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2.邂逅と別れの章-3
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次の日の朝、小鳥のさえずりと優しい陽の光に包まれるジゼ。
突如カッと両目を見開き、
(起動前に、蓄積された経験データよりアップデータの作成を開始します)
(完了)
(アップデートを実行します)
(アップデータ適応の為、再起動を開始します)
見開いた両目から一瞬光が消え再び戻り、瞳孔が機械的に動き、瞬きを数回すると肌に感じる掛布団の温かさと心地良さに、思わず頬擦り。
(これは、言葉で、なんて表現すれば良いんだろう……)
穏やかな気持ちではありつつも、言葉として表現出来ないもどかしさを感じていると、
「起きたの?」
「?」
優しい声に横を向くと、そこにはエマの微笑みが。
「!? 一緒に寝ていたのですか? 人間は、これが普通なのですか?」
戸惑いを見せると、エマは左手で上掛けをはがし、
「これよ」
「!」
エマの上着の裾をしっかり掴んで離さない、ジゼの左手。
「ご、ごめんなさい! エマ・トマソンさん!」
慌てて手を離し起き上がり、恥ずかしそうにするも、エマは微笑みを浮かべたまま、ゆっくり上半身を起こし、
「いいのよ。それと……ジゼちゃんさえ良ければ「ママ」って呼んでぇ。呼んでくれるとぉ、嬉しいかなぁ~」
優しい笑顔に、ジゼは胸元を握りしめ、
(……胸の中が温かい……?)
新たに知る「感情」に戸惑いを抱きつつ、
「……あ、ありがとうございます……」
少し照れた様に顔を赤らめ頷いたが、自分の姿が目に入り驚いた。
いつの間に着替えさせられたのか、小さいドワーフハムスターのキャラクターがいくつも描かれた可愛いパジャマ姿に変わっていたのである。
慌てた様に部屋中を見回すジゼ。
「ど、どうしたのジゼちゃん!? 着ていた服? クローゼットに吊るしてあるわよぉ」
「!」
落ち着き、ホッとした様な表情を見せるジゼに、エマは少し残念そうに、
「パジャマ姿も可愛いのに……イヤだった?」
ジゼは首を激しく左右に振り、
「違う。あの服……パパとママが着ていた服に、似ているから……」
表情変化少なくうつむくと、心中を察したエマがそっと抱き寄せ、
「そう言う事なの……でも、もう大丈夫。今のあなたは、一人じゃないわ」
耳元で優しく囁くと、突然入り口の電動スライドドアが開き、
「オイッス! 起きたかぁ、お二人さん!」
「ジゼ、母さん、おはよう」
ジェイソンとヤマトが顔をのぞかせた。
バァフフッ!
顔面に枕を投げ付けられる男二人。
「ノック位しなさい! 年頃の女の子がいるのよ! 二人とも回れ右! ハウスゥ!」
「「ごめんなさぁ~い!」」
そそくさと退散。
「全くぅ! これだから男は!」
憤慨するエマに、ジゼは小首を傾げ、
「何故……そんなに怒っているのですか?」
「え!? あっ、ま、うん、そうね……ジゼちゃんは、そこから始めないとねぇ……」
困惑気味に笑って見せるエマと、不思議そうな顔をするジゼ。
エマは慣れた動きでベッドから車イスに移動すると、車輪を回して鏡台の前に移動。
「ジゼちゃ~ん、スリッパをはいて、ここに座って」
円柱形のチェストの座面をポンポン叩いて見せた。
頷き、ベッドから降りるジゼ。
足先が床に付き、冷たく固い感触に思わず身震い。
「冷たいでしょ?」
「つめ、たい……? これが……冷たい……」
しばし足元を見つめ噛み締める様に呟くと、ドワーフハムスターを模したスリッパにつま先を通し、鏡に向いてチェストに腰掛けた。
初めて目にする、自分の顔、姿、形。
「これが……私?」
鏡の中の自分を不思議そうに見つめるジゼ。
手で顔をなぞる様に撫でていると、エマはジゼの長い髪を櫛でとかしながら、
「可愛いでしょ~」
「かわいい? よく分かりません」
機械的な返答を返すジゼ。
「そう? ざぁ~んねん。でも、あなたはとぉ~っても可愛いのよ~。自信を持ちなさい」
「じしん……も、よく分かりません。理解する様に努めます」
ジゼの返事を聞くなり、エマは困った様なため息を一つ。
「こぉらぁ」
優しく怒り、ジゼの額を指でツンと一突き。
「はうっ」
額を抑えると、
「「です」、「ます」、なんて言い方を家族にしないの」
ウインクして見せた。
未だ表情変化の乏しいジゼは突かれた額を両手で抑え、少し考え、
「分かりま……分かった! エマママ!」
「う、う~ん……少ぉ~し違うんだけど……まぁ良いかぁ~。はい、髪のセットが終わったわよ。歯を磨いて、顔を洗って、着替えて朝ご飯にしましょ!」
立ち上がったジゼは、きれいにまとめられたツインテールを揺らしながら振り返り、
「ありがとう、エママ」
「エママ?」
「間違えました」
「良いんじゃない? 家族っぽくてぇ」
エマは微笑み、ジゼを優しく抱きしめた。
「エママ……」
「安らぎ」と言う言葉の意味を知るジゼ。
突如カッと両目を見開き、
(起動前に、蓄積された経験データよりアップデータの作成を開始します)
(完了)
(アップデートを実行します)
(アップデータ適応の為、再起動を開始します)
見開いた両目から一瞬光が消え再び戻り、瞳孔が機械的に動き、瞬きを数回すると肌に感じる掛布団の温かさと心地良さに、思わず頬擦り。
(これは、言葉で、なんて表現すれば良いんだろう……)
穏やかな気持ちではありつつも、言葉として表現出来ないもどかしさを感じていると、
「起きたの?」
「?」
優しい声に横を向くと、そこにはエマの微笑みが。
「!? 一緒に寝ていたのですか? 人間は、これが普通なのですか?」
戸惑いを見せると、エマは左手で上掛けをはがし、
「これよ」
「!」
エマの上着の裾をしっかり掴んで離さない、ジゼの左手。
「ご、ごめんなさい! エマ・トマソンさん!」
慌てて手を離し起き上がり、恥ずかしそうにするも、エマは微笑みを浮かべたまま、ゆっくり上半身を起こし、
「いいのよ。それと……ジゼちゃんさえ良ければ「ママ」って呼んでぇ。呼んでくれるとぉ、嬉しいかなぁ~」
優しい笑顔に、ジゼは胸元を握りしめ、
(……胸の中が温かい……?)
