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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-63

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 飛んで来たのは、ボロ雑巾の様に打ちのめされたジャックであった。
「じゃ、ジャックゥ!」
 慌てて駆け寄り、ジャックをフィールドの内側に入れると、ジャックは苦悶の表情で上半身を起こし、
「(俺が)死んだみてぇな声出してんじゃねぇ! それより双子はどうしたよ!」
 口元から流れ出る血を袖で拭うと、
「…………」
 無言のヤマトの表情から何かを悟り、背後にいる悲しみに暮れるマリア達を見て、怒りから奥歯をギリリッと鳴らし、
「あのクソ女ァ! 絶ってぇ許さねぇ!」
 たった今返り討ちに遭ったばかりだと言うのに再び立ち上がり、敵に向かって駆け出そうとした。
 するとマリアがフィールドも張らずにスッと立ち上がり、
「わたくしが出ますわ!」
「何してるのマリア!」
 慌ててフィールドを展開してマリアを護るジゼ。
 ジャックはダメージの影響でよろめきながらも、
「テメェ(マリア)は、お呼びじゃねぇんだよ!」
 参戦を制した。
 マリアの立ち姿に、雪原に潜むスナイパーの口元が不敵にニヤリ。好機とばかりにマリアに照準を合わせると、
 パァァァン!
 銃口はマリア目がけて火を噴いた。
(ヤベェ!)
 焦るジャックは、咄嗟に屈みながら、
「(ヤツの銃弾は)フィールドを突き破りやがるぞ!」
「「マリアァ!」」
 焦りの声を上げるヤマトとジゼ。
 何かしら細工が施されているのか、ジャックの言う通り、銃弾はジゼのフィールドを突き破り、マリアの眉間目がけて直進。
 しかしマリアは迫り来る銃弾に対し微動だにせず、目にも留まらぬ速さで右手を一振り。
 キィン!
 甲高い金属音と共に銃弾は真っ二つ、チリと化し掻き消えた。
「!」
 驚くスナイパーが覗くライフルスコープの先、何事も無かったかの様に立つマリアの姿。
 続けて二発、三発、四発と微動だにせず払い除けたマリアの右手には、いつ呼び出していたのかレイピアが握られていた。
 レイピアを、大きな十字架の様に眼前で構え直すマリア。
 刀身越しに見える眼は、怒りに満ち溢れ、
「コソコソ隠れていないで出て来たらどうでございますのぉ!」
「…………」
 しかあし返事は返らず、吹きすさぶ極冷の風音だけ。
「ならば良いですわぁ! いぶり出して差し上げますぅわ!」
 目の前にある物全てを薙ぎ払うかの気迫でダブルレイピアを構えた途端、
「おぉーーーほっほっほぉ! そう焦らずとも、今出て差し上げますですわぁ!」
「!?」
「「か弱き羽虫(現代人)」が一人死した位で、醜き怒り様ですわねぇ~、元第一皇女ナムヤスカムア様ぁ」
(人間であった頃のわたくしの名前を!? それにこの声は!)
 マリアの顔色が、怒りから動揺へと変わった。

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