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3.旅立ちの章-12
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詳細までは聞いた事がなかったジゼも身を乗り出し、
「それはどんな作戦だったの?」
ヤマトは静かに頷くと、
「外見が子供にしか見えない俺に旅行者を装わせて村に単独潜入、化学兵器生産工場を事故に見せかけ破壊して証拠を曝すと同時に、世界世論を味方につけ、軍事侵攻しようとしてたんだ。あの島では、その潜入シミュレーションをする予定になってた」
「で、でもヤマト、そんな事したら関係ない村の人達まで……」
「バラ撒かれた毒ガスで大勢命を落とす事になってたと思う。そして軍には、例え失敗したとしても、俺一人の命で済むなら安い物だと思われてたらしい」
呆れた様に笑って見せると、
「そう言う事なの……」
ソフィアは得心が行った様に呟き、
「ヤマト君。この艦は正式には未だアメリカ海軍所属なの。そんな私達が何故、軍からの報復を免れていると思う?」
「「?」」
「この艦にはアメリカ軍にとって都合の悪い極秘データが保存されているの。内容は艦長しか知らないのだけれど、ヤマト君に関連した、表に出たら「世界各国からの批判は免れないデータ」だとは聞いていたわ。だから迂闊に手を出して来れないのだとも」
「「?」」
「データの内容を知れば、私達まで命を狙われる可能性があるから黙っていらしたのね」
「えぇ!? ソレってマズイんじゃ!?」
「ちょっとヤマトどうしてくれるのぉ! 私も聞いちゃったじゃない!」
ヤマトの胸倉を掴み上げ詰め寄るジゼに対し、
「聞かなかった事にしておけば大丈夫よ」
ソフィアは平然と、大人の余裕の笑み。
お嬢様な見た目と相反する意外な一面に、ヤマトとジゼが目を丸くするも、
「では契約の話に戻しましょう。それで、あなた達はどこで下艦したいの?」
二人は顔を見合わせ、
「「ハワイです!」」
「ハワイ?」
「はい。昔、ジェイソンと母さんの三人で暮らした所です。と言っても、俺が知ってるのは軍の施設の中だけで、外はあまり知らないんですけどね」
笑って見せるヤマトであったが、ソフィアが表情を曇らせ、
「そう……あなた達は今のハワイがどうなっているか……知らないのね……」
「「へっ?」」
「確認した者がいないから、どこまで本当の話か分からないのだけど……あの戦争でハワイ島以外、消滅したそうよ。残ったハワイ島も、相当なダメージを受けたらしいと聞いたわ」
ハワイにはアメリカ軍の基地があり、アメリカ本土からアジアに向けての重要な中継基地と位置づけらていた。故にひとたび戦争が起きれば目を付けられるのは必至であり、必然とも言える。
広島に落とされた原爆は十五キロトンと言われているが、この戦争では海兵隊の基地のあったオアフ島を中心に、一発がその三千倍以上に及ぶ、五万キロトン以上の核弾頭が何発も着弾したのである。
かつて「南国の楽園」とまで呼ばれた八つの大きな島と、百以上からなる美しい小島群は一瞬のうちに気化、焦土と化し、今更何も無くなった放射能まみれの島に、わざわざ足を踏み入れ者もおらず、その存在すら人々の記憶の中から忘れ去られつつあった。
ヤマトとジゼは静かに頷き合うと、
「それでも俺達は、行かないといけない気がするんです」
何故そう思ったのか、感じたのかは二人にも分からなかった。
しかしこれが運命的な引き寄せである事を、二人はまだ知らない。
死と絶望のみが支配する島への上陸を熱望しているとは思えない、真っ直ぐな眼差しに、
「そう……」
ソフィアは悲し気に視線を落とすも、不穏な空気を拭い去るかの様な笑顔を上げ、
「乗艦中の業務については、ジゼさんがブリッジ、ヤマト君は……おいおい考えましょう。
何か質問はあるかしら?」
ジゼが首を横に振るも、ヤマトは何か言いたげな素振りを見せた。
「ヤマト君、何かあるの?」
優しく微笑むと、
「その……」
口ごもりながら、
「『恩人』って……どういう意味……なんですか?」
「…………」
急に顔色の変わるソフィアに、ヤマトは慌て、
「あっ、いえ、いいんです! 忘れてください!」
ジゼはすかさず肘打ちし、
「女性に根掘り葉掘り聞くなんて失礼よ!」
「イテテ……そ、そんなつもりじゃ……」
脇腹を押さえると、ソフィアは小さく息を吐き、ニコリ。
