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第十章
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ラディッシュの壊れかけの心を守る為、リンドウ、ヒレンと同様に、金狼グランの一団との一戦を覚悟したニプルウォートとカドウィードは彼に真意を悟られぬように、
『ここはカディとウチに任せるさぁ♪』
『マゴついてぇいんしたらぁ本隊が来てぇ「詰(つ)み」にぃなりぃんすぇ♪』
促された三人は「明るい物言いは気遣い」と理解した上で、
(((…………)))
二人の言い分は、頭では理解できていた。
目の前の合成獣たちが元「百人の勇者」と気付けていない三人にとって捉えていたのは「表側の意味だけ」ではあったが、既に階下に、実力不明な全身鎧と精鋭合成獣二十体を相手にリンドウとヒレンを残して来ている。
二人の安否が不明な中、更にニプルウォートとカドウィードを同様な戦場に、否、敵はリーダーに新生グランを据えた一団である。
階下より更なる過酷な戦場になるのは容易に想像でき、
《二人の意志を尊重するべきなのか?》
はたまた、
《申し出を却下するべきか?》
ラディッシュは迷いに迷った。
仲間を一人として失いたくなかったから。
仲間を失うかも知れない、恐怖。
ドロプウォートとの一戦がトラウマとして、心に影を落としていた。
(僕は、どうしたら良いんだ……)
混迷の闇の中、
『ラディ』
『兄貴ぃ』
導きの光が差すが如き優しい声が。
声の主はパストリスとターナップ。
二人が向ける笑顔に、
(仲間のチカラを信じろって、ことか……)
背中を押されたラディッシュは腹を括ると、
『ごめんニプル! カディ! 僕たちは先に行くよ!』
決意を口にした走り出しに、
「何で謝るのさぁ♪」
「ほんにぃ「任せた」と言う時宜にぃありぃんすぇ♪」
緊迫を迎える場面にありながら、軽やかに笑って送るニプルウォートとカドウィードであったが、
『行かせません!』
三人が向かう先に立ち塞がろうとする金狼グランと精鋭合成獣たち。
すかさずニプルウォートとカドウィードは、
勇者ラディッシュの恩恵を以て我らは戦う!
その身を白き輝きで包みながら猛突進、
『『邪魔は(させないさ・させぇんすぇ)!』』
行く手を阻もうと動き出した一団を薙ぎ払った。
しかし敵も然(さ)る者。
中世の七草の二人が側面から急襲を掛けたにも拘らず、
『『ッ!』』
瞬時に分散して攻撃を回避して見せた。
単なる「合成獣の群れ」とは一味違うところを披露するかのように。
((簡単にはいかない相手のよう(さぁ・ありぃんすなぁ)……))
苦闘を予感させる「開戦の口火」ではあったが、白き輝きを纏う二人は、
『『それでも負ける気は(しないさぁ・しぃんせぇんぇ)♪』』
その笑顔は強がりの類ではなく、確かな自信が。
根拠は、身に纏う「眩き白き輝き」にあった。
以前にラディッシュのチカラを纏って戦った時は「白銀の輝き」であったが、今の彼は数々の経験を経て「百人の天世人のチカラ」との親和性を増し、得たチカラは強大であり、
『『チカラが内から湧き溢れるよう(さぁ・でありぃんす)♪』』
自信に満ちた表情は上階へ向かおうとしていたラディッシュ、パストリス、ターナップに安心を与え、金狼グランには、
『甘く捉えていては、足元をすくわれ兼ねませんね』
戦術の変更を余儀なくさせたらしく、
「これは陛下の失策が招いた結果ですね」
無感情に淡々とこぼすと右手を静かに上げ、すると、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
上階へ続く通路口を、ラディッシュ、パストリス、ターナップに、スッと明け渡す精鋭合成獣たち。
まるで花道を用意するが如くに。
魔王ラミウムに対する忠誠心があるのか無いのか、想像の斜め上の展開に面を喰い、
「あ、あのぉ……本当に良いんですか?」
訊ねてしまう勇者ラディッシュであったが、金狼グランは平静に「構いません」と答え、
「部下を無駄死にさせる訳にはいきませんから」
戦略的目算から導き出された対応であるのは理解できたが、その対応の奥に、
(…………)
かつての彼の優しさも。
しかしだからと言って、敵である勇者一行を易々と王の下へ向かわせてくれる筈も無く、
『ですが』
「「「「「?!」」」」」
金狼グランは獣の両眼をギラリと光らせ、
「そちらの二人は置いて行っていただきます」
『『『!?』』』
慄くラディッシュ、パストリス、ターナップに反論の間を与えず諭すように、
「筋だけは通させていただきます」
「「「…………」」」
融通の利かなさも以前の彼と変わらぬ物であったが、急転した事態に「ラディッシュの据えた腹」は揺らぎを覚えてしまい、
(やっぱり二人だけ残して行くなんて出来ない!)
