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続章_38

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 二人の少女の心の距離が縮まった夜から一夜明けた早朝―――
 調理場で慌ただしく朝食準備を始めるメイド達に混じり、メイド服に身を包み、仕事を手伝うサクラの姿があった。
「かなえさん、この料理はもう運んで良いんですか?」
 出来上がった料理の載るワゴンを指差すと、かなえと呼ばれたメイドの女性は静かな口調で、
「はい。ですがサクラ様、何度も申します通り、メイドの仕事はご自身の身が落ち着かれてからで構わないのですよ」
 火事により現金を含めた全てを失ったサクラは、樹神とヒカリの勧めで、この屋敷に住まう事になったのだが、その「お礼」と「生活費」、そして「自立した時の為の積み立て」とを兼ねて、見習いメイドとしてバイトをする事になったのである。
「ありがとうございます。でも、体を動かしていた方が気持ち的に楽なんで、大丈夫です!」
 憑き物が落ちた様な、スッキリとした笑顔を返すサクラ。
 当初、食事もメイド達と取ると言っていたサクラであったが、「ヒカリ様のご学友に、そこまでさせられない」と丁重に断りを言い渡され、食事はヒカリ達と取る事にはなっていた。
 やがて朝食が終わり、調理場でサクラが洗い物をしながらメイド達と談笑していると、ヒカリが顔をのぞかせ、
「みんな、お疲れ様でぇす!」
「「「ありがとうございます、お嬢様」」」
 メイド達が丁寧に頭を下げ、
「「「お嬢、おはようございます!」」」
 料理人達も明るい挨拶を返すと、調理場の責任者と思われる割烹着を纏った年配の男性が、角ばった顔に笑顔を浮かべ、
「おぅお嬢! 今日の飯は、どうだったい!」
「板長、今日もとっても美味しかったよ!」
「そうかい! ソイツは良かったぁ。ワァハッハッ」
 ヒカリの笑顔に、満足そうな笑い声を返した。
 するとヒカリは、
「ところでかなえさん、ちょっと良いかなぁ?」
 笑顔の中に微かな陰りを滲ませ、顔を見合わせるかなえとサクラ、そしてメイド達。
 かなえが静々とヒカリに歩み寄り、
「どういった御用向きでしょうか?」
 ヒカリは小声で、二言三言何かを耳打ち。
 得心が行ったように頷くかなえはサクラの方を向くと、
「サクラ様。ヒカリ様と共に、応接間へ行っていただけますか?」
「え? あっ、で、でもまだ洗い物が……」
 申し訳なさげに、残る洗い物の山に視線を送ったが、かなえ達は微笑み、
「メイドにとって、主様(あるじさま)の命が優先ですよ」
「そうなんだよぉ~。それにこれ位、私達だけで大丈夫だよぉ~」
「そうっス。ウチ等に任せるっスよ」
 サクラは笑顔の三人に背中を押され、
「ありがとうございます!」
 頭を下げると、
「じゃあ、サクラちゃんを借りるねぇ!」
 ヒカリはサクラの手を握り、
「行こう」
「うん」
 二人は調理場から去って行った。
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