「良いのよ。いずれ知られる話だし、二人にとっても無関係な話ではないから……」
話は十数年前にさかのぼる。
「それはどんな作戦だったの?」
ヤマトは静かに頷くと、
「外見が子供にしか見えない俺に旅行者を装わせて村に単独潜入、化学兵器生産工場を事故に見せかけ破壊して証拠を曝すと同時に、世界世論を味方につけ、軍事侵攻しようとしてたんだ。あの島では、その潜入シミュレーションをする予定になってた」
「で、でもヤマト、そんな事したら関係ない村の人達まで……」
「バラ撒かれた毒ガスで大勢命を落とす事になってたと思う。そして軍には、例え失敗したとしても、俺一人の命で済むなら安い物だと思われてたらしい」
呆れた様に笑って見せると、
「そう言う事なの……」
ソフィアは得心が行った様に呟き、
「ヤマト君。この艦は正式には未だアメリカ海軍所属なの。そんな私達が何故、軍からの報復を免れていると思う?」
「「?」」
「この艦にはアメリカ軍にとって都合の悪い極秘データが保存されているの。内容は艦長しか知らないのだけれど、ヤマト君に関連した、表に出たら「世界各国からの批判は免れないデータ」だとは聞いていたわ。だから迂闊に手を出して来れないのだとも」
「「?」」
「データの内容を知れば、私達まで命を狙われる可能性があるから黙っていらしたのね」
「えぇ!? ソレってマズイんじゃ!?」
「ちょっとヤマトどうしてくれるのぉ! 私も聞いちゃったじゃない!」
ヤマトの胸倉を掴み上げ詰め寄るジゼに対し、
「聞かなかった事にしておけば大丈夫よ」
ソフィアは平然と、大人の余裕の笑み。
お嬢様な見た目と相反する意外な一面に、ヤマトとジゼが目を丸くするも、
「では契約の話に戻しましょう。それで、あなた達はどこで下艦したいの?」
二人は顔を見合わせ、
「「ハワイです!」」
「ハワイ?」
「はい。昔、ジェイソンと母さんの三人で暮らした所です。と言っても、俺が知ってるのは軍の施設の中だけで、外はあまり知らないんですけどね」
笑って見せるヤマトであったが、ソフィアが表情を曇らせ、
「そう……あなた達は今のハワイがどうなっているか……知らないのね……」
「「へっ?」」
「確認した者がいないから、どこまで本当の話か分からないのだけど……あの戦争でハワイ島以外、消滅したそうよ。残ったハワイ島も、相当なダメージを受けたらしいと聞いたわ」
ハワイにはアメリカ軍の基地があり、アメリカ本土からアジアに向けての重要な中継基地と位置づけらていた。故にひとたび戦争が起きれば目を付けられるのは必至であり、必然とも言える。
広島に落とされた原爆は十五キロトンと言われているが、この戦争では海兵隊の基地のあったオアフ島を中心に、一発がその三千倍以上に及ぶ、五万キロトン以上の核弾頭が何発も着弾したのである。
かつて「南国の楽園」とまで呼ばれた八つの大きな島と、百以上からなる美しい小島群は一瞬のうちに気化、焦土と化し、今更何も無くなった放射能まみれの島に、わざわざ足を踏み入れ者もおらず、その存在すら人々の記憶の中から忘れ去られつつあった。
ヤマトとジゼは静かに頷き合うと、
「それでも俺達は、行かないといけない気がするんです」
何故そう思ったのか、感じたのかは二人にも分からなかった。
しかしこれが運命的な引き寄せである事を、二人はまだ知らない。
死と絶望のみが支配する島への上陸を熱望しているとは思えない、真っ直ぐな眼差しに、
「そう……」
ソフィアは悲し気に視線を落とすも、不穏な空気を拭い去るかの様な笑顔を上げ、
「乗艦中の業務については、ジゼさんがブリッジ、ヤマト君は……おいおい考えましょう。
何か質問はあるかしら?」
ジゼが首を横に振るも、ヤマトは何か言いたげな素振りを見せた。
「ヤマト君、何かあるの?」
優しく微笑むと、
「その……」
口ごもりながら、
「『恩人』って……どういう意味……なんですか?」
「…………」
急に顔色の変わるソフィアに、ヤマトは慌て、
「あっ、いえ、いいんです! 忘れてください!」
ジゼはすかさず肘打ちし、
「女性に根掘り葉掘り聞くなんて失礼よ!」
「イテテ……そ、そんなつもりじゃ……」
脇腹を押さえると、ソフィアは小さく息を吐き、ニコリ。
「良いのよ。いずれ知られる話だし、二人にとっても無関係な話ではないから……」
話は十数年前にさかのぼる。
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