101 / 535
4.偽りの新天地の章-25
しおりを挟む
苛烈な戦場を生き抜いて来た筈の彼の体は、たった一人の、手傷を負った、はかなげな少女の目に恐怖したのである。
「こんな事が……」
受け入れがたい現実に戸惑っていると、突如機内スピーカーからノイズに混じり、
「たっ! 隊長ぉーーーッ! うわぁーーーーーー!」
部下の悲鳴が。
「!」
正気に戻り、
「各自散開ッ! スモークから抜け出ろッ! 急げぇーーーーーーッ!」
後退命令を叫ぶも、部下の復唱は無く、スピーカーからはノイズしか聞こえて来ない。
「クソがァ!」
モニタにはセンサー系、GPS系のデータがエラーを乱発表示。
けたたましい警報音まで鳴り響かせ、
「今度は「チャフ入り」かァ!」
口惜し気な表情を浮かべ、視界の利かない煙の中を蛇行後退。
その間にも、外部マイクは大質量の何かが地面に落ちる響きを何度も拾い、
「いったい、どうなってやがる! 何が起きてやがるんだァ!」
苛立ち露わに回避行動を続けていると、次第にスモークが薄まり、
「抜けたかァ!」
視界とセンサー系が回復し安堵するウィリアムであったが、マリアが立っていた場所を振り返り見て絶句した。
瓦礫と化した四機のパワードスーツ。
その山の上に、ヤマトが仁王立ちしていたのである。
背後には、マリア、ジャック、軍曹の遺体を守る様にフィールドを張るジゼの姿も。
「テメェ等、どんな手品を使いやがったァ! ついさっき「町に居る」と定時報告が!」
ヤマトはニヤリと笑い、ガーディアン隊員が携帯している専用無線機を取り出すと、
『定時報告です。アイツ等、まだ町でイチャ付いてますよ。もう帰って良いですかねぇ?』
ウィリアムの部下の声色まで再現して見せた。
「ば、化物共が何でもありかァ!」
強がる様に、皮肉交じりに笑って見せると、
「アンタの部下も中々だったよ! 中々隙を見せないから手間取っちまった……」
「ごめんね、遅くなって……イヤな予感はしてたんだけど……」
マリアの腕の中で眠る軍曹を、悲し気に見つめるヤマトとジゼ。
しかしウィリアムは圧倒的不利な状況にもかかわらず、余裕の笑みを浮かべ、
「知ってるぜぇ~ヤマト、ジゼ。オマエ等、フィールド作りしか出来ねぇそうじゃねぇ~か」
パワードスーツの銃口をヤマト達に向けた。
バツが悪そうに顔を背けるジャックと、冷ややかなジト目で見下ろすマリアとジゼ。
ヤマトは居心地悪そうなジャックを横目にフッと小さく笑い、おもむろに左掌をウィリアム機に、右掌は天に向け、
「どっかの馬鹿から聞いたんだろうが、フィールドには、こう言う使い方も出来るのさ!」
上げた右手だけ素早く振り下ろした。
手から離れ飛ぶ青きフィールド。矢の如き速さでウィリアム機に向かって一直線。
「きぃ、聞いてねぇーーーしぃ!」
焦りの表情で口惜し気にライフルを乱射するも、フィールドは勢い衰える事無く全弾跳ね返して猛突進。
「うおぉーーーーーーッ!」
雄叫び上げつつ乱れ撃ち。
ウィリアム御乱心の流れ弾を、ヤマトとジゼがフィールドで冷静に弾く中、迫るフィールドは銃弾などモノともせず、ウィリアム機の右腕をライフルごと縦半分、チーズの様に、いともた易く切り落した。
「くっ、クソどもがぁあぁあっぁぁぁ!」
逆ギレとしか言いようのない悪態を吐くウィリアムを、ヤマトは憤怒の形相で睨み付け、
「死にたきゃテメェ一人で、よそへ行けぇ! みんな、この乱世を生き抜こうと必死なんだ! イイ歳こいて、テメェ勝手な性癖他人に押し付けてんじゃねぇーーー!」
「ガキが勝ったつもりで説教かァ!? 調子こいてんじゃねぇぞ!」
怒れるウィリアム機が左手を上げると、スリ鉢状した採掘場のフチ部分に、ステルス迷彩で姿を隠していたパワードスーツ部隊がズラリと一周。
「こんな事が……」
受け入れがたい現実に戸惑っていると、突如機内スピーカーからノイズに混じり、
「たっ! 隊長ぉーーーッ! うわぁーーーーーー!」
部下の悲鳴が。
「!」
正気に戻り、
「各自散開ッ! スモークから抜け出ろッ! 急げぇーーーーーーッ!」
後退命令を叫ぶも、部下の復唱は無く、スピーカーからはノイズしか聞こえて来ない。
「クソがァ!」
モニタにはセンサー系、GPS系のデータがエラーを乱発表示。
けたたましい警報音まで鳴り響かせ、
「今度は「チャフ入り」かァ!」
口惜し気な表情を浮かべ、視界の利かない煙の中を蛇行後退。
その間にも、外部マイクは大質量の何かが地面に落ちる響きを何度も拾い、
「いったい、どうなってやがる! 何が起きてやがるんだァ!」
苛立ち露わに回避行動を続けていると、次第にスモークが薄まり、
「抜けたかァ!」
視界とセンサー系が回復し安堵するウィリアムであったが、マリアが立っていた場所を振り返り見て絶句した。
瓦礫と化した四機のパワードスーツ。
その山の上に、ヤマトが仁王立ちしていたのである。
背後には、マリア、ジャック、軍曹の遺体を守る様にフィールドを張るジゼの姿も。
「テメェ等、どんな手品を使いやがったァ! ついさっき「町に居る」と定時報告が!」
ヤマトはニヤリと笑い、ガーディアン隊員が携帯している専用無線機を取り出すと、
『定時報告です。アイツ等、まだ町でイチャ付いてますよ。もう帰って良いですかねぇ?』
ウィリアムの部下の声色まで再現して見せた。
「ば、化物共が何でもありかァ!」
強がる様に、皮肉交じりに笑って見せると、
「アンタの部下も中々だったよ! 中々隙を見せないから手間取っちまった……」
「ごめんね、遅くなって……イヤな予感はしてたんだけど……」
マリアの腕の中で眠る軍曹を、悲し気に見つめるヤマトとジゼ。
しかしウィリアムは圧倒的不利な状況にもかかわらず、余裕の笑みを浮かべ、
「知ってるぜぇ~ヤマト、ジゼ。オマエ等、フィールド作りしか出来ねぇそうじゃねぇ~か」
パワードスーツの銃口をヤマト達に向けた。
バツが悪そうに顔を背けるジャックと、冷ややかなジト目で見下ろすマリアとジゼ。
ヤマトは居心地悪そうなジャックを横目にフッと小さく笑い、おもむろに左掌をウィリアム機に、右掌は天に向け、
「どっかの馬鹿から聞いたんだろうが、フィールドには、こう言う使い方も出来るのさ!」
上げた右手だけ素早く振り下ろした。
手から離れ飛ぶ青きフィールド。矢の如き速さでウィリアム機に向かって一直線。
「きぃ、聞いてねぇーーーしぃ!」
焦りの表情で口惜し気にライフルを乱射するも、フィールドは勢い衰える事無く全弾跳ね返して猛突進。
「うおぉーーーーーーッ!」
雄叫び上げつつ乱れ撃ち。
ウィリアム御乱心の流れ弾を、ヤマトとジゼがフィールドで冷静に弾く中、迫るフィールドは銃弾などモノともせず、ウィリアム機の右腕をライフルごと縦半分、チーズの様に、いともた易く切り落した。
「くっ、クソどもがぁあぁあっぁぁぁ!」
逆ギレとしか言いようのない悪態を吐くウィリアムを、ヤマトは憤怒の形相で睨み付け、
「死にたきゃテメェ一人で、よそへ行けぇ! みんな、この乱世を生き抜こうと必死なんだ! イイ歳こいて、テメェ勝手な性癖他人に押し付けてんじゃねぇーーー!」
「ガキが勝ったつもりで説教かァ!? 調子こいてんじゃねぇぞ!」
怒れるウィリアム機が左手を上げると、スリ鉢状した採掘場のフチ部分に、ステルス迷彩で姿を隠していたパワードスーツ部隊がズラリと一周。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる