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青木 森

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5.愁嘆の大地の章-1

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 オーストラリアからヤマトとジゼを奪還した戦艦ガルシア改。
 南極を目指し南下するものと思われたが、実際にはオーストラリアとニュージーランドの間、タスマン海の中央を突っ切る形で北上を続けていた。

 ガルシアが通った後に延々と延びて行く白波を、後部上甲板からぼんやり見つめるヤマト。
「どうかしたの?」
 声に振り返ると、ジゼが微笑みを浮かべ見つめていた。
 澄み切った青空をバックに、輝く様な笑顔。
(かわいい……)
 心の内では思いつつ、イタズラっぽい笑みを浮かべ、
「サボりかぁ? ブリッジの任務は良いのかぁ?」
「ヤマトこそぉ、調査班の仕事はいいのぉ?」
「今は待機だ」
「待機だっで任務でしょぉ? 私の方はシセもいるし、ナクアだっているから……担当を外れるのも近いかも」
「そう言えばソフィアさん、「人員配置を考える」って言ってたなぁ」
「それでぇ、どうしたの?」
「…………」
 黙するヤマトは、自身の中で散らばる様々な思いをまとめ、
「ナクアの言う「チカラの強化」って……本当に必要なのかなぁ~って、思ってさぁ」
「?」
「艦長も言ってたろ? 今はジャックやマリアもいるし、ナクアも。それにシセだって。スティーラーが三人も居れば、」
「でもクローザーのチカラは、それを凌駕するんでしょ?」
「……分かってる」
 暗く視線を落とし、沈黙すると、
「チカラが怖いの?」
「!」
 ギクリと振り向くヤマト。
 本音に蓋をして、本題から目を逸らす様な言い回しをしていた筈が、思いがけず的を射られ驚いたのである。
「やっぱり、そうなんだぁ」
 口元に微かな笑みを浮かべ、隣に屈むジゼ。
「……情けなくてゴメン」
 自嘲するヤマト。
「そんな事ないよ。ヤマトの過去を知っていれば、そう思うのも仕方がないと思うもの」
「……正直、自分自身が怖いんだ……チカラを手に入れた途端、命令一つで、何の疑問も持たないで人を殺めていた軍籍時代に戻るんじゃないかって……」
 波間に視線を落とすと、
「私もそう言う心配、少しはあるかなぁ~」
「ジゼにも?」
「うん。この体の以前の持ち主の事、聞いたでしょ? ヤマトもだけど」
「バトルマニアの二人。誰に聞いても、良い話は聞かなかったよなぁ」
「うん。この体のどこかに、その消された筈の意識が残ってて、チカラを手にした途端、私の意識なんて消し飛ばされちゃうんじゃないか……なんて思う事もあるの」
「それはその……イヤだなぁ……」
 少し照れ臭そうに目線を逸らすと、
「ウフッ。ありがとう」
「お、可笑しいだろ、その応え」
「そう?」
 笑い合っていると背後から、
「ヤマトぉ~~~! ジゼぇ~~~!」
 半泣きのイサミが、トシゾウとソウシを引き連れ走って来た。
「どうした、イサミ?」
「ブリッジに、はやくきてぇ! ジャックがぁ、ジャックがぁ~~~!」
「「たいへんなんだよぉ~~~」」
 顔を見合わせ、走り出すヤマトとジゼ。
 
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