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4.偽りの新天地の章-11
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程なく三人の下へ、連絡を受けた警察官達がやって来て、
「ご協力、感謝いたします」
軍曹からひったくり犯を受け取り敬礼すると、
「これまた……手酷くやられましたねぇ……」
誰かを見て、痛々しそうに眉をひそめ、
「「強盗」以外に「傷害」の罪が増えたな!」
「それは俺じゃねぇ!」
「「あははははは……」」
笑ってお茶を濁す、軍曹とジゼ。
ヤマトが両頬にモミジの様な手形痕をつけ、腫れて膨らんでいるのか、怒って膨らんでいるのか、不機嫌そうに見える顔をしていたのである。
するともう一人の警察官が笑顔で歩み寄り、
「念のため、身分証を提示していただけますかぁ?」
「「身分証!?」」
(何だソレ!?)
(聞いてないわよ!?)
ギョッとして軍曹を見るも、軍曹も持っていないのか、申し訳なさげに苦笑いして首を横に振った。
身分証は鎖国を始めた時に発行して以降、新生児にのみ発行され、移民を受け入れていない現在、追加発行される事も無く、軍曹も持っていなかったのである。
三人の不審な挙動に、警察官達の目つきが友好的なモノから一転。
「申し訳ありませんが、署まで御同行願えますか」
口調まで明らかに変わると、
「どうした新米ども」
年配の制服警官がやって来た。
「新米は止めて下さいよぉ。この三人が身分証不携帯なので、一応署への同行を」
「嬢ちゃん達ぃ、不携帯はマズイなぁ~」
笑いながら三人の顔を見るなり、顔色が急変。
「なッ!? 何やってんだお前達はァ!」
若い警察官達を怒鳴りつけた。
「ど、どうしたんスか、先輩?」
「コチラの方々を、知らんのか! ニュースを見んかぁ!」
「何をそんなに慌てて……」
改めて三人の顔をしげしげ見つめる新米警官達は一気に青ざめ、
「じ、じょ、ジョウオウヘイカのォーーー!? しっ、失礼しましたァーーーッ!」
千切れんばかりに背筋を伸ばし、引きつり顔で敬礼すると、軍曹は穏やかに微笑み、
「あなた方の対応は至極当然です。聴取したい時は、いつでも王宮へ連絡して来て下さい」
「おっ、お気遣い感謝いたしまぁす! でぇ、ではッ!」
かしこまって敬礼し、ひったくり男をパトカーの後部座席に押し込み、
「ホラッ! さっさと乗らんか!」
焦ってグイグイ奥へ押しやると、
「イテテ! 押すんじゃねぇよ! ケッ、何が女王陛下だ! 俺みたいな小物を捕まえてる暇があったら、与党議員を捕まえろってんだ!」
マリアを卑しめる男に、軍曹は瞬間キレ。
「貴様、どう言う意味だァ!」
詰め寄ると、男は何食わぬ顔でソッポを向き、
「さぁ~な」
「き、貴様ァ~~~」
怒りを募らせるも、年配の警察官はひったくり男を嘲笑う様に、
「ハッハッハ、捕まったひがみですよ。気にする事もありません。では我々はこれで!」
敬礼するとパトカーに乗り込み、去って行った。
「…………」
一抹の不安を覚え、怪訝な顔して消え行くパトカーの背を見つめる軍曹。
「ご協力、感謝いたします」
軍曹からひったくり犯を受け取り敬礼すると、
「これまた……手酷くやられましたねぇ……」
誰かを見て、痛々しそうに眉をひそめ、
「「強盗」以外に「傷害」の罪が増えたな!」
「それは俺じゃねぇ!」
「「あははははは……」」
笑ってお茶を濁す、軍曹とジゼ。
ヤマトが両頬にモミジの様な手形痕をつけ、腫れて膨らんでいるのか、怒って膨らんでいるのか、不機嫌そうに見える顔をしていたのである。
するともう一人の警察官が笑顔で歩み寄り、
「念のため、身分証を提示していただけますかぁ?」
「「身分証!?」」
(何だソレ!?)
(聞いてないわよ!?)
ギョッとして軍曹を見るも、軍曹も持っていないのか、申し訳なさげに苦笑いして首を横に振った。
身分証は鎖国を始めた時に発行して以降、新生児にのみ発行され、移民を受け入れていない現在、追加発行される事も無く、軍曹も持っていなかったのである。
三人の不審な挙動に、警察官達の目つきが友好的なモノから一転。
「申し訳ありませんが、署まで御同行願えますか」
口調まで明らかに変わると、
「どうした新米ども」
年配の制服警官がやって来た。
「新米は止めて下さいよぉ。この三人が身分証不携帯なので、一応署への同行を」
「嬢ちゃん達ぃ、不携帯はマズイなぁ~」
笑いながら三人の顔を見るなり、顔色が急変。
「なッ!? 何やってんだお前達はァ!」
若い警察官達を怒鳴りつけた。
「ど、どうしたんスか、先輩?」
「コチラの方々を、知らんのか! ニュースを見んかぁ!」
「何をそんなに慌てて……」
改めて三人の顔をしげしげ見つめる新米警官達は一気に青ざめ、
「じ、じょ、ジョウオウヘイカのォーーー!? しっ、失礼しましたァーーーッ!」
千切れんばかりに背筋を伸ばし、引きつり顔で敬礼すると、軍曹は穏やかに微笑み、
「あなた方の対応は至極当然です。聴取したい時は、いつでも王宮へ連絡して来て下さい」
「おっ、お気遣い感謝いたしまぁす! でぇ、ではッ!」
かしこまって敬礼し、ひったくり男をパトカーの後部座席に押し込み、
「ホラッ! さっさと乗らんか!」
焦ってグイグイ奥へ押しやると、
「イテテ! 押すんじゃねぇよ! ケッ、何が女王陛下だ! 俺みたいな小物を捕まえてる暇があったら、与党議員を捕まえろってんだ!」
マリアを卑しめる男に、軍曹は瞬間キレ。
「貴様、どう言う意味だァ!」
詰め寄ると、男は何食わぬ顔でソッポを向き、
「さぁ~な」
「き、貴様ァ~~~」
怒りを募らせるも、年配の警察官はひったくり男を嘲笑う様に、
「ハッハッハ、捕まったひがみですよ。気にする事もありません。では我々はこれで!」
敬礼するとパトカーに乗り込み、去って行った。
「…………」
一抹の不安を覚え、怪訝な顔して消え行くパトカーの背を見つめる軍曹。
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