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第十章

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 後発の加盟国の裏切りにより面目を潰された四大、ニプルウォート、スパイダマグであったが、今は犯人捜しに躍起になっている場合ではなく、目の前の敵を「如何に排除するか」が最優先であり、ニプルウォートは頭を即座に切り替え、斜に構えた笑顔で彼女を見据え、

「それでぇその「御偉いラミウム様」が、わざわざいったい何しに来たのさぁ♪」

 小馬鹿を交え「スグ帰れ」とでも言いたげな皮肉を半笑いで放ったが、彼女は「キッシッシッ♪」と余裕の笑みで笑い飛ばし、

「安心しなさぁねぇ~警戒しなくても用が済んだら素直に退散するさねぇ~♪」
 パチィン!

 指を打ち鳴らし、それと同時、

『『『『『『ッ!』』』』』』

 仮想空間に大きな揺らぎを覚える参加者たち。

『ヌシは何をしたッ!』

 エルブ王が先陣切って問い詰めると彼女は再び「キッシッシッ♪」と笑い、
「なぁ~に、参加したがってる連中が多いようだからさねぇ~アタシからのサプライズさねぇ♪」
((((((さ、さぷ?))))))
「黒球を使っての生放送さぁねぇ♪」
((((((?!))))))
 意味が分からず惑う一同に、

『キッシッシッ♪ 分かり易く「今の外」を見せてやるさねぇ♪』

 再び指を打ち鳴らすと、仮想空間の空一面に中世各所がリアルタイム映像として幾つも映し出され、

『『『『『『なッ!』』』』』』

 驚愕する参加者一同。
 そこには「自分たちの今の驚き」が、そのまま全世界の空に投影されていたのである。

 それを可能にしていたのは、地世信奉者の残党たちにそそのかされた連中が密かに所持していた例の黒球。
 映像はそれらから、地技を使って空に投影されていたのであった。

 突然あらわれた映像に、震撼する中世の世界。
 一般人のみならず、何が起きるか知らずに所持していた「そそのかされた輩」や、取り締まりの最中であった騎士、兵士、警備隊隊員、そして解析中であった研究員たちまでもが、

「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 唖然とするさまを仕掛けた張本人ラミウムは、
「キッシッシッ♪」
 愉快げに笑い、

『中世のみなさん久し振りさねぇ♪ アタシぁ元「百人の天世人」にして、現「地世の魔王」のラミウム様さねぇ♪』

 都市伝説レベルで囁かれていた噂を「真実として暴露」した上で、世界に向け、

「そうそう先に言っとくさねぇ♪ 黒球の所持者は煮ようが焼こうが「御好きに」さねぇ♪」

 黒球が発動したことで所持者の全てが判明し、中世の各地で逮捕劇が始まったのである。
 老若男女を問わずの所持者たちは「捕縛される」はまだましで、中には「中世の裏切り者」と罵倒されたうえ、集団暴行を受ける者達の姿も。

 取り締まりに激しく抵抗する者もあり、世界が混沌と化す中、
『あぁ~けどさねぇ~♪』
 ラミウムはからかいを交えた半笑いで、

「黒球の扱いは丁寧にした方が良いさぁねぇ~♪」
『『『『『『『『『『!?』』』』』』』』』』

 一瞬にしてフリーズする中世の世界。
 取り締まる側も、取り締まられる側も、騒ぎを野次馬根性で眺めたり、撮影していた者達も。
 
 何が起きるか分からない恐怖から、まるで時が止まったような静寂に包まれ、

『『『『『『『『『『…………』』』』』』』』』』

 空に映る彼女の次なる言葉に息を呑む中、彼女はあっけらかんと、

「防衛機能が作動してぇその辺一体が合成獣だらけになっちまうさぁねぇ~♪」
『『『『『『『『『『っ!』』』』』』』』』』

 中世の世界は一斉に音を取り戻した。
 
 錯乱状態で逃げ出す者、警備員に泣きながら黒球を差し出す者、周囲の者達から「こっちに来るな」と悲鳴を浴びせられる者たちなどなど、恐怖と混乱が世界を覆う中、導く立場にある「仮想空間の指導者たち」は、

((((((どうしたら!?))))))

 鎮める言葉を見出せずにいた。
 世界と映像で、現在進行形で繋がっているにも拘らず、あまりに大きな世界規模の同時混乱ゆえに。

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