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青木 森

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3.旅立ちの章-8

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 まさに瞬殺。
 唖然とするガルシアクルー達の視線の先、関節を後ろ手に決められ、上甲板にうつ伏せにされ、身動き一つ出来ないマシューとルーク。
 圧倒的な力量差である。
「今の動き……ウソ、だろぉ……?」
「姐御と同じぃ……!?」
 秒殺された事より、ヤマトとジゼが見せた挙動に驚きを隠せない二人。
 予め断っておくが、二人は決して弱い兵士ではない。
 二人は核戦争後の混沌としたこの世界において、ブレイクと共に数々の死線をくぐり抜け、この船の危機も幾度となく救い生き延びて来た、人格は一先ず置くとしても、「猛者」と呼ぶにふさわしい兵士達である。
 その事はガルシアクルーの誰もが一番よく分かっていた。そして分かっていたがゆえ、二人が何も出来ずに制圧された現実に絶句したのである。
 モニタ越しとは言え、実力の一端を既に垣間見た筈のソフィアでさえ、目の当たりにした二人の戦闘力の高さに言葉を失っていた。
 クルー達が語る言葉を失う中、たった一人、違う思惑でヤマトとジゼを見つめる人物がいた。ブレイクである。
(古武術の足さばきを織り交ぜた、オリジナルのあの動き……やはりなぁ……)
 何かを確信したブレイクは、四人の下へ歩み寄り、
「勝者! ヤマトとジゼェーーーッ!」
 二人の勝利を宣言。
 途端に、爆発するが如き大歓声が一気に湧き上がった。
「すげぇーーーッ!」
「なんだ、あの二人は!」
「何が起きたんだ!」
「スゴイわ!」
「どうなってんだよ!」
 ブレイクは憂いなくニッと笑い、
「オマエ等の勝ちだ」
 顔を見合わすヤマトとジゼは頷き合い、警戒心を緩める事無く二人を解放すると、マシューとルークは座ったまま、抜け殻の様に黙ってうつむいた。
 数々の死闘の中で培ってきた「誇り」と「自信」を、ほんの一瞬、瞬きする程度の時間に打ち砕かれたのであるから、二人の落胆も当然と言える。
 ブレイクはこうなる事を見越していたのか、灰の様に精気が消え失せた二人の頭にポンと手を乗せると、口元に笑みを浮かべ、
「いっちょ前に何をショボ暮れてんだい、ガキ共ぉ。上には上が居るって事が、身を以て分かったろうさ。世界の広さをお知り。そして、もっともっと強いイイ漢になりなぁ!」
 悔しさから両眼を潤ます二人の頭を、優しくポンポン叩くとヤマトを見据え、
「良い勉強させてもらったよ。コイツ等、最近ちぃ~とばっか天狗になってたんでねぇ」
「「…………」」
「にしても、自然体から日本の古武術をアレンジした運足(うんそく)と、相手の力を利用する、受けから始まる「体さばき」と「決め」。いやぁ~実にお見事、ヤマト・トマソン・テイラー君」 ※運足(足の運び方)
「「!」」
 ニヤリと笑うブレイクに、瞬間的に身構えるヤマトとジゼ。
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