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青木 森

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3.旅立ちの章-28

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 船が次第に速度を落とす中、ブリッジの艦内スピーカからシセの声が。
「副長殿、錨は下ろさなくて結構です。シセが揺れを計測、スクリューとスラスター、ラダーを微細コントロールして、乗艦し易い様にしますから」
 シセの提案に、ソフィアはチラリと艦長にアイコンタクト。
 頷き、了承を得た事を確認し、
「ブレイク、今の話は聞こえて?」
 洋上のバイクの上で、ブレイクはニヤリ。
「面白いじゃないかい。一応気には留めとくよ! オマエ達も聞いたねぇーーー!」
「「「あいよ姐さぁん!」」」
「了解しました!」
 マシューとルーク、ダニエル、そしてヤマトの声が返ると、
「ソフィア、後部ハッチを開けとくれぇ!」
 ブレイク達は、徐々に弱まりつつあるも、ガルシアが後方に伸ばす引き波に注意を払いつつ、後部ハッチへと移動、次第に開く扉を前に、
「行くよオマエ達ィ!」
「「「ハイよ!」」」
「了解!」
 五人はアクセルを開き加速。
 バイクごと船内へ滑り込み、用心するまでもなく容易に乗艦を果たした。
 ニッと笑うブレイクは上機嫌でヘッドセットに手を掛け、
「乗ったぜぇ、ソフィア! シセェ、アンタ大したもんだよ! 凪(なぎ)に投錨してるかと思った位さぁ!」
 するとシセは自慢気に、
「造作ないでぇす。どうですか、ジゼ姉様ぁ! シセを褒めて下さぁい!」
 しかし、あしらう様にプイッと横を向かれ、落ち込むかと思いきや、
「はぁ~そんな冷たい態度のジゼ姉様も、堪りませぇ~ん!」
「…………」
 引き気味のジゼに、ブリッジクルー達が同情するかの様な苦笑いを浮かべる中、ナタリーが突如立ち上がり、
「ジゼちゃんは渡さないっスぅ!」
 立ちはだかったかと思うと、
「ジゼぇちゃ~~~ん!」
 ここぞとばかり、デレ顔でジゼに抱き付き頬擦り。
 非常に、非常に迷惑そうな顔で押し退けようとするジゼ。
「キィーーー! ジゼ姉様から離れなさい! このガリガリ女ァ!」
「はっはぁ~~~! 聞こえないっスねぇ~~~! ジゼちゅわぁ~~~ん♪」
 見せつける様に、執拗に頬擦りして「勝ち」を誇っていたが、急に背筋がゾクリッ。
 ゆ~~~っくりと振り返ると、そこには鬼の形相で見下ろすソフィアの姿が。
「アハッ、アハッ、アハハハハ……」
 ばつが悪そうに笑って誤魔化し、自席に戻るナタリー。
 ソフィアはため息交じり一息吐くと、キャプテンシートに座る艦長にタブレット端末を手渡し、
「艦長、各班からの在庫状況、及び装備品などの備蓄状況の報告がまとまりました」
「うむ。御苦労」
 画面をタップ。
 何かに気付いた艦長が口にするより先、
「お察しの通りです、艦長。次の依頼の事もありますし、ハワイはデータの無い海域です。何が起きるか分かりませんので、一度補給を行った方が良いかと……」
「うむ」
 艦長の同意を確認すると、
「ナタリー、「浮島」からスケージュールは届いていますか?」
「確認して見るっスぅ」
 ナタリーがキーボードを弾き始めるより先にシセが、
「届いてますよ、副長殿と艦長殿。それと航海長と操舵長の端末にもスケジュールを送っておきました」
「ありがとう、シセ」
 ソフィアが微笑むと、ナタリーが悔しげに、
「ウチの仕事を取らないで欲しいっスぅ!」
「貴方がボヤボヤしているからですぅ」
「むぅくくくぅ~~~」
「ふっふっふっ」
 ナタリーとシセ、新たな女同士の戦いの予感。
 しかし諍いの元となっているジゼは、二人の争いを気にする素振りも見せず、
「ソフィア副長、「浮島」って何ですか?」
「え? あぁ~それは……」
 チラリと艦長を見ると、艦長は帽子のツバで顔を隠し、意図を察したソフィアはクスッと微笑み、
「行ってからのお楽しみ、だそうよぉ」
「?」
 ブリッジクルー達も艦長の遊び心に乗っかり、イタズラっぽくニヤッと笑った。

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