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続章_71
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放課後の保健室―――
久々にメンバーが全員揃い、写真部の活動を再起動させるハヤテ達。
長テーブルにつくヒカリ、サクラ、ツバサ。
三人を前にするハヤテはホワイトボードの傍らに立ち、
「今日は三人に報告がある」
「「「?」」」
おもむろに、手にしたポスターをホワイトボードに広げて貼った。
『高校生 フォトコンテスト開催!』
「「「!」」」
「ただ撮ってるだけじゃ何だからぁな、コイツを目標に活動してみよう思う!」
「面白そうだねぇ、ハーくん!」
ノリノリのヒカリであったが、サクラとツバサは、
「つ、使い方を少し教わっただけだし、しばらく休部してたから無理だよぉ~」
「しょ、小官も自信無いでありますぅ!」
しかしハヤテは二人の不安など、どこ吹く風。
「大丈夫だよ。まだ締め切りまで余裕があるし。それに目標があった方が頑張れるだろ?」
「それはそうだけど……ねぇ、ツバサちゃん……」
「ですよね……サクラさん……」
二人が尚も尻込みすると、自席で事務仕事をしていた黄が振り返り、
「落選したって別にペナルティーがある訳じゃないんだ、何事も経験さぁ。それにプロから批評も貰えるかもしれないよ」
(何事も経験……確かにそうだけどぉ……)
サクラは不安気な顔したツバサと見合うと、お互いの意識を確認し合う様に頷き合い、
「や、やってみようか……ツバサちゃん……」
「は、ハイです……サクラさん……」
「じゃあ決まりィ!」
ヒカリはハヤテに親指を立てて見せ、ハヤテがにこやかに頷くと、黄はフッと小さく笑みを浮かべ、自席の書類へと目を移した。
早速カメラを持って保健室を出るハヤテ達。
ヒカリは校庭に出るなり、
「行って来るねぇ!」
「ちょ、ちょと待てヒカリィ!」
コンテストの規定内容も聞かずに、駆け出して行ってしまった。
「しょうがねぇなぁ~。まぁ今日は久々の部活だし、期間にも猶予があるからイイかぁ」
呆れ笑いのハヤテ。
サクラは運動部員で埋め尽くされた校庭を眺め、
「ハヤテくん、コンテストにはテーマとかあるの?」
「まぁな。ポスターには『高校生活のワンシーン』って、書いてあったなぁ」
「え? それだけぇ!?」
「まぁ確かに大雑把って言うか、丸投げ感アリアリだけど、逆に言えばそれだけ自由って事だから、自分の中で副題になるテーマを作って撮るのも手かもなぁ」
「例えば?」
「それは……」
言いかけたハヤテは言葉を呑み込みニカッと笑い、
「言ったら俺のテーマになるから、それも含めて考えてみなぁ」
「むぅ、ハヤテくんのケチィ」
仕方なく、テーマを求めて歩き出そうするサクラ。
ふと先程から何も言わないツバサが気に掛かり、
「ツバサちゃん、どうかしたの?」
振り向くと、ツバサはハッと正気に戻った顔をし、
「ひ、久々の学校で、ちょっと疲れてしまったみたいでありまぁす。朝に騒ぎ過ぎましたからぁ」
声の色で判断するまでも無く、顔は青白く、体調が優れない事を物語っていた。
「ツバサちゃん、大丈夫?」
「あはは……大丈夫ありますぅ」
「ツバサ、病み上がりなんだから無理を、」
ハヤテが声を掛けようとした瞬間、
『ファイトォーーーッ!』
『バッチコォーーーイッ!』
運動部が大きな掛け声を飛ばし合い、
「ヒィ!」
ツバサは小さな悲鳴を上げ、いきなり頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「「ツバサ(ちゃん)!」」
慌てて顔を覗き込む二人。
するとツバサの青紫色に変色した唇は、カタカタと小刻みに震えていた。
「ヒカリィーーーーーーーーーッ!」
ハヤテが大声を張り上げると、遠目からツバサの異変に気付いたヒカリが慌てて駆け戻って来た。
「ツバサちゃんだどうしたんだい!?」
「すみません、すみません、すみません、すみません、すみません、すみません!」
頭を抱えて謝るばかりのツバサ。
「一旦部室に戻ろう」
ハヤテはツバサを、ヒカリとサクラに支えさせ、保健室へと戻った。
「アイ先生!」
ハヤテが保健室の扉を開けると、
「あらぁあらぁ~早いわねぇ~~~」
自席から、おっとりアイモードで振り返る黄。
しかし担がれる様に戻って来たツバサの姿に、
「戸を閉めて、ベッドに寝かせなぁ!」
ツバサはヒカリとサクラの介助でゆっくりベッドに横たえながら、青い顔を手で覆い、
「すみません、すみません、すみません、すみません折角コンテストに向けて、」
「そんな事は良いんだよ、ツバサちゃん!」
「ツバサちゃん、体は大丈夫なのぉ!?」
ヒカリとサクラが不安げな顔で覗き込むと、
「いいからアンタ達はちょっと出てなぁ!」
