上 下
51 / 88

続章_49

しおりを挟む
 数週間後―――
 自主規制と言う形で、マスコミが学校に殺到する事はなくなったが、事件はハヤテ達の学生生活に、少なからず変化をもたらした。
 復帰目処の立たない生徒会会長ミズホと、副会長ハヤトに代わり、停滞する生徒会運営を滞りなく進める名目で、元生徒会長「新津屋」と、元副会長「南 加津佐」、そして「高岡 千穂」の三名が生徒会役員に返り咲いたのである。
 しかも部室に空きが無い事を理由に、あれ程生徒会に発足を阻まれていた「写真部」が、保健室の一部を部室として利用する事で認められたのである。
 保健室を部室に利用出来ないか画策したのはハヤテ。
 養護教諭アイこと黄を、宥めてすかして口説き落とし、ダメもとで申請した出した物が、あっさり許可が取れたのである。
 却下されるだろうと高を括っていた黄も、流石にこの事態は想定外であり、今更前言を撤回する訳にもいかず、保健室の一角の使用を渋々認めた経緯があった。
 約束を反古にすればハヤテ達がそれをネタに、次にどんな、更なる無茶を要求して来るか分からず、リスクの高い不要な借りを作る事を避けたのである。
 飾り気のない事務用イスに不服そうな顔して座る黄は、肘掛けに頬杖つき、
「オマエ等なぁ……前生徒会の嫌がらせをネタに今の生徒会を揺さぶれば、部室を当ててくれんだろうに、なんで保健室に居座んだい。アタシは養護教員であって、保母さんじゃないんだがねぇ」
 皮肉ると、
「そう言わないでおくれよ、アイ先生ぇ」
 ヒカリは申し訳なさげな笑みを浮かべ、
「それに生徒がワラワラしてた方が、他の生徒も相談しに来易いと思うんだ。ねぇ、ハーくん」
「ハーくん、言うな。まぁ写真部の活動は基本的に屋外が多いだろうしな。それと、あぁ言う策士連中を今後相手にするからには、貸しは作れる時に作っておいて、イニシアチブを握っとくに限るからなぁ」
「相変わらずアンタはあざといねぇ~」
 呆れ顔の黄に、
「褒め言葉として受け取っておくよぉ」
 不敵にフッと笑うハヤテ。
 ツバサはため息と一つ吐き、
「私、あんまり外に出たくないんでありますがぁ」
 暗い顔をすると、念願の写真部活動開始に有頂天気味のサクラはかつてない笑顔で、
「大丈夫だよ、ツバサちゃん! みんな一緒なら、きっと楽しいよぉ!」
「は……はいですぅ……」
 満面のサクラの笑顔に、反論の余地が無い事を悟ツバサ。
 にこやかなヒカリはハヤテ、サクラ、ツバサの顔を見回し、
「と、言う訳でぇ~」
 音頭を取ると、四人は不機嫌顔の黄に向かい、
「「「「アイ先生ぇ、よろしくお願いしまぁ~すぅ!」」」」
 笑顔で頭を下げ、
「ハイハイ、もぅ好きにおしぃ」
 黄は呆れ顔で手を振ると、机に向かい、事務作業を始めた。
 ニカッと笑うヒカリ。
 ハヤテ達の方に向き直り、
「先生からOKが出たよ! 早速ボク達の部室作りを始めよう!」
「「「オォーーー!」」」
 ハヤテ達は勝どきを上げ、部屋の片隅にまとめてあった機材の設置に取り掛かった。
 とは言え現代の写真部部室の設置作業。
 一昔前の様に暗室を作ったり、引き伸ばし機を設置したりする作業などはなく、部屋の隅に学校机を一台置いて、共用プリンターを置き、壁の前に置いたホワイトボードと対峙する様に長テーブルを一台置いて、人数分のパイプイスとノートパソコンを置いたら終了である。
 プリンターと壁の間に挟む様に置かれた、カメラ関係の雑誌と高画質印刷用紙が、唯一写真部の空気を漂わすにとどめていた。
 しかし念願の写真部活動開始に四人の表情は明るく、机に向かう黄は生き生きした四人の声を背に、フッと小さな笑みを浮かべつつ、仕事を続けた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ
恋愛
【1分先の未来を生きる言葉を口にしろ】 天野玖未(あまのくみ)飲食店勤務 玖の字が表す‘黒色の美しい石’の通りの容姿ではあるが、未来を見据えてはいない。言葉足らずで少々諦め癖のある23歳 須藤悠仁(すどうゆうじん) 東日本最大極道 須藤組若頭 暗闇にも光る黒い宝を見つけ、垂涎三尺…狙い始める 心に深い傷を持つ彼女が、信じられるものを手に入れるまでの……波乱の軌跡 そこには彼の底なしの愛があった… 作中の人名団体名等、全て架空のフィクションです また本作は違法行為等を推奨するものではありません

