29 / 535
3.旅立ちの章-6
しおりを挟む
そこは簡易ベッドが設置してあったり、医薬品の入った棚が並ぶ『治療室』であった。
しかし漂って来たのは、消毒用と明らかに違うアルコールの強烈なニオイ。
思わず鼻をつまむジゼとヤマト。
「や、ヤマト……何このニオイィィィ」
「た、確かに軍艦内とは思えないなぁ……」
「あははは……そう言う意味ではなかったのだけど……」
苦笑いするソフィアは、机の上に上半身を投げ出す白衣の女性を呆れ顔で見つめた。
「オリビア……あなた、なんて有様なのぉ……」
年齢はソフィアより少し上くらいであろうか、ボリューム感のある艶やかな黒髪の隙間から美しい小顔がのぞくも、その顔は、無残にも二日酔いで青く歪んでいた。
そこへ五、六歳くらいの女の子がコップを持ってやって来た。
「オリビア! ふくちょうさんが「おきゃくさま」をつれてきてるのに、しっかりしてぇ!」
金切り声を上げると、
「あ、頭に響くぅ~~~。い、イサミ~み、水、お水ちょ~~~だ~~~い……」
「だらしないわねぇ~。もってきてるから、はい、のんでぇ!」
大人の女性は、幼女からコップを受け取り一口飲むと、
「スポーツドリンクじゃ~ん。あぁ~もうイサミってば本当に気が利くぅんだからぁ~」
幼女に抱きつき頬擦り。
「おさけくしゃい! 「ふくちょうさん」と「おきゃくさま」のまえよ、ちゃんとして! ごあいさつがおわったら、カトレア(花)に、おみずもあげるのよ!」
「はぁ~~~い!」
ユルイ笑顔で手を挙げ、イサミを開放した。
もはやどちらが大人か分からない状況に、ヤマトとジゼは苦笑い。
「あらぁ~噂には聞いていたけど、可愛い新人さんじゃなぁ~~~い」
すまし顔で足を組み換えし、今更出来る女をアピールするかの様にポーズを決め、
「私が船医のオリ、うっぷぅっ」
今にも吐きそうな青い顔して、両手で口を抑えた。
すかさずイサミが背中をさすり、
「ハイハイ。だいじょうぶぅですよぉ~~~」
「い、イサ……お願……さ、さすらないで……でぇ、でちゃ、うぷぅっ」
「「「…………」」」
色々ツッコミどころはあるが、グラマーな八頭身美人ではある。
とても話の出来る状態ではないオリビアに、ソフィアはため息一つ、
「彼女は船医のオリビア・マイヤーズで、この子は……」
「「ほごしゃ」のイサミでぇす! オリビアともども、よろしくおねがいしまぁす!」
丁寧にお辞儀をして見せた。
「俺はヤマト、こっちはジゼって言うんだ、よろしく。イサミちゃんはえらいなぁ」
感心しきりのヤマトがイサミの頭を撫でると、イサミは目を輝かせてヤマトを見上げた。
しかし背後に立つジゼから瞬間的に何かを感じキリっと睨む。
乙女センサーが反応、大人げなく睨み返すジゼ。
ヤマトの気付かぬ所で乙女のバトルが勃発する中、隣接する「キッズルーム」と書かれた部屋から、
「にぃちゃんたちをイジメたヤツらなんかと、ナニなかよくしてるんだよぉ!」
怒気を含んだ声に振り向くと、そこにはイサミと同い年くらいの男の子の姿が。
怒れる男の子は、背中に隠れる年下風の男の子を前に押し出し、
「ソウシ! おまえも、ナニかいってやれ!」
しかしソウシは今にも泣き出しそうな顔をして、男の子の背後に隠れてしまった。
「トシゾウ! ソウシ! ちゃんと、ごあいさつしてぇ!」
血のつながりは不明だが、イサミが長女の様である。
トシゾウは膨れ面でプイッと横を向き、
「イヤだ!」
絶対拒否の姿勢。
イサミはムッとし、
「ねてる「おんなのひと」の、オッパイさわろうとしたからでしょ!」
話の流れから、トシゾウはマシュー達が負かされた事に、腹を立てている様である。
膨れっ面のトシゾウはオリビア、ソフィア、ジゼの三人を見比べ、
「こんなに「ちっちゃい」の、さわるわけないだろぉ!」
「「「ん?」」」
オリビア(美乳)、ソフィア(巨乳)、そして……誠に遺憾ながら、残念なジゼ。
