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第九章
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教会の裏庭で対峙する祖父と孫――
自然体で立つ祖父に対し、孫はイカツイ笑みと共に両拳を握り構え、
『ブッ飛ばしてぇホンネを吐かせてやるッ!』
気骨をぶつけたが、
(!?)
ただ立って居るだけの大司祭から放たれるのは、かつて感じた事のない殺気であり、
(コイツぁ……)
背筋が冷えた。
口にこそ出さなかったが、
(流石は俺のジジィ、あの歳でマジモンの化け物だぜぇ……)
数々の死線をラディッシュ達と駆け抜けて来た猛者の、率直な所感(しょかん)。
内心で感嘆する孫を前に、距離を取って対峙する祖父は淡々と、
「結界を張ったゆえ、戦いを周囲に知られる事も、邪魔が入る事も無い」
ターゲットを前にした暗殺者の如き眼光で以て、
「殺す気で来い。さもなくば……」
孫を真正面に見据え、
『死ぬぞ』
『上等だァラァアァァァァア!』
言葉尻を喰い気味に、一気に距離を詰めるターナップ。
(ジジィは足を止めてネチネチ応戦するか、間合いを有利にする為ぇ距離を取る筈だ!)
今日までの対戦の経験から、
《先手必勝》
一手を先んじて繰り出そうとしたが、
「馬鹿の一つ覚えが!」
祖父は予想に反し、孫に向かって突進。
ターナップの想定を上回る速さで距離が詰まる結果となり、
(ジジィイ!)
距離を一旦取る判断が脳裏をよぎるも、
『下がってぇどうするゥウッ!』
勢いそのまま体ごとぶつけるように突き進む。
退かなかった孫の決断に、
『下がらぬ気概は良しとしてぇなればどうする!』
狂気の笑みを見せる祖父。
初めて見る形相であったが、距離が急激に縮まる中でも孫は動じる事も無く、問いに答えぬ姿勢にむしろ怒りを増し、
『全力でぇタダぶっ飛ばァーーースウッ!!!』
想定外の「距離の詰まり」は、振り被った拳に乗せたチカラを「存分に振るえぬ距離」ではあったが、それでも強引に、
『しばらく眠りさらせやぁクソジジィーーーッ!』
減算を承知の上で殴り掛かった。
単なる「チカラ自慢の思い上がり」などではない。
中世の七草の一人としての誇りが、積み上げた実績が、彼の精神を支えていた。
数々の死線で鍛え上げられた太腕(ふとうで)が、華奢な老体を的確に捉え、
バァバァアキィイィィ!
しかし、
『なぁっ!?』
慄くターナップ。
狙った位置から詰まらされた腕でも、数十メートルは殴り飛ばせる自信があったのだが、実際には、
「何を、そんなに驚いておる馬鹿孫が」
殴り飛ばすどころか、祖父は眼前に両腕を十字に、老体の細腕で真正面に受け止めていた。
易々と。
それを可能にした要因は、
『天技を発動していただとぉお!!!?』
ターナップは驚愕した。
天法を用いた身体強化に驚いたのではない。
百人の勇者の末裔である祖父が天技を用いるなど、当然の如く「理解の範疇」であったが、彼は天技を用いる為の準備段階に当たる、天法を身に纏う「前小節の詠唱」すら行っていなかったのである。
しかも天世からの恩恵を受けらぬ筈の、結界の内側で。
信じ難い現実を前に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して棒立ちする孫を、祖父は小さく短く「フッ」と嘲笑い、
『戦闘中に間の抜けた顔をしとる場合かぁこの馬鹿孫がぁあぁぁぁあ!!!』
天法を纏った細腕を、ターナップの腹に目掛けて振り抜いた。
自然体で立つ祖父に対し、孫はイカツイ笑みと共に両拳を握り構え、
『ブッ飛ばしてぇホンネを吐かせてやるッ!』
気骨をぶつけたが、
(!?)
ただ立って居るだけの大司祭から放たれるのは、かつて感じた事のない殺気であり、
(コイツぁ……)
背筋が冷えた。
口にこそ出さなかったが、
(流石は俺のジジィ、あの歳でマジモンの化け物だぜぇ……)
数々の死線をラディッシュ達と駆け抜けて来た猛者の、率直な所感(しょかん)。
内心で感嘆する孫を前に、距離を取って対峙する祖父は淡々と、
「結界を張ったゆえ、戦いを周囲に知られる事も、邪魔が入る事も無い」
ターゲットを前にした暗殺者の如き眼光で以て、
「殺す気で来い。さもなくば……」
孫を真正面に見据え、
『死ぬぞ』
『上等だァラァアァァァァア!』
言葉尻を喰い気味に、一気に距離を詰めるターナップ。
(ジジィは足を止めてネチネチ応戦するか、間合いを有利にする為ぇ距離を取る筈だ!)
今日までの対戦の経験から、
《先手必勝》
一手を先んじて繰り出そうとしたが、
「馬鹿の一つ覚えが!」
祖父は予想に反し、孫に向かって突進。
ターナップの想定を上回る速さで距離が詰まる結果となり、
(ジジィイ!)
距離を一旦取る判断が脳裏をよぎるも、
『下がってぇどうするゥウッ!』
勢いそのまま体ごとぶつけるように突き進む。
退かなかった孫の決断に、
『下がらぬ気概は良しとしてぇなればどうする!』
狂気の笑みを見せる祖父。
初めて見る形相であったが、距離が急激に縮まる中でも孫は動じる事も無く、問いに答えぬ姿勢にむしろ怒りを増し、
『全力でぇタダぶっ飛ばァーーースウッ!!!』
想定外の「距離の詰まり」は、振り被った拳に乗せたチカラを「存分に振るえぬ距離」ではあったが、それでも強引に、
『しばらく眠りさらせやぁクソジジィーーーッ!』
減算を承知の上で殴り掛かった。
単なる「チカラ自慢の思い上がり」などではない。
中世の七草の一人としての誇りが、積み上げた実績が、彼の精神を支えていた。
数々の死線で鍛え上げられた太腕(ふとうで)が、華奢な老体を的確に捉え、
バァバァアキィイィィ!
しかし、
『なぁっ!?』
慄くターナップ。
狙った位置から詰まらされた腕でも、数十メートルは殴り飛ばせる自信があったのだが、実際には、
「何を、そんなに驚いておる馬鹿孫が」
殴り飛ばすどころか、祖父は眼前に両腕を十字に、老体の細腕で真正面に受け止めていた。
易々と。
それを可能にした要因は、
『天技を発動していただとぉお!!!?』
ターナップは驚愕した。
天法を用いた身体強化に驚いたのではない。
百人の勇者の末裔である祖父が天技を用いるなど、当然の如く「理解の範疇」であったが、彼は天技を用いる為の準備段階に当たる、天法を身に纏う「前小節の詠唱」すら行っていなかったのである。
しかも天世からの恩恵を受けらぬ筈の、結界の内側で。
信じ難い現実を前に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔して棒立ちする孫を、祖父は小さく短く「フッ」と嘲笑い、
『戦闘中に間の抜けた顔をしとる場合かぁこの馬鹿孫がぁあぁぁぁあ!!!』
天法を纏った細腕を、ターナップの腹に目掛けて振り抜いた。
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