拒否を口にしようとしたが、それを見透かしたように、
『構わないさぁ♪』
『のちに逃げたと語られんしてぁ「七草の名折れ」にぃありぃんす♪』
ニプルウォートとカドウィードが気持ちごとズイッと前に出て再戦を快諾。
金狼グラン一団を見据えながら、
「ラディたちは上階を目指すさぁ♪」
「本隊が来る前に親玉を叩けばぁ万事解決にぃありぃんすぅ♪」
もはや自分が口出しできる領分ではないのを悟ったラディッシュは、同意を持ったパストリス、ターナップと静かに頷き合うと、二人の無事を信じ、
『上で待ってるから!』
『必ず来てなのでぇす!』
『這いずってでも来やがれよ! どんな怪我でも俺が必ず完治させてやるからよ!』
後ろ髪を引かれつつ、上階を目指して走り出した。
『ここはカディとウチに任せるさぁ♪』
『マゴついてぇいんしたらぁ本隊が来てぇ「詰(つ)み」にぃなりぃんすぇ♪』
促された三人は「明るい物言いは気遣い」と理解した上で、
(((…………)))
二人の言い分は、頭では理解できていた。
目の前の合成獣たちが元「百人の勇者」と気付けていない三人にとって捉えていたのは「表側の意味だけ」ではあったが、既に階下に、実力不明な全身鎧と精鋭合成獣二十体を相手にリンドウとヒレンを残して来ている。
二人の安否が不明な中、更にニプルウォートとカドウィードを同様な戦場に、否、敵はリーダーに新生グランを据えた一団である。
階下より更なる過酷な戦場になるのは容易に想像でき、
《二人の意志を尊重するべきなのか?》
はたまた、
《申し出を却下するべきか?》
ラディッシュは迷いに迷った。
仲間を一人として失いたくなかったから。
仲間を失うかも知れない、恐怖。
ドロプウォートとの一戦がトラウマとして、心に影を落としていた。
(僕は、どうしたら良いんだ……)
混迷の闇の中、
『ラディ』
『兄貴ぃ』
導きの光が差すが如き優しい声が。
声の主はパストリスとターナップ。
二人が向ける笑顔に、
(仲間のチカラを信じろって、ことか……)
背中を押されたラディッシュは腹を括ると、
『ごめんニプル! カディ! 僕たちは先に行くよ!』
決意を口にした走り出しに、
「何で謝るのさぁ♪」
「ほんにぃ「任せた」と言う時宜にぃありぃんすぇ♪」
緊迫を迎える場面にありながら、軽やかに笑って送るニプルウォートとカドウィードであったが、
『行かせません!』
三人が向かう先に立ち塞がろうとする金狼グランと精鋭合成獣たち。
すかさずニプルウォートとカドウィードは、
勇者ラディッシュの恩恵を以て我らは戦う!
その身を白き輝きで包みながら猛突進、
『『邪魔は(させないさ・させぇんすぇ)!』』
行く手を阻もうと動き出した一団を薙ぎ払った。
しかし敵も然(さ)る者。
中世の七草の二人が側面から急襲を掛けたにも拘らず、
『『ッ!』』
瞬時に分散して攻撃を回避して見せた。
単なる「合成獣の群れ」とは一味違うところを披露するかのように。
((簡単にはいかない相手のよう(さぁ・ありぃんすなぁ)……))
苦闘を予感させる「開戦の口火」ではあったが、白き輝きを纏う二人は、
『『それでも負ける気は(しないさぁ・しぃんせぇんぇ)♪』』
その笑顔は強がりの類ではなく、確かな自信が。
根拠は、身に纏う「眩き白き輝き」にあった。
以前にラディッシュのチカラを纏って戦った時は「白銀の輝き」であったが、今の彼は数々の経験を経て「百人の天世人のチカラ」との親和性を増し、得たチカラは強大であり、
『『チカラが内から湧き溢れるよう(さぁ・でありぃんす)♪』』
自信に満ちた表情は上階へ向かおうとしていたラディッシュ、パストリス、ターナップに安心を与え、金狼グランには、
『甘く捉えていては、足元をすくわれ兼ねませんね』
戦術の変更を余儀なくさせたらしく、
「これは陛下の失策が招いた結果ですね」
無感情に淡々とこぼすと右手を静かに上げ、すると、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
上階へ続く通路口を、ラディッシュ、パストリス、ターナップに、スッと明け渡す精鋭合成獣たち。
まるで花道を用意するが如くに。
魔王ラミウムに対する忠誠心があるのか無いのか、想像の斜め上の展開に面を喰い、
「あ、あのぉ……本当に良いんですか?」
訊ねてしまう勇者ラディッシュであったが、金狼グランは平静に「構いません」と答え、
「部下を無駄死にさせる訳にはいきませんから」
戦略的目算から導き出された対応であるのは理解できたが、その対応の奥に、
(…………)
かつての彼の優しさも。
しかしだからと言って、敵である勇者一行を易々と王の下へ向かわせてくれる筈も無く、
『ですが』
「「「「「?!」」」」」
金狼グランは獣の両眼をギラリと光らせ、
「そちらの二人は置いて行っていただきます」
『『『!?』』』
慄くラディッシュ、パストリス、ターナップに反論の間を与えず諭すように、
「筋だけは通させていただきます」
「「「…………」」」
融通の利かなさも以前の彼と変わらぬ物であったが、急転した事態に「ラディッシュの据えた腹」は揺らぎを覚えてしまい、
(やっぱり二人だけ残して行くなんて出来ない!)
拒否を口にしようとしたが、それを見透かしたように、
『構わないさぁ♪』
『のちに逃げたと語られんしてぁ「七草の名折れ」にぃありぃんす♪』
ニプルウォートとカドウィードが気持ちごとズイッと前に出て再戦を快諾。
金狼グラン一団を見据えながら、
「ラディたちは上階を目指すさぁ♪」
「本隊が来る前に親玉を叩けばぁ万事解決にぃありぃんすぅ♪」
もはや自分が口出しできる領分ではないのを悟ったラディッシュは、同意を持ったパストリス、ターナップと静かに頷き合うと、二人の無事を信じ、
『上で待ってるから!』
『必ず来てなのでぇす!』
『這いずってでも来やがれよ! どんな怪我でも俺が必ず完治させてやるからよ!』
後ろ髪を引かれつつ、上階を目指して走り出した。
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