勝ち誇った様な笑みを見せるオリビアに、イラっとした顔をするジゼと、笑ってお茶を濁すソフィア。
すると怒れるイサミは流れに便乗、
「そうかもしれないけど!」
ジゼが落ち込むに十分な、不必要と思える前置きをした上で、
「れでぃーに、なんてこというの!」
トシゾウの頭をバシリ。
「なにすんだ!」
トシゾウも負けじと叩き返す。
「おう、やれやれぇ~」
青い顔したオリビアが煽り立て、
「何を言っているの、オリビア!」
ソフィアは取っ組み合う二人の間に割って入り、
「二人とも、そこまでよ!」
母親の様に諭した。
憤慨し、「フン!」と言わんばかりに背を向け合うイサミとトシゾウ。
ソフィアは長引きそうな気配に、
「や、ヤマトくん、ジゼさん、次の場所へ行きましょうか?」
すると不機嫌だったイサミが元気よく手を上げ、
「イサミもいく!」
「……イサミ、これはお仕事なの。あなたにも、お勉強と言うお仕事がまだあるでしょ?」
促すソフィアに対し、イサミが一枚うわ手。
「せんせいがこんなじゃ、べんきょうできないもん!」
顔面蒼白で机に上半身投げ出すオリビアを指さした。
しかし、残念ながらソフィアは更にその上、
「みんなはエライから、昨日の宿題の答え合わせを一人で出来るわよねぇ~?」
「「「えぇ~っ!」」」
一斉に不服声を上げる三人。
するとソフィアは、激しい怒りを「過剰な程の笑顔」で覆い隠し、
「自分の仕事しない子は、営倉にブチ込んじゃうぞぉ♪」
イサミ達は一瞬にして硬直。
「「「いっ、いぇす、まぁむぅ!」」」
引きつった表情で背筋を伸ばし敬礼すると、キッズルームの自席に駆け座りノートを開き、猛勉強を開始した。
「よろしい♪」
満足気に微笑むソフィアに、青い顔したオリビアは机に突っ伏したまま、
「あんたのソレ、ほんとにコワイから止めてぇ」
「そう?」
いつも通りの微笑みを見せるソフィアと、彼女が垣間見せた闇に「気を付けよう」と、心に固く誓うヤマトとジゼ。
しかし漂って来たのは、消毒用と明らかに違うアルコールの強烈なニオイ。
思わず鼻をつまむジゼとヤマト。
「や、ヤマト……何このニオイィィィ」
「た、確かに軍艦内とは思えないなぁ……」
「あははは……そう言う意味ではなかったのだけど……」
苦笑いするソフィアは、机の上に上半身を投げ出す白衣の女性を呆れ顔で見つめた。
「オリビア……あなた、なんて有様なのぉ……」
年齢はソフィアより少し上くらいであろうか、ボリューム感のある艶やかな黒髪の隙間から美しい小顔がのぞくも、その顔は、無残にも二日酔いで青く歪んでいた。
そこへ五、六歳くらいの女の子がコップを持ってやって来た。
「オリビア! ふくちょうさんが「おきゃくさま」をつれてきてるのに、しっかりしてぇ!」
金切り声を上げると、
「あ、頭に響くぅ~~~。い、イサミ~み、水、お水ちょ~~~だ~~~い……」
「だらしないわねぇ~。もってきてるから、はい、のんでぇ!」
大人の女性は、幼女からコップを受け取り一口飲むと、
「スポーツドリンクじゃ~ん。あぁ~もうイサミってば本当に気が利くぅんだからぁ~」
幼女に抱きつき頬擦り。
「おさけくしゃい! 「ふくちょうさん」と「おきゃくさま」のまえよ、ちゃんとして! ごあいさつがおわったら、カトレア(花)に、おみずもあげるのよ!」
「はぁ~~~い!」
ユルイ笑顔で手を挙げ、イサミを開放した。
もはやどちらが大人か分からない状況に、ヤマトとジゼは苦笑い。
「あらぁ~噂には聞いていたけど、可愛い新人さんじゃなぁ~~~い」
すまし顔で足を組み換えし、今更出来る女をアピールするかの様にポーズを決め、
「私が船医のオリ、うっぷぅっ」
今にも吐きそうな青い顔して、両手で口を抑えた。
すかさずイサミが背中をさすり、
「ハイハイ。だいじょうぶぅですよぉ~~~」
「い、イサ……お願……さ、さすらないで……でぇ、でちゃ、うぷぅっ」
「「「…………」」」
