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青木 森

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4.偽りの新天地の章-25

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 苛烈な戦場を生き抜いて来た筈の彼の体は、たった一人の、手傷を負った、はかなげな少女の目に恐怖したのである。
「こんな事が……」
 受け入れがたい現実に戸惑っていると、突如機内スピーカーからノイズに混じり、
「たっ! 隊長ぉーーーッ! うわぁーーーーーー!」
 部下の悲鳴が。
「!」
 正気に戻り、
「各自散開ッ! スモークから抜け出ろッ! 急げぇーーーーーーッ!」
 後退命令を叫ぶも、部下の復唱は無く、スピーカーからはノイズしか聞こえて来ない。
「クソがァ!」
 モニタにはセンサー系、GPS系のデータがエラーを乱発表示。
 けたたましい警報音まで鳴り響かせ、
「今度は「チャフ入り」かァ!」
 口惜し気な表情を浮かべ、視界の利かない煙の中を蛇行後退。
 その間にも、外部マイクは大質量の何かが地面に落ちる響きを何度も拾い、
「いったい、どうなってやがる! 何が起きてやがるんだァ!」
 苛立ち露わに回避行動を続けていると、次第にスモークが薄まり、
「抜けたかァ!」
 視界とセンサー系が回復し安堵するウィリアムであったが、マリアが立っていた場所を振り返り見て絶句した。
 瓦礫と化した四機のパワードスーツ。
 その山の上に、ヤマトが仁王立ちしていたのである。
 背後には、マリア、ジャック、軍曹の遺体を守る様にフィールドを張るジゼの姿も。
「テメェ等、どんな手品を使いやがったァ! ついさっき「町に居る」と定時報告が!」
 ヤマトはニヤリと笑い、ガーディアン隊員が携帯している専用無線機を取り出すと、
『定時報告です。アイツ等、まだ町でイチャ付いてますよ。もう帰って良いですかねぇ?』
 ウィリアムの部下の声色まで再現して見せた。
「ば、化物共が何でもありかァ!」
 強がる様に、皮肉交じりに笑って見せると、
「アンタの部下も中々だったよ! 中々隙を見せないから手間取っちまった……」
「ごめんね、遅くなって……イヤな予感はしてたんだけど……」
 マリアの腕の中で眠る軍曹を、悲し気に見つめるヤマトとジゼ。
 しかしウィリアムは圧倒的不利な状況にもかかわらず、余裕の笑みを浮かべ、
「知ってるぜぇ~ヤマト、ジゼ。オマエ等、フィールド作りしか出来ねぇそうじゃねぇ~か」
 パワードスーツの銃口をヤマト達に向けた。
 バツが悪そうに顔を背けるジャックと、冷ややかなジト目で見下ろすマリアとジゼ。
 ヤマトは居心地悪そうなジャックを横目にフッと小さく笑い、おもむろに左掌をウィリアム機に、右掌は天に向け、
「どっかの馬鹿から聞いたんだろうが、フィールドには、こう言う使い方も出来るのさ!」
 上げた右手だけ素早く振り下ろした。
 手から離れ飛ぶ青きフィールド。矢の如き速さでウィリアム機に向かって一直線。
「きぃ、聞いてねぇーーーしぃ!」
 焦りの表情で口惜し気にライフルを乱射するも、フィールドは勢い衰える事無く全弾跳ね返して猛突進。
「うおぉーーーーーーッ!」
 雄叫び上げつつ乱れ撃ち。
 ウィリアム御乱心の流れ弾を、ヤマトとジゼがフィールドで冷静に弾く中、迫るフィールドは銃弾などモノともせず、ウィリアム機の右腕をライフルごと縦半分、チーズの様に、いともた易く切り落した。
「くっ、クソどもがぁあぁあっぁぁぁ!」
 逆ギレとしか言いようのない悪態を吐くウィリアムを、ヤマトは憤怒の形相で睨み付け、
「死にたきゃテメェ一人で、よそへ行けぇ! みんな、この乱世を生き抜こうと必死なんだ! イイ歳こいて、テメェ勝手な性癖他人に押し付けてんじゃねぇーーー!」
「ガキが勝ったつもりで説教かァ!? 調子こいてんじゃねぇぞ!」
 怒れるウィリアム機が左手を上げると、スリ鉢状した採掘場のフチ部分に、ステルス迷彩で姿を隠していたパワードスーツ部隊がズラリと一周。
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