアの細身に切っ先が幾度となく突き刺さり、
「キャ!」
堪らずマリアは大きくバックステップ。
追撃するナムクスが狂気じみた笑みを以て、
「終わりでございまですわぁ、御姉様ァ!」
止めの「右の一撃」をマリアの心臓目がけて放ち、切っ先が、今正に、マリアの豊かな胸を貫こうかと言うその刹那、
「!」
ナムクスは咄嗟に身を翻し、大きく飛び退いた。
剣風逆巻き空を切る大鎌。
マリアは倒れかけた背を何者かに抱き支えられ、少し照れ臭そうに、
「よ、余計なお世話でございますわぁ。ここから、わたくしの「華麗な逆転劇」をお見せしたモノを」
「ほざけぇ、ジリ貧がぁ」
支えたのはジャックであった。
「相変わらず「可愛げのねぇ女」だぜぇ。強がる余裕あんなら、サッサとテメェで立てや!」
「あらぁ? 「可愛げのある」わたくしの方がよろしくてぇ?」
「ケぇ。寒気がするぜぇ」
優位性が逆転した訳でもない中、ニヤリと笑い合うマリアは、ジャックの腕から幾分ダメージを感じさせながらも立ち上がり、
「なら、よろしいのではなくてぇ?」
「ケッ。言ってろぉ」
二人の気の置けないやり取りに、ナムクスはギリギリ奥歯を噛み鳴らし、
「イチャついてんじゃねぇよ!」
「「誰がイチャついて(んだ・ますの)!」」
「黙れぇ! 一人が二人になった所で所詮スティーラー! 大した問題じゃねぇよ!」
言葉遣いが激変したナムクスにジャックはニヤリ。
「お上品な言葉遣いはどうした! 腐った性根と同じ下品が、すっかり顔出してんじゃねぇかヒス女ァ!」
小馬鹿にした顔を見せたが、急に両眼をギラリと光らせ怒り満面、
「姉にエモノ向けて、はしゃいでんじゃねぇぞ、カスがァ!」
「貴方のソレ(発言)、見事なブーメランですわぇね、ジャック」
「う、うっせぇ、死神ぃ! 背中から撃つマネ言ってんじゃねぇ!」
「きゃあぁ、怖いですわぁ♪」
憤慨するジャックに、おどけて見せるマリア。
見ようによっては、町で見かけるバカップル。
「蚊帳の外」状態のナムクスは、怒りでワナワナ打ち震え、
「シカトしてんじゃねぇわよぉ!」
地面を激しく蹴り飛び、ジャックとマリアとの距離を一瞬にして縮め、
「死に晒せぇーーー!」
醜く歪んだイキ顔で、両手のレイピアの切っ先を二人目がけて振り下ろした。
二人の間に、静寂と言う名の緊張が走った次の瞬間、
「行きますですわよ、御姉様ァ!」
ナムクスの左の切っ先が一瞬のうちに鼻先数センチ。
(はっ、早いですわ!!)
咄嗟に半身逸らしつつ、右で弾くマリア。
「遅いでございますですわねぇ、御姉様ァ!」
弾いた左のレイピアは一瞬にして戻り、そこから高速の連突き。
「クッ!」
逸らし、弾き、受け流し、辛うじて致命傷をしのぐも、止まらぬ矢の様な連突きに、勝負服のピンクドレスごと徐々に削られて行くマリア。
距離とタイミングを計る為の左の連突きの後に「止めの右が来る」と分かっていても、左の連突きを処理するので精いっぱい。
左の攻撃は徐々に精度を増して行き、
(なんて厄介な攻撃でございますのぉ! わたくしを敵に回していた方々は、こんな攻撃を……)
自嘲気味に苦笑いすると、
「回転を上げますですわよぉ、御姉様ァ!」
「なっ!?」
驚く間もなく、連撃の速度と精度は更に鋭さを増し、
(だ、ダメですわぁ……もう……限界……)
ナムクスの攻撃がマリアの捌きを凌駕した途端、
ドスドスドスドスドスッ!
マリアの細身に切っ先が幾度となく突き刺さり、
「キャ!」
堪らずマリアは大きくバックステップ。
追撃するナムクスが狂気じみた笑みを以て、
「終わりでございまですわぁ、御姉様ァ!」
止めの「右の一撃」をマリアの心臓目がけて放ち、切っ先が、今正に、マリアの豊かな胸を貫こうかと言うその刹那、
「!」
ナムクスは咄嗟に身を翻し、大きく飛び退いた。
剣風逆巻き空を切る大鎌。
マリアは倒れかけた背を何者かに抱き支えられ、少し照れ臭そうに、
「よ、余計なお世話でございますわぁ。ここから、わたくしの「華麗な逆転劇」をお見せしたモノを」
「ほざけぇ、ジリ貧がぁ」
支えたのはジャックであった。
「相変わらず「可愛げのねぇ女」だぜぇ。強がる余裕あんなら、サッサとテメェで立てや!」
「あらぁ? 「可愛げのある」わたくしの方がよろしくてぇ?」
「ケぇ。寒気がするぜぇ」
優位性が逆転した訳でもない中、ニヤリと笑い合うマリアは、ジャックの腕から幾分ダメージを感じさせながらも立ち上がり、
「なら、よろしいのではなくてぇ?」
「ケッ。言ってろぉ」
二人の気の置けないやり取りに、ナムクスはギリギリ奥歯を噛み鳴らし、
「イチャついてんじゃねぇよ!」
「「誰がイチャついて(んだ・ますの)!」」
「黙れぇ! 一人が二人になった所で所詮スティーラー! 大した問題じゃねぇよ!」
言葉遣いが激変したナムクスにジャックはニヤリ。
「お上品な言葉遣いはどうした! 腐った性根と同じ下品が、すっかり顔出してんじゃねぇかヒス女ァ!」
小馬鹿にした顔を見せたが、急に両眼をギラリと光らせ怒り満面、
「姉にエモノ向けて、はしゃいでんじゃねぇぞ、カスがァ!」
「貴方のソレ(発言)、見事なブーメランですわぇね、ジャック」
「う、うっせぇ、死神ぃ! 背中から撃つマネ言ってんじゃねぇ!」
「きゃあぁ、怖いですわぁ♪」
憤慨するジャックに、おどけて見せるマリア。
見ようによっては、町で見かけるバカップル。
「蚊帳の外」状態のナムクスは、怒りでワナワナ打ち震え、
「シカトしてんじゃねぇわよぉ!」
地面を激しく蹴り飛び、ジャックとマリアとの距離を一瞬にして縮め、
「死に晒せぇーーー!」
醜く歪んだイキ顔で、両手のレイピアの切っ先を二人目がけて振り下ろした。
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