新たに知る「感情」に戸惑いを抱きつつ、
「……あ、ありがとうございます……」
少し照れた様に顔を赤らめ頷いたが、自分の姿が目に入り驚いた。
いつの間に着替えさせられたのか、小さいドワーフハムスターのキャラクターがいくつも描かれた可愛いパジャマ姿に変わっていたのである。
慌てた様に部屋中を見回すジゼ。
「ど、どうしたのジゼちゃん!? 着ていた服? クローゼットに吊るしてあるわよぉ」
「!」
落ち着き、ホッとした様な表情を見せるジゼに、エマは少し残念そうに、
「パジャマ姿も可愛いのに……イヤだった?」
ジゼは首を激しく左右に振り、
「違う。あの服……パパとママが着ていた服に、似ているから……」
表情変化少なくうつむくと、心中を察したエマがそっと抱き寄せ、
「そう言う事なの……でも、もう大丈夫。今のあなたは、一人じゃないわ」
耳元で優しく囁くと、突然入り口の電動スライドドアが開き、
「オイッス! 起きたかぁ、お二人さん!」
「ジゼ、母さん、おはよう」
ジェイソンとヤマトが顔をのぞかせた。
バァフフッ!
顔面に枕を投げ付けられる男二人。
「ノック位しなさい! 年頃の女の子がいるのよ! 二人とも回れ右! ハウスゥ!」
「「ごめんなさぁ~い!」」
そそくさと退散。
「全くぅ! これだから男は!」
憤慨するエマに、ジゼは小首を傾げ、
「何故……そんなに怒っているのですか?」
「え!? あっ、ま、うん、そうね……ジゼちゃんは、そこから始めないとねぇ……」
困惑気味に笑って見せるエマと、不思議そうな顔をするジゼ。
エマは慣れた動きでベッドから車イスに移動すると、車輪を回して鏡台の前に移動。
「ジゼちゃ~ん、スリッパをはいて、ここに座って」
円柱形のチェストの座面をポンポン叩いて見せた。
頷き、ベッドから降りるジゼ。
足先が床に付き、冷たく固い感触に思わず身震い。
「冷たいでしょ?」
「つめ、たい……? これが……冷たい……」
しばし足元を見つめ噛み締める様に呟くと、ドワーフハムスターを模したスリッパにつま先を通し、鏡に向いてチェストに腰掛けた。
初めて目にする、自分の顔、姿、形。
「これが……私?」
鏡の中の自分を不思議そうに見つめるジゼ。
手で顔をなぞる様に撫でていると、エマはジゼの長い髪を櫛でとかしながら、
「可愛いでしょ~」
「かわいい? よく分かりません」
機械的な返答を返すジゼ。
「そう? ざぁ~んねん。でも、あなたはとぉ~っても可愛いのよ~。自信を持ちなさい」
「じしん……も、よく分かりません。理解する様に努めます」
ジゼの返事を聞くなり、エマは困った様なため息を一つ。
「こぉらぁ」
優しく怒り、ジゼの額を指でツンと一突き。
「はうっ」
額を抑えると、
「「です」、「ます」、なんて言い方を家族にしないの」
ウインクして見せた。
未だ表情変化の乏しいジゼは突かれた額を両手で抑え、少し考え、
「分かりま……分かった! エマママ!」
「う、う~ん……少ぉ~し違うんだけど……まぁ良いかぁ~。はい、髪のセットが終わったわよ。歯を磨いて、顔を洗って、着替えて朝ご飯にしましょ!」
立ち上がったジゼは、きれいにまとめられたツインテールを揺らしながら振り返り、
「ありがとう、エママ」
「エママ?」
「間違えました」
「良いんじゃない? 家族っぽくてぇ」
エマは微笑み、ジゼを優しく抱きしめた。
「エママ……」
「安らぎ」と言う言葉の意味を知るジゼ。
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