黄はヒカリ、サクラ、ハヤテの三人をベッドから遠ざけると、仕切りのカーテンを引き、ツバサと二人だけの個室を作った。
久々にメンバーが全員揃い、写真部の活動を再起動させるハヤテ達。
長テーブルにつくヒカリ、サクラ、ツバサ。
三人を前にするハヤテはホワイトボードの傍らに立ち、
「今日は三人に報告がある」
「「「?」」」
おもむろに、手にしたポスターをホワイトボードに広げて貼った。
『高校生 フォトコンテスト開催!』
「「「!」」」
「ただ撮ってるだけじゃ何だからぁな、コイツを目標に活動してみよう思う!」
「面白そうだねぇ、ハーくん!」
ノリノリのヒカリであったが、サクラとツバサは、
「つ、使い方を少し教わっただけだし、しばらく休部してたから無理だよぉ~」
「しょ、小官も自信無いでありますぅ!」
しかしハヤテは二人の不安など、どこ吹く風。
「大丈夫だよ。まだ締め切りまで余裕があるし。それに目標があった方が頑張れるだろ?」
「それはそうだけど……ねぇ、ツバサちゃん……」
「ですよね……サクラさん……」
二人が尚も尻込みすると、自席で事務仕事をしていた黄が振り返り、
「落選したって別にペナルティーがある訳じゃないんだ、何事も経験さぁ。それにプロから批評も貰えるかもしれないよ」
(何事も経験……確かにそうだけどぉ……)
サクラは不安気な顔したツバサと見合うと、お互いの意識を確認し合う様に頷き合い、
「や、やってみようか……ツバサちゃん……」
「は、ハイです……サクラさん……」
「じゃあ決まりィ!」
ヒカリはハヤテに親指を立てて見せ、ハヤテがにこやかに頷くと、黄はフッと小さく笑みを浮かべ、自席の書類へと目を移した。
早速カメラを持って保健室を出るハヤテ達。
ヒカリは校庭に出るなり、
「行って来るねぇ!」
「ちょ、ちょと待てヒカリィ!」
コンテストの規定内容も聞かずに、駆け出して行ってしまった。
「しょうがねぇなぁ~。まぁ今日は久々の部活だし、期間にも猶予があるからイイかぁ」
呆れ笑いのハヤテ。
サクラは運動部員で埋め尽くされた校庭を眺め、
「ハヤテくん、コンテストにはテーマとかあるの?」
「まぁな。ポスターには『高校生活のワンシーン』って、書いてあったなぁ」
「え? それだけぇ!?」
「まぁ確かに大雑把って言うか、丸投げ感アリアリだけど、逆に言えばそれだけ自由って事だから、自分の中で副題になるテーマを作って撮るのも手かもなぁ」
「例えば?」
「それは……」
言いかけたハヤテは言葉を呑み込みニカッと笑い、
「言ったら俺のテーマになるから、それも含めて考えてみなぁ」
「むぅ、ハヤテくんのケチィ」
仕方なく、テーマを求めて歩き出そうするサクラ。
ふと先程から何も言わないツバサが気に掛かり、
「ツバサちゃん、どうかしたの?」
振り向くと、ツバサはハッと正気に戻った顔をし、
「ひ、久々の学校で、ちょっと疲れてしまったみたいでありまぁす。朝に騒ぎ過ぎましたからぁ」
声の色で判断するまでも無く、顔は青白く、体調が優れない事を物語っていた。
「ツバサちゃん、大丈夫?」
「あはは……大丈夫ありますぅ」
「ツバサ、病み上がりなんだから無理を、」
ハヤテが声を掛けようとした瞬間、
『ファイトォーーーッ!』
『バッチコォーーーイッ!』
運動部が大きな掛け声を飛ばし合い、
「ヒィ!」
ツバサは小さな悲鳴を上げ、いきなり頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「「ツバサ(ちゃん)!」」
慌てて顔を覗き込む二人。
するとツバサの青紫色に変色した唇は、カタカタと小刻みに震えていた。
「ヒカリィーーーーーーーーーッ!」
ハヤテが大声を張り上げると、遠目からツバサの異変に気付いたヒカリが慌てて駆け戻って来た。
「ツバサちゃんだどうしたんだい!?」
「すみません、すみません、すみません、すみません、すみません、すみません!」
頭を抱えて謝るばかりのツバサ。
「一旦部室に戻ろう」
ハヤテはツバサを、ヒカリとサクラに支えさせ、保健室へと戻った。
「アイ先生!」
ハヤテが保健室の扉を開けると、
「あらぁあらぁ~早いわねぇ~~~」
自席から、おっとりアイモードで振り返る黄。
しかし担がれる様に戻って来たツバサの姿に、
「戸を閉めて、ベッドに寝かせなぁ!」
ツバサはヒカリとサクラの介助でゆっくりベッドに横たえながら、青い顔を手で覆い、
「すみません、すみません、すみません、すみません折角コンテストに向けて、」
「そんな事は良いんだよ、ツバサちゃん!」
「ツバサちゃん、体は大丈夫なのぉ!?」
ヒカリとサクラが不安げな顔で覗き込むと、
「いいからアンタ達はちょっと出てなぁ!」
黄はヒカリ、サクラ、ハヤテの三人をベッドから遠ざけると、仕切りのカーテンを引き、ツバサと二人だけの個室を作った。
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