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続章_44

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 数分後―――
 ヒカリ、サクラ、ハヤテ、三人の姿は、伊那路が運転する車中にあった。
 本来は自己責任として、走って学校へ向かうべき話であったが、ヒカリの体の事もあり、樹神の許しを得て車で学校へ向かっていたのである。
 車窓に流れる景色を、サクラは不安気に見つめ、
(大丈夫かなぁ……)
 すると、
「さくらちゃ~ん!」
「?」
 ヒカリの声に振り向くと、サクラの頬に人差し指がプスリ。
「あにぃするのぉ~」
 子供染みたイタズラに、ムッとするサクラであったが、当のヒカリはどこ吹く風。
「暗い顔をしてるからぁ~」
「え?」
「心配事?」
「う、うん。まぁ……」
 曖昧な返事を返すと、
「この時間なら間に合うから、大丈夫だよぉ」
 笑顔のヒカリに、
(それだけじゃないんだど……)
 内心思いつつ、ヘンな気遣いをさせてはいけないと思い、
「う、うん。そうだね」
 笑顔を返すと、ヒカリが急にニッと歯を見せ笑い、
「ウソ。本当は、放火された話で注目されそうなのが心配なんでしょ?」
「!」
 ハッとするサクラ。
(ヒカリちゃんには、かなわないなぁ……)
「気付いてたんだ」
 秘密にしようと思っていた自分を自嘲した笑顔を見せると、
「まぁ~ねぇ~♪ 友達だから」
「ありがとう」
 サクラは笑みを返したが、やはり不安は拭えず、
「気にしても、仕方が無いのは分かってるんだけど……」
 次第にうつむくと、
「大丈夫だよ! サクラちゃん!」
「え?」
「サクラちゃんには、ボクとハーくん、それにツバサちゃんだってついてる! ちょっかい出して来るヤツがいたら、ボク達三人が丸めてポイだよ!」
 笑って見せるヒカリと、助手席からチラリと笑みを送るハヤテ。
 二人の笑顔に支えられ、
「うん!」
 サクラは憂いを感じさせない笑顔を返した。

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