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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-56

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 一時間後―――
 集合したクルー達は、ガルシア改の後部上甲板左舷に渡された桟橋から「浮きドック」へと移り、
「グワァ!」
 待っていた案内役のペンギンの後に続き、オートメーション化されて完全無人の、生活感の無い、無機質な構内を歩き、やがて浮きドックのポート(左舷)まで移動すると、タラップ(舷梯:げんてい:階段状の梯子の様な物)から、南極へと上陸を果たした。
 防寒着も羽織っていない、普段通りの服装で立ち尽くすガルシアクルー達。
 呆然と周囲を見回し、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「操舵長……ココ、南極……ですよねぇ……」
「だよなぁ……」
 口をポカンと開き、真上を見上げるアイザックとジョシュア達。
 そこは一面「雪の銀世界」などではなく、ドーム球場が丸々一つ楽に入れる程の巨大な地下空間。
 俗説的に、南極大陸には幾つもの地下空間があると言われているが、ここはその一つ。
 ガルシア改を乗せた浮きドックは大陸内へと続く「厳秘の地下海廊」を通り、巨大な地底湖に浮上していたのである。
 一年を通して雪と氷に閉ざされ、クジラが流氷の間を遊泳し、白銀の大地をペンギンが我が物顔で闊歩する光景をイメージして筈が、下艦してみれば巨大な洞窟の中。
 クルー達が落胆混じりの顔して驚くのも当然である。
 陸地の奥には四角い灰色のブロックを積み上げた様な、何の飾り気の無い何かの施設と、遥か見上げる天井には、洞窟内を明るく照らす光源が幾つかあるのみ。
 ただし空調は完備されているのか、息苦しさは感じられず、気温と湿度もほど良く、快適とさえ言える環境ではあったが、それ以外に語るべきモノは何も無い、失礼ながらも一言で言うなら「殺風景な基地」である。
 旧敵国の秘密基地に、マリアとジャックも色々な意味で驚きを隠せない中、
「ようこそ! 我らが女王、ナクスカムア様が治める南極国へ!」
 声に一同振り返り、ナクアが変わらぬ無表情でパッと手を挙げ、
「帰った」
「はい。お疲れ様でございました、女王陛下」
 タケダさんが丁寧にお辞儀を返すと、
「ケッ! んだぁコリャ~? ここが南極基地だぁ? ったく色気のねぇ基地だなぁ~」
 ジャックがダルそうな口調で不満を漏らし、
「不本意ながら、同意ですわぁ……」
 マリアも詰まらなそうに周囲を見回した。
「「!」」
 無表情ながらもムッとしたと思われるナクアと、イラっとした様に見えるタケダさん。
〈タケダさんはペンギンなので、表情から感情を読み取るのが難しい〉
 最善を考え皆と作り上げた秘密基地を、元敵国側であった人間に、悪し様に非難されたのだから憤慨するのも当然ではある。
 しかし口には出さなかったモノの、正直なところ、それはガルシアクルーの総意。
 ナクアを気遣い、あえて言わなかった言葉であったが、二人は躊躇なく言い放ったのである。
もはや笑ってお茶を濁すしかないクルー達。
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