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4.偽りの新天地の章-9
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呆然と佇むジゼと、したり顔で笑う軍曹。
そこはジゼの「見た目年齢」からは幾分早い感じのする、お姉さん的オシャレ服を売るショップであった。
「(車での)移動中、目が釘付けになっていたでしょう?」
「///!」
見られていた事に驚くと同時に、気恥ずかしさから赤面して声も出ない。
「へぇ~ジゼって、オシャレに興味あったんだだな。白衣に、ベストに、軍用ブーツ以外は興味ないと思ってたよ」
意外そうな顔するヤマトに、軍曹は「甘いですね」とジェスチャー。
「女子を侮ってはいけませんよ、ヤマト准尉殿」
「俺の軍籍時代の階級……どうして?」
「無自覚だったかも知れませんが、准尉殿の「戦績」は有名だったんですよ」
『親の七光り』と揶揄されていた事は知っていたが、正当な評価も受けていた事は、ヤマトにとって意外な事実であった。
「さぁジゼさん、入って下さい! 出会いを祝して、私からのプレゼントです!」
ショップへ入って行く軍曹とジゼ、そして店の前にポツンと残されるヤマト。
「軍曹……俺には?」
入店したジゼは「着せ替え人形」状態。
「お客様には、コチラがお似合いでは?」
「イヤイヤ、ジゼさんには、コッチでしょう!」
ショップ店員と軍曹の手によるファッションショーが繰り広げられ、最初は抵抗していたジゼも、もはやされるがまま。
ヤマトは暖かい日差しの射しこむ窓辺の席に座り、
(ジゼのヤツ、二人に圧倒されっ放しだなぁ。軍曹は……本当、楽しそうだなぁ……)
微笑ましく二人を眺めた。
※ ※ ※
いたる所から黒煙が上がり、太陽と青空を黒く覆い隠すどこかの町。
煙を上げるビル群は炎上し、半壊。
ともなく甲高い音が長く尾を引き、徐々に迫ると着弾して大爆発。
鳴り止まぬ銃撃音と爆裂音。
赤々と燃え盛る家々。
倒壊した家屋の下敷きにされ、こと切れた母親の傍らで泣き叫ぶ、年端も行かぬ女の子。
遠くで誰かが呼ぶ声がする。
※ ※ ※
「……尉……准尉! ヤマト准尉殿ォ!」
軍曹の声にハッと目覚めるヤマト。
心地良い窓辺の暖かさに、居眠りしていた様である。
しかし顔色の悪さに軍曹は顔を覗き込み、
「どうかしましたか?」
「い、いや……何でもないです……」
不穏な予感が脳裏をよぎるも、笑ってお茶を濁すと、
「では改めまして准尉殿ぉ! コチラを、ご覧下さぁい!」
軍曹がサッと身を翻し、背後に隠されていたジゼが姿を現した。
恥ずかしそうに赤面するジゼ。
足下には、甲の部分がひも状になった夏用のミュールを履き、淡いブルーを基調とした膝上丈のサマーワンピースを纏い立っていたが、首元のネックレスがドッグタグのままである事が、なんともジゼらしかった。
「ど、どうかな……?」
華奢な両肩を露わにナチュラルメイクもしてもらい、ツインテールを揺らしてはにかむジゼ。
(か、かわいい……)
かける言葉も忘れて見とれていると、軍曹がニヤリと肘でつき、
「どうですか准尉殿ぉ、ご感想はぁ?」
「えぇ!? いや、えとぉ、そのぉ!」
我に返り狼狽すると、突如店員が、
「おっ、お客様ぁ! 鼻血! 鼻血ィ!」
ティッシュボックスを手に、ヤマトの元へ駆け寄った。
「えっ!?」
とっさに上を向き、手で鼻を覆い、店員からティッシュを貰う姿に軍曹がからかい半分、
「准尉殿ぉ、いけませんねぇ~やましい想像ですかなぁ?」
「ちっ、違ッ! 窓際で寝て暑さにやられてぇ! ジゼ、これは違う、違うんだぁ!」
耳まで真っ赤なジゼは右手を大きく振りかぶり、
「ヤマトのヘンタァーーーイ!」
パァン!
そこはジゼの「見た目年齢」からは幾分早い感じのする、お姉さん的オシャレ服を売るショップであった。
「(車での)移動中、目が釘付けになっていたでしょう?」
「///!」
見られていた事に驚くと同時に、気恥ずかしさから赤面して声も出ない。
「へぇ~ジゼって、オシャレに興味あったんだだな。白衣に、ベストに、軍用ブーツ以外は興味ないと思ってたよ」
意外そうな顔するヤマトに、軍曹は「甘いですね」とジェスチャー。
「女子を侮ってはいけませんよ、ヤマト准尉殿」
「俺の軍籍時代の階級……どうして?」
「無自覚だったかも知れませんが、准尉殿の「戦績」は有名だったんですよ」
『親の七光り』と揶揄されていた事は知っていたが、正当な評価も受けていた事は、ヤマトにとって意外な事実であった。
「さぁジゼさん、入って下さい! 出会いを祝して、私からのプレゼントです!」
ショップへ入って行く軍曹とジゼ、そして店の前にポツンと残されるヤマト。
「軍曹……俺には?」
入店したジゼは「着せ替え人形」状態。
「お客様には、コチラがお似合いでは?」
「イヤイヤ、ジゼさんには、コッチでしょう!」
ショップ店員と軍曹の手によるファッションショーが繰り広げられ、最初は抵抗していたジゼも、もはやされるがまま。
ヤマトは暖かい日差しの射しこむ窓辺の席に座り、
(ジゼのヤツ、二人に圧倒されっ放しだなぁ。軍曹は……本当、楽しそうだなぁ……)
微笑ましく二人を眺めた。
※ ※ ※
いたる所から黒煙が上がり、太陽と青空を黒く覆い隠すどこかの町。
煙を上げるビル群は炎上し、半壊。
ともなく甲高い音が長く尾を引き、徐々に迫ると着弾して大爆発。
鳴り止まぬ銃撃音と爆裂音。
赤々と燃え盛る家々。
倒壊した家屋の下敷きにされ、こと切れた母親の傍らで泣き叫ぶ、年端も行かぬ女の子。
遠くで誰かが呼ぶ声がする。
※ ※ ※
「……尉……准尉! ヤマト准尉殿ォ!」
軍曹の声にハッと目覚めるヤマト。
心地良い窓辺の暖かさに、居眠りしていた様である。
しかし顔色の悪さに軍曹は顔を覗き込み、
「どうかしましたか?」
「い、いや……何でもないです……」
不穏な予感が脳裏をよぎるも、笑ってお茶を濁すと、
「では改めまして准尉殿ぉ! コチラを、ご覧下さぁい!」
軍曹がサッと身を翻し、背後に隠されていたジゼが姿を現した。
恥ずかしそうに赤面するジゼ。
足下には、甲の部分がひも状になった夏用のミュールを履き、淡いブルーを基調とした膝上丈のサマーワンピースを纏い立っていたが、首元のネックレスがドッグタグのままである事が、なんともジゼらしかった。
「ど、どうかな……?」
華奢な両肩を露わにナチュラルメイクもしてもらい、ツインテールを揺らしてはにかむジゼ。
(か、かわいい……)
かける言葉も忘れて見とれていると、軍曹がニヤリと肘でつき、
「どうですか准尉殿ぉ、ご感想はぁ?」
「えぇ!? いや、えとぉ、そのぉ!」
我に返り狼狽すると、突如店員が、
「おっ、お客様ぁ! 鼻血! 鼻血ィ!」
ティッシュボックスを手に、ヤマトの元へ駆け寄った。
「えっ!?」
とっさに上を向き、手で鼻を覆い、店員からティッシュを貰う姿に軍曹がからかい半分、
「准尉殿ぉ、いけませんねぇ~やましい想像ですかなぁ?」
「ちっ、違ッ! 窓際で寝て暑さにやられてぇ! ジゼ、これは違う、違うんだぁ!」
耳まで真っ赤なジゼは右手を大きく振りかぶり、
「ヤマトのヘンタァーーーイ!」
パァン!
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