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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-13

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 その頃洋上では―――
 漂流物に紛れ潜んでいた、お世辞にもガラが良いとは言い難い容姿の何者かが、
「バレたみてぇだが、約束の時間通りだ! 行くいぞヤローどもぉーーーーーー!」
 頭目と思しき大男の雄叫びに、
「「「「「「「「「「うぉーーーーーーーーー!」」」」」」」」」」
 子分たちは、荒い「勝ち鬨」を上げた。
 漂流物達の陰から一斉に飛び出す無数のモーターボートと、船尾で高らかたなびく、ジョリーロジャー(海賊旗)。
 しかし海賊のボート達はガルシア改に近づかず、主砲の射程外を遠巻きに、グルグルと回っているだけ。
「コイツ等、どう言うつもりだぁ!?」
 レーダー画像を苛立ち睨むアイザックであったが、何かを見つけ驚愕した。
「かっ、艦長ォ! カレドニアの三隻が真っ直ぐ戻って来ます!」
「なに!?」
 驚きの声を上げると同時に、激しく乱れ始めるレーダー画像。
「ECM!? ナタリー、電波妨害を受けてる! ECCMを起動して妨害を回避してくれぇ! これじゃ何も見えない!」
「もうやってるっスよぉ!」
「全方位からの妨害電波だってのかぁ!?」
 セオリー無視した電波攻撃に戸惑うアイザック。
 艦長は帽子の下で苛立ちを滲ませ、
(我々の眼を潰しに!? ボートの群れはこの為か!)
 ガルシアの周りをハエの如く飛び回る海賊船を睨んだ。
「監視長ォ! 通常レーダーを停止し、レーザーレーダーのみの画像に切り替えるのだ!」
「そ、そうか! アイサァ!」
 アイザックは手早く端末を操作、しかし再表示されたモニタ画像を見るなり、
「しまった! 艦長! カレドニア艦からミサイルが三、発射されています! 対艦ミサイル、エグゾセの改良型と思われます!」
「武器管制長! セイフティー(安全装置)を解除、迎撃ィ! フレア射出ッ!」
「アイサァ! 神に召されよクソッタレェ!」
 ジゼも負けじと、矢継ぎ早に送られてくるデータを神業キーボード捌きで解析し、
「カレドニア艦はフロレアル級フリゲート艦一隻と、P400哨戒艇二隻と判明! 基本スペックは哨戒艇機銃のみ、フリゲート艦は対艦二に、主砲一です!」
 艦長はクルーを鼓舞する様に立ち上がり、
「ガルシアにECMは効かない! 各員冷静に対処せよォ!」
 回避運動を取りつつ、火の玉の様な「フレア(追尾ミサイルへの目くらまし)」を、空中に無数に飛び散らしながら洋上を駆けるガルシア改。
 空中で敵ミサイルが誤爆する中、
「クソォ! ボートがチョロチョロと邪魔臭えぇ!」
 歯ぎしりさせる操舵長。
「操舵長ォ! ECMを照射するだけのボート群などは捨て置くのだァ!」
「アイサァ!」
 飴にたかるアリの如き海賊たちを、余裕の貫禄さえ持って払いのけ突き進むガルシア改。
 しかし海賊の頭目は妨害電波など効かないガルシアの性能を知ってか知らずか、余裕の笑み。
「こう言う手もあるんだぜぇ!」
 マイクを手にすると、品の無い笑みを浮かべ、
「ヤロー共ォ! ありったけお見舞いしなァーーー!」
 ガルシアを取り囲むボートから、ミサイルが一斉に水中に飛び込んだ。
「艦長ォ! 全方位から魚雷来ます! 雷数二十ぅ!」
「なにぃ!?」
 対艦ミサイルはチャフやフレアで回避したものの、四方八方からの魚雷からでは空でも飛ばない限り逃げ場なし。
「クッ!」
(水中デコイ(おとり)と急加速のみで、全てを回避出来るのかぁ!?)
 さしもの艦長も、一瞬判断に迷いを生じさせると、自席で「艦内の状況確認の任」に就いていたシセが立ち上がり、
「艦長殿! 私もフォローに入ります!」
「すまない、頼む!」
「管制長さんは、対空防御に専念して下さいでぇす!」
「おぅ、イエェ!」
 シセは自席のタッチモニタに両手をつき、意識を集中。
「ガルシア改、シンクロコネクトでぇす!」
 カッと両目を見開き、メインシステムと意識を同期。
「全発射管クラスター機雷装填! 注水開始でぇす!」
 シセの叫びに呼応する様に、ガルシアの船首、船尾に装備された八つの魚雷発射管に「クラスター機雷」が次々自動装填、発射管が海水で満たされ、
「全弾射出でぇす!」
 水音をたて、船外へ飛び出すと、
「続けて一、二、五、六番にデコイ装填! 一と五はガルシアの「スクリュー音紋」をセット、二と六には「スラスター音紋」をセット! 注水開始でぇす!」
 先にシセの指示でガルシアから放たれた「クラスター機雷」は、数十メートル離れた所で中から無数の子爆弾を射出。ぶつかった敵魚雷は次々爆発、海面に幾つもの水柱を作り、たて続け、
「一、二、五、六番射出でぇす!」
 飛び出した四本の魚雷は破壊出来なかった残りの魚雷を引き連れ、百メートルほど離れた位置で爆発、海上に高々と水柱を上げた。
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