色々ツッコミどころはあるが、グラマーな八頭身美人ではある。
とても話の出来る状態ではないオリビアに、ソフィアはため息一つ、
「彼女は船医のオリビア・マイヤーズで、この子は……」
「「ほごしゃ」のイサミでぇす! オリビアともども、よろしくおねがいしまぁす!」
丁寧にお辞儀をして見せた。
「俺はヤマト、こっちはジゼって言うんだ、よろしく。イサミちゃんはえらいなぁ」
感心しきりのヤマトがイサミの頭を撫でると、イサミは目を輝かせてヤマトを見上げた。
しかし背後に立つジゼから瞬間的に何かを感じキリっと睨む。
乙女センサーが反応、大人げなく睨み返すジゼ。
ヤマトの気付かぬ所で乙女のバトルが勃発する中、隣接する「キッズルーム」と書かれた部屋から、
「にぃちゃんたちをイジメたヤツらなんかと、ナニなかよくしてるんだよぉ!」
怒気を含んだ声に振り向くと、そこにはイサミと同い年くらいの男の子の姿が。
怒れる男の子は、背中に隠れる年下風の男の子を前に押し出し、
「ソウシ! おまえも、ナニかいってやれ!」
しかしソウシは今にも泣き出しそうな顔をして、男の子の背後に隠れてしまった。
「トシゾウ! ソウシ! ちゃんと、ごあいさつしてぇ!」
血のつながりは不明だが、イサミが長女の様である。
トシゾウは膨れ面でプイッと横を向き、
「イヤだ!」
絶対拒否の姿勢。
イサミはムッとし、
「ねてる「おんなのひと」の、オッパイさわろうとしたからでしょ!」
話の流れから、トシゾウはマシュー達が負かされた事に、腹を立てている様である。
膨れっ面のトシゾウはオリビア、ソフィア、ジゼの三人を見比べ、
「こんなに「ちっちゃい」の、さわるわけないだろぉ!」
「「「ん?」」」
オリビア(美乳)、ソフィア(巨乳)、そして……誠に遺憾ながら、残念なジゼ。
勝ち誇った様な笑みを見せるオリビアに、イラっとした顔をするジゼと、笑ってお茶を濁すソフィア。
すると怒れるイサミは流れに便乗、
「そうかもしれないけど!」
ジゼが落ち込むに十分な、不必要と思える前置きをした上で、
「れでぃーに、なんてこというの!」
トシゾウの頭をバシリ。
「なにすんだ!」
トシゾウも負けじと叩き返す。
「おう、やれやれぇ~」
青い顔したオリビアが煽り立て、
「何を言っているの、オリビア!」
ソフィアは取っ組み合う二人の間に割って入り、
「二人とも、そこまでよ!」
母親の様に諭した。
憤慨し、「フン!」と言わんばかりに背を向け合うイサミとトシゾウ。
ソフィアは長引きそうな気配に、
「や、ヤマトくん、ジゼさん、次の場所へ行きましょうか?」
すると不機嫌だったイサミが元気よく手を上げ、
「イサミもいく!」
「……イサミ、これはお仕事なの。あなたにも、お勉強と言うお仕事がまだあるでしょ?」
促すソフィアに対し、イサミが一枚うわ手。
「せんせいがこんなじゃ、べんきょうできないもん!」
顔面蒼白で机に上半身投げ出すオリビアを指さした。
しかし、残念ながらソフィアは更にその上、
「みんなはエライから、昨日の宿題の答え合わせを一人で出来るわよねぇ~?」
「「「えぇ~っ!」」」
一斉に不服声を上げる三人。
するとソフィアは、激しい怒りを「過剰な程の笑顔」で覆い隠し、
「自分の仕事しない子は、営倉にブチ込んじゃうぞぉ♪」
イサミ達は一瞬にして硬直。
「「「いっ、いぇす、まぁむぅ!」」」
引きつった表情で背筋を伸ばし敬礼すると、キッズルームの自席に駆け座りノートを開き、猛勉強を開始した。
「よろしい♪」
満足気に微笑むソフィアに、青い顔したオリビアは机に突っ伏したまま、
「あんたのソレ、ほんとにコワイから止めてぇ」
「そう?」
いつも通りの微笑みを見せるソフィアと、彼女が垣間見せた闇に「気を付けよう」と、心に固く誓うヤマトとジゼ。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる