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5.愁嘆の大地の章-24
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ジゼを連れ立つ艦長。
終始無言のまま後部格納庫まで行くと「ヤマト」も呼び、二人を連れ立ち艦長室へと移動した。
二人を室内へと促し、扉を閉めた途端、
「グッ……」
小さなうめき声と共に、膝から崩れ落ちそうになる。
「「艦長ォ!」」
慌てて両脇から支える二人。
「す、すまない……いささか疲れが……思った以上に堪えていたようだ……」
海焼けした浅黒い顔を青白く、弱弱しく笑って見せた。
「「…………」」
艦長お気に入りの古びた木製イスに、そっと座らせる二人。
「すまない、二人とも……」
「オリビアさんの事……ですか?」
思いがけず的を射られた艦長は、少し驚いた表情を見せつつ、
「情けない話だが……彼女が語った事を、内に秘めておくのが少々辛くてね……」
自身の心の弱さを嘲笑するかの様に、小さく笑うと、
「私達じゃなく、ブリッジのみんなか、ソフィアさんに話した方が良いんじゃ……どうして人として頼りない私達に……」
ヤマトも頷いたが、
「あまり公にしたくない話なのだよ。先日のかん口令も結局漏れ、周知されてしまった……それに……」
艦長はフッと小さく笑い、
「君達と話していると、旧友(ジェイソン)と話している様で落ち着くのだよ……私も「か弱き人間の一人」と言う訳だ」
「そんな事は……それより、オリビアさんの話って言うのは?」
ジゼも頷くと、
「うむ……何から話せば良いか……」
艦長は目を閉じ、しばし黙考すると、やがてゆっくりと目を開け、
「そうだな……まず初めに……彼女はこの船(ガルシア)の動向を知る為に、ある組織が送り込んだスパイだそうだ」
「「スパイ……」」
「うむ。潜入後、長らく接触は無かったそうだが、先日「浮島」に上陸したさい、突如接触して来たそうだ。以降連絡を取り合い、先日の戦闘におけるトラブルも、指示があっての工作だそうだ」
「連絡って……じゃあ艦内に、他にもスパイが!?」
「いや。無線機で取り合っていたそうだ」
「え? でもそれなら、私かシセか見逃す筈が……」
怪訝な表情を浮かべると、艦長は頷き、
「どうやって調べたかは分からないが、ダイバーズ立ち上げ時にテスト用で使っていた周波数帯域を使用し、やり取りをしていたそうだ。だから通常使用している無線に紛れて警報も出ず、違法使用に気付けなかったのだと」
「暗号化された周波数帯域ですよね? スティーラーでもない連中は、いったいどうやって……」
「分からん……ただ彼女を陰から操っていた組織は、それ程のチカラを持っていると言う事なのだろう」
情報戦に長けたダイバーズを手玉に取る「姿の見えぬ敵の存在」に、ヤマトとジゼは固唾を呑んだ。
終始無言のまま後部格納庫まで行くと「ヤマト」も呼び、二人を連れ立ち艦長室へと移動した。
二人を室内へと促し、扉を閉めた途端、
「グッ……」
小さなうめき声と共に、膝から崩れ落ちそうになる。
「「艦長ォ!」」
慌てて両脇から支える二人。
「す、すまない……いささか疲れが……思った以上に堪えていたようだ……」
海焼けした浅黒い顔を青白く、弱弱しく笑って見せた。
「「…………」」
艦長お気に入りの古びた木製イスに、そっと座らせる二人。
「すまない、二人とも……」
「オリビアさんの事……ですか?」
思いがけず的を射られた艦長は、少し驚いた表情を見せつつ、
「情けない話だが……彼女が語った事を、内に秘めておくのが少々辛くてね……」
自身の心の弱さを嘲笑するかの様に、小さく笑うと、
「私達じゃなく、ブリッジのみんなか、ソフィアさんに話した方が良いんじゃ……どうして人として頼りない私達に……」
ヤマトも頷いたが、
「あまり公にしたくない話なのだよ。先日のかん口令も結局漏れ、周知されてしまった……それに……」
艦長はフッと小さく笑い、
「君達と話していると、旧友(ジェイソン)と話している様で落ち着くのだよ……私も「か弱き人間の一人」と言う訳だ」
「そんな事は……それより、オリビアさんの話って言うのは?」
ジゼも頷くと、
「うむ……何から話せば良いか……」
艦長は目を閉じ、しばし黙考すると、やがてゆっくりと目を開け、
「そうだな……まず初めに……彼女はこの船(ガルシア)の動向を知る為に、ある組織が送り込んだスパイだそうだ」
「「スパイ……」」
「うむ。潜入後、長らく接触は無かったそうだが、先日「浮島」に上陸したさい、突如接触して来たそうだ。以降連絡を取り合い、先日の戦闘におけるトラブルも、指示があっての工作だそうだ」
「連絡って……じゃあ艦内に、他にもスパイが!?」
「いや。無線機で取り合っていたそうだ」
「え? でもそれなら、私かシセか見逃す筈が……」
怪訝な表情を浮かべると、艦長は頷き、
「どうやって調べたかは分からないが、ダイバーズ立ち上げ時にテスト用で使っていた周波数帯域を使用し、やり取りをしていたそうだ。だから通常使用している無線に紛れて警報も出ず、違法使用に気付けなかったのだと」
「暗号化された周波数帯域ですよね? スティーラーでもない連中は、いったいどうやって……」
「分からん……ただ彼女を陰から操っていた組織は、それ程のチカラを持っていると言う事なのだろう」
情報戦に長けたダイバーズを手玉に取る「姿の見えぬ敵の存在」に、ヤマトとジゼは固唾を呑んだ。
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