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青木 森

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3.旅立ちの章-30

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 女子しか居ないブリッジに漂う、仄暗く、不穏な空気。
 発信元は自席でうつむくジゼ。
 休憩をもらい笑顔で飛び出して行った筈が、数分経たずに戻り、この有様である。
 ナタリーでさえ接触を避け、遠巻きにチラチラと様子を窺うのみで、シセもだんまり。
 堪らずクリストファーはソフィアを手招き。
 ジゼに聞こえない様に注意を払いつつ、
(ちょっと何とかして下さりませんの、この空気。士気にかかわりますわぁ。副長でしょ)
(こ、こんな時だけズルイわよぅ)
 女子四人、どうしたものかと考えあぐねていると、ソフィアのヘッドセットが鳴り、
「は、ハイ、ソフィアです。あ、ブレイク?」
 二言三言交わすと事態を把握、ナタリーを呼び寄せ、シセとも会話を共有出来る様にヘッドセットを操作。
 ソフィア、クリストファー、ナタリー、ブレイク、シセは小声で対策を相談し、意見の一致を見て頷き合うと、丁度良く、事の発生源であるヤマトがブリッジ入り口に立った。
「調査班ヤマト、ジゼ通信員に用件があって参りました」
 しかしうつむくジゼは、振り返りもしない。
 するとソフィアがコホンと咳払いを一つ。
「ブレイクより緊急で、前部上甲板に来なさいとの事です」
「え? あ、いや、その隊長からブリッジに行くようにって……」
「復唱は!」
「はっ、ハイッ! これより前部上甲板へ移動しますぅ!」
 敬礼し、足早に去って行った。
 ジゼは背中に遠ざかるヤマトの気配を感じつつ、今は会いたくなかった筈が寂しい想いに囚われ、悲し気なため息を吐いた。
(何だろう……この気持ち……)
 理解不能の胸の苦しみに視線を落とすと、
「ジゼさん」
「ひゃおぅ!」
 鼻先触れそうな距離からいきなり名前を呼ばれ、思わずヘンな声を上げて振り向いた。
「そ、そふぃあ……さん?」
 微笑むソフィア。
「?」
「胸の奥が、キューって苦しいのでしょ?」
「え? どうしてそれを……」
「うふふふ。分かるわよ。それはね……」
「それは?」
「「嫉妬」よ」
「しっと……シット? 「ちくしょう」?」
「英語じゃないわ。ヤマト君をみんなに取られて、寂しいって言う気持ち」
「さっ、寂し!? わ、私がぁ!?」
 自覚症状は無くも心はウソを吐けず、ジゼは顔を真っ赤に、
「ち、違ッ!」
「スキなんでしょう、ヤマト君の事が」
「す、そ、しょれは、あくもで家族としてであったぇ!」
「良いのかなぁ~」
「な、何が!?」
「そんなにツンツンしてると……」
「と?」
「誰かに取られちゃうわよぉ~~~」
「取られぇ!?」
 その様な事など考えもしなかったジゼは酷くショックを受け、ガクリと首を垂れた。
「あ……」
(急所を突き過ぎた!)
 ソフィアは、クリストファー達の責める様な視線に慌て、
「だ、だからね、浮島で「女子力」の高い所を見せつけてヤマト君を振り向かせましょ?」
「浮島で? 女子力??」
「そう! 私達が協力するわ!」
 一斉に立ち上がり、ドヤ顔で後光を放つ女子クルー達。

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