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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-21

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 四人が数えるのも嫌になる程の銃火器を前に、途方に暮れていた頃―――
 ジャックはひと気のない居住区へと向かい歩いていた。
 乗組員は皆、通常任務に従事し、無人の時間帯である。
(クソッ! ムカつくぜぇ! 何やってんだ、俺はぁ!)
 自身の言動が誤解を与え、不和を招いていると理解しつつ、素直になれない自分に苛立つジャックであったが、自室が視界に入ると、部屋に侵入しようとする人影が目に留まった。
「!」
 ジャックの気配に気付き、逃げ出す人影。
「テメェ! 待ちやがれぇ!」
 逃げる人影は個人を判別出来ないものの、狙いすましたかの様に乗組員不在の場所を選び逃走、明らかにクルーの一人である事をうかがわせた。
 しかも直線ではスグに追いつかれると判断してか小刻みに曲がり、階段を降り、上り、逃走する。
 しかし残念ながら追跡者は「スティーラー」、人ならざる者。人間相手ならば通用したかも知れない作戦であるが、標的にされた『人間』に逃げおおせる筈も無く、
「チョロチョロと、ウッッゼェ逃げ方してんじゃねぇ!」
 生身の人間には成し得ない急加速で背中に飛び付き、そのまま床に押し倒すと、
「ウッ!」
 短い女の悲鳴と同時に、懐から何かが床に転がり出た。
「何だ?」
 それはガルシアのステルス迷彩を発動する装置に取り付けられていた筈の『ヒューズユニットボックス』であった。
「女ァ! 俺に罪を被せようとしやがったな! オマエのせいで仲間が何人も死にかけ、」
 怒り交じりに、強引に振り向かせ、
「!!」
絶句した。
「テメェ……何してんだ……一歩違ぇや、オメェの大事なガキ共が死んでんだぞ……」
 犯人はオリビアであった。
 観念した様に、視線を逸らす。
 大切に護り育てていた筈の子供達を、自らの手で危険に晒した「育ての親のオリビア」に、怒り以上に、得も言われぬ悲しみが込み上げて来るのを感じるジャック。
 捕まればタダで済まない事も、軍医の彼女ならば重々承知の筈である。
(バカヤローが……)
 悔し気に眉をひそめると、複数の足音が慌ただしく駆け寄って来た。
 騒ぎを聞きつけ駆けつける、ガルシアクルー達。
 二人を取り囲み、
「動くなァ!」
 一斉に銃口を向けると、ジャックは小さく一息吐き、
「処分は、オマエ等の方で好きにしなぁ」
 オリビアから手を離し立ち上がった途端、
 ガシャ!
 ジャックの両手首に手錠がはめられた。
「はあぁ? これぁ何のジョークだぁ? ケッ、笑えねぇ~」
「黙れぇ!」
「!?」
「遂に正体現しやがったな!」
「証拠を見つけたオリビアに手を掛けようとするなんてなァ!」
「家族(ガルシアの仲間)に手を出すなんて、とんでもねぇヤローだ!」
「!」
 自らが招いた不信感の根深さをまざまざと見せつけられ、少なからず衝撃を受けるジャックは、
(なるほどな……マリアの言う通りって事かよぉ……)
 自嘲するかの様に、フッと鼻先で小さく笑い、
「だとしたらどうするよぉ」
 不敵な笑みを浮かべ、囲むクルー達を睨む様に見回した。
「「「「「「「「クッ……」」」」」」」」
 三白眼から放たれる眼力に、思わず怯むクルー達。
 と、そこへ、
「何があったんだい!」
 ブレイク、ヤマト、マリア、ダニエル、艦内警備も兼任する調査班の面々も駆けつけ、
「「「!」」」
 手錠姿のジャックと、悲痛な表情でうつむき床に手を付くオリビア、そして銃を手に二人を囲むクルー達に、ヤマト達は言葉を失った。
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