地獄行き

高下
ライト文芸
金も未来もない青少年たちの誤魔化しの脆い日常が友人の自殺をきっかけにゆっくり終わっていく話‬ 表紙イラスト:トーマさん(Twitter@the_ba97)

星渦のエンコーダー

山森むむむ
ライト文芸
繭(コクーン)というコックピットのような機械に入ることにより、体に埋め込まれたチップで精神を電脳世界に移行させることができる時代。世界は平和の中、現実ベースの身体能力とアバターの固有能力、そして電脳世界のありえない物理法則を利用して戦うレースゲーム、「ネオトラバース」が人気となっている。プロデビューし連戦連勝の戦績を誇る少年・東雲柳は、周囲からは順風満帆の人生を送っているかのように見えた。その心の断片を知る幼馴染の桐崎クリスタル(クリス)は彼を想う恋心に振り回される日々。しかしある日、試合中の柳が突然、激痛とフラッシュバックに襲われ倒れる。搬送先の病院で受けた治療のセッションは、彼を意のままに操ろうとする陰謀に繋がっていた。柳が競技から離れてしまうことを危惧して、クリスは自身もネオトラバース選手の道を志願する。 二人は名門・未来ノ島学園付属高専ネオトラバース部に入部するが、その青春は部活動だけでは終わらなかった。サスペンスとバーチャルリアリティスポーツバトル、学校生活の裏で繰り広げられる戦い、そしてクリスの一途な恋心。柳の抱える過去と大きな傷跡。数々の事件と彼らの心の動きが交錯する中、未来ノ島の日々は一体どう変わるのか?

【完結】その同僚、9,000万km遠方より来たる -真面目系女子は謎多き火星人と恋に落ちる-

未来屋 環
ライト文芸
――そう、その出逢いは私にとって、正に未知との遭遇でした。 或る会社の総務課で働く鈴木雪花(せつか)は、残業続きの毎日に嫌気が差していた。 そんな彼女に課長の浦河から告げられた提案は、何と火星人のマークを実習生として受け入れること! 勿論彼が火星人であるということは超機密事項。雪花はマークの指導員として仕事をこなそうとするが、日々色々なことが起こるもので……。 真面目で不器用な指導員雪花(地球人)と、優秀ながらも何かを抱えた実習生マーク(火星人)、そして二人を取り巻く人々が織りなすSF・お仕事・ラブストーリーです。 表紙イラスト制作:あき伽耶さん。

私と僕と夏休み、それから。

坂東さしま
ライト文芸
地元の高校に通う高校1年生の中村キコは、同じクラスで同じ委員会になった男子生徒から、突然「大っ嫌い」と言われる。しかし、なぜそう言われたのか、全く見当がつかない。 初夏から始まる青春短編。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルデイズ様にも掲載 ※すでに書き終えているので、順次アップします。

女装男子は百合乙女の夢を見るか? ✿【男の娘の女子校生活】学園一の美少女に付きまとわれて幼なじみの貞操が危なくなった。

千石杏香
ライト文芸
✿【好きな人が百合なら女の子になるしかない】 男子中学生・上原一冴(うえはら・かずさ)は陰キャでボッチだ。ある日のこと、学園一の美少女・鈴宮蘭(すずみや・らん)が女子とキスしているところを目撃する。蘭は同性愛者なのか――。こっそりと妹の制服を借りて始めた女装。鏡に映った自分は女子そのものだった。しかし、幼なじみ・東條菊花(とうじょう・きっか)に現場を取り押さえられる。 菊花に嵌められた一冴は、中学卒業後に女子校へ進学することが決まる。三年間、女子高生の「いちご」として生活し、女子寮で暮らさなければならない。 「女が女を好きになるはずがない」 女子しかいない学校で、男子だとバレていないなら、一冴は誰にも盗られない――そんな思惑を巡らせる菊花。 しかし女子寮には、「いちご」の正体が一冴だと知らない蘭がいた。それこそが修羅場の始まりだった